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松山椋さん

地獄からやってきた文学青年です。結局名前元に戻しました。

性別 男性
将来の夢 涙を流さないようにする
座右の銘 お前の背中はまるででたらめやぞ

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お母さんを知らないか

15/02/26 コンテスト(テーマ):第七十七回 時空モノガタリ文学賞 【 渋谷 】 コメント:11件 松山椋 閲覧数:8298

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 俺本当に困ってるんだけどだれか俺のお母さんを知らないか。この近くに来てるはずなんだよ。きっと俺のことを探し疲れてこの渋谷のどこかで泣いてる。だれか俺のお母さんを知らないか。
 なんでお母さんがこの近くにいるかというと、今朝俺の部屋に来ていた痕跡があったからなんだ。俺のアパートの部屋には毎日自衛隊が攻めてきていて(いやちゃんと証拠があるんだ。アパートの前に怪しい男が毎日立っている。絶対俺のことを監視しているよ。)、俺は毎晩朝まで窓から通りを見張っているんだけど、俺起きてるときはずっと酒を飲んでいるから時々酔っ払って居眠りしちゃう。で、今日の朝方も三十分くらい椅子に座ったままうとうとしてたんだけど、ハッと目を覚まして部屋を見わたすとテーブルの上に置いてあったビールの空き缶がきれいに片付けられていたんだ。ピンと来たよ。眠っている間にお母さんが部屋に入ってきて、テーブルの上を片付けていったんだって。俺は高校を辞めて故郷から東京に出てきたんだけど、アパートの住所はお母さんに伝えてある。だから時々手紙が来るよ。『お母さんはまぁくんのことが心配です。』って。封筒の中にはお小遣いも入れてくれる。いつこの部屋を訪ねてきても不思議じゃないんだ。俺はコートも着ずに部屋を飛び出して近所を探し回った。だけどどこにもいないんだ。公園にもスーパーマーケットにもコンビニにもいない。きっと電車に乗ったんだと思って駅まで来てみた。お母さんはいつか渋谷に行きたいと手紙に書いていた。パルコに行ってみたいんだって。だから電車に乗って渋谷まで行ったと思ったんだ。もう少しすればお店も開くし。そこで俺はまたまたピンときた。俺が住んでいる南千住から渋谷まで電車を乗り継いで15駅。お母さんは今年45歳で、俺の誕生日は3月。45÷3で15。ほらやっぱり渋谷に行ったんだ。間違いない。俺は電車に乗るために券売機で切符を買おうと思ったんだけど財布の中にはお母さんが送ってきてくれた一万円札しか入ってない。これはもったいなくて使えないよ。ジーンズのポケットを探ってみたけど小銭は入っていなかった。だから俺は電車に乗るのを諦めて渋谷方面へ全力疾走しはじめた。1キロくらい走ると目がくらくらしてきた。息も切れて気分が悪くて吐きそうだ。だけど俺は負けないよ。がんばって走った。走りすぎて途中で靴を片方無くした。死にそうになりながらなんとか昼までに渋谷に到着できたよ。とりあえずハチ公前に座り込んで息を整えているとなんと500円玉が落ちてたからコカコーラの自販機でお茶を買って目を細めながら飲んだ。生き返った。一息ついたところで俺は歩いてパルコ東急百貨店ロフト109見て回った。どこにもお母さんはいなかった。
 だから話は冒頭に戻ってこうやって道行く人にお母さんの居場所を聞いているんだけどみんな俺のことを無視する。俺はお母さんが編んでくれたボロボロのセーター(前がケチャップやビール、ウイスキーのシミで汚れてるんだけど。)を着てジーンズを履いてる。靴は片方無くした。みんな俺のことを物乞いだと思っているのかな。がんばって声をかけてるんだけどみんながみんな無視しやがる。通りを右往左往していると水溜りの中に居酒屋のチラシが落ちているのを見つけた。そういや俺は今年で20歳になるからおおっぴらにお母さんとお酒が飲める。お母さんはあまりお酒強くないから美味しいものを食べさせてあげたいんだよね。ちょうど良かった。俺はチラシを破れないように大事に折りたたんでジーンズのポケットに入れた。で、お母さんはどこにいるんだ?ふらふらと歩いているうちに裏通りに入ってきてしまった。どうやって表に出るのかわからない。俺は不安になってきたからとりあえず目に付いたコンビニに入ってウイスキーの大瓶を一本万引きして、歩きながら飲み始めた。通行人が俺の顔をジロジロ見てくる。やっぱり俺はみんなに監視されているんだと思う。みんな敵だ。ナイフでも持って来ればよかったよ。気づいたらウイスキーは空になっていて俺はベロベロに酔っ払っていた。ふらふら歩いていると溝に足を取られてドブの中に倒れ込んだ。全身ドロまみれになる。あれ?不思議だぞ?このドブのドロ、冬なのにあったかい。あ、このあったかさはお母さんと同じだ!やった、お母さんは近くにいるぞ。ここで待ってればきっと迎えに来てくれる。俺は安心した。お母さん、ありがとうね。俺を産んでくれてありがとう。俺はお母さんのことが大好きだよ。今夜は居酒屋に行こうね。俺は両腕を組んで神様に感謝しながら目を閉じて、お母さんが迎えに来てくれるのをドブの中でじっと待ちつづけた。


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このストーリーに関するコメント

15/02/26 水鴨 莢

読ませていただきました。
とてもおもしろかったです。
改行のほとんどない文章が主人公の思考の流れてくる勢いそのものってふうにも
感じられていいです、味があります。
なんか知らんけどこの人いわゆるヤバイ状態っぽい、お母さん関係なしに、って
いうこの話の顛末がどうなるのかすごく気になってしまいました。
それでなんだか、最初っから最後まで要所で電波っぽくあって、でもなんだか妙に
悲しく切なくもあって、そして終わる、そのまま終わる、良かったです。
すごく。

15/02/27 高橋螢参郎

舞城王太郎お好きですか。僕は好きです。
(もしくはライ麦畑でつかまえて)

15/02/27 松山椋

水鴨十一さま

読んでいただいてありがとうございます!本当に嬉しいです。
改行の少なさによって主人公の危なさを演出してみました。そこに気づいていただいてとても嬉しいです。切なさも少し演出してみました。深く読んで頂けてとても嬉しいです。僕はまだ右も左もわからない初心者ですが、これからもよろしくお願いします!

15/02/27 松山椋

水鴨十一さま

読んでいただいてありがとうございます!本当に嬉しいです。
改行の少なさによって主人公の危なさを演出してみました。そこに気づいていただいてとても嬉しいです。切なさも少し演出してみました。深く読んで頂けてとても嬉しいです。僕はまだ右も左もわからない初心者ですが、これからもよろしくお願いします!

15/02/27 松山椋

高橋螢参郎さま

舞城王太郎、気になっていはいるのですがまだ読めていないのです・・・。芥川賞候補作がいくつかあったので、いい機会ですので是非読ませていただきます。サリンジャーは学生時代に『ライ麦』と『ナインストーリーズ』を読みました。亡くなってしまったのが惜しいですね。素晴らしい作家です。

15/03/12 滝沢朱音

わー、これ、すごい!
主人公のはんぱないヤバさを感じながら、最後まで読みきってしまいました。
文学的なことは全くわからない私なのですが、とにかく面白いと思いました!

15/03/12 ナポレオン

拝読いたしました。
とても狂気を感じる素晴らしい作品だと思います(笑)
なにか本当にやばい人の心の内を覗いてしまったようなそんな気持ちにさせられました。

15/03/15 松山椋

滝沢朱音さま
ありがとうございます!本当にうれしいです。
主人公のヤバさは意図的に演出してみました。わかっていただきうれしいです。
これからもよろしくお願いいたします!

15/03/15 松山椋

ナポレオンさま
読んでいただきありがとうございます!うれしいです。
狂気を意図的に演出してみました。試みは成功していたようで、本当にうれしいです。
またこれからもよろしくお願いします!

15/03/20 草愛やし美

松山椋さん、初めまして、拝読しました。

ヤバイですねえ、確かに「地獄からやってきた文学青年」ですね。新しい切り口の作品、一気に読み終えました、面白かったです。

お母さんのあったかさはドブのドロと同じ、頷けるものがありますね、ドブの中でじっと待ち続ける主人公がどうなるのだろうと気になり今夜眠れないかもしれません、どうしましょうか。苦笑

15/03/23 松山椋

草藍さま
読んでいただき、ありがとうございました!本当にうれしいです。
気づいていただけたとは。嬉しいです!ドブとお母さんの関係に寓意を持たせてみました。いやはや、本当に嬉しいです。
これからもよろしくお願いします!

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