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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

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将来の夢 プロ小説家になること!
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大嫌い、大好き

15/02/24 コンテスト(テーマ):第七十八回 時空モノガタリ文学賞 【 嫉妬 】 コメント:22件 海見みみみ 閲覧数:1463

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「また二位だ」
 私は思わずため息をついた。
 私には大嫌いな人がいる。宝田アリサ、この中学に入ってから同じクラスになった女子だ。
 彼女はいつも学年テストで一位を取っていた。対して私は毎回二位に甘んじている。なぜ彼女にテストで勝てないのか。その悔しさが嫉妬となり、私の勉強に対する原動力になる。
 しかしいくら勉強をしても、宝田アリサにだけは勝てないのであった。

 放課後。その日も私は学校の図書室で一人勉強をしていた。うちの図書室は利用者が少なく、今日も貸し切り同然だ。勉強をするにはこれほど最適な場所はない。
 数学の問題を一つずつ解いていく。問題が解けるごとに私は宝田アリサに近づいていると感じ、気持ちが高ぶっていった。
「ようやく見つけた」
 すると突然、図書室に鈴の音のような可憐な声が響く。一体誰かと思って前を向くと、そこには宝田アリサの姿があった。
「宝田さん、何か用?」
「用ってわけじゃないんだけど、雨宮さんと一度話してみたいなって思って」
 突然現れたかと思うと、宝田アリサはそんな事を言ってきた。私と話したいだって。私にはあなたと話したい事なんて何一つないのだけど。心の中で嫉妬心が燃え上がっていく。
「図書室は私語厳禁よ。お話はまたの機会に」
「そうは言うけど、ここにいるのは私と雨宮さんだけじゃない。だからそう堅いことを言わずに」
 これが学年一位を取っている生徒の言葉なのか。ルールを守るのは常識じゃない。だと言うのに、この人は一体何のつもりなのだろう。
「私は今勉強中なの。話しかけないで」
「勉強なんて家に帰ってからすればいいじゃない」
「もちろん家でも勉強はするわ。宝田さんだってそうでしょう?」
「ううん、私は基本的に授業以外では勉強しないかな。授業を聞いてればだいたい勉強の内容はわかるし」
 その言葉に私の自尊心がガラガラと音を立てて崩れる。勉強をしない? 授業を聞いていればわかる? それじゃあこうやって必死に勉強している私は何なの?
「そんな事よりさ、近くにおいしいケーキ屋さんがあるんだ。雨宮さんも一緒に」
「ふざけないで!」
 私の中で嫉妬心が爆発し、気づけば図書室だというのに大声をあげていた。一度火がついたらもう止まらない。
「なんでいつもあなたが学年一位なの? 私はこんなに頑張っているのに! 私はね、アンタの事なんて大嫌いなの!」
 言ってしまった。そう口にしてから後悔する。私は恐る恐る宝田アリサの様子を伺った。
 笑顔。宝田アリサは悲しいくらいキレイな笑顔を浮かべていた。
「そっか。私の事嫌いだったんだ。気付かなかったなぁ」
 そう言って頭をかくと、宝田アリサは突然私の唇にキスをしてきた。唇が触れ合うだけのキス。でもそのキスは今まで体験したどんな事より甘美だった。
「私は大好きなんだけどね。だから一度だけ。ごめんね」
 そのまま宝田アリサは図書室を去っていった。自身の唇に触れる。もう勉強なんて頭に入らなかった。

 それから一週間後、宝田アリサはこの学校から転校した。何でも親の事情で決まった事らしい。
 宝田アリサがいなくなった事で、私は次の学年テストで一位を取った。初めての一位。それなのに全然嬉しくない。
 もしかしてあの日、宝田アリサは私と最後に話がしたくて声をかけてきたのではないだろうか。だとしたら私はなんてひどい事をしてしまったのだろう。しかし今更後悔しても、もう遅い。
 もう学年テストの順位に興味はない。ただ私の唇にはあの甘いキスの後味だけが残った。


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このストーリーに関するコメント

15/02/25 泡沫恋歌

海見みみみ 様、拝読しました。

その悔しさが嫉妬となり、原動力になるという言葉に禿同!

公募なんかは、いつもその悔しさでリベンジしてますもんσ(´∀` )ァタシ

けど、女同士でいきなりキスとかするかなあ?
こういう百合っぽい話を男性が書かれるなんて珍しいね。

宝田アリサって、名前でALI PROJECTの宝野アリカ様を勝手に想像しちゃった(笑)

15/02/25 海見みみみ

>泡沫恋歌さま
ご覧いただきありがとうございます。
嫉妬の力って凄いですよね。
私にとっても動力源のひとつです^_^
どうも私は同性愛をテーマに書くのが好きなようで、今回もこのように仕上がりました。
アリプロ!
何かに語感が似ているなと思ったら、宝野アリカ様だったのですね。
いつもフィーリングで名前を決めているので、それで被ったようです笑
それでは感想ありがとうございました!

15/02/26 こぐまじゅんこ

海見みみみさま。
拝読しました。中学時代、順位って気になりますよね。
1位と2位の優秀な子たちの設定って、おもしろかったです。
テーマに、ぴったりですね。
最後の意外な展開も、新鮮でした。

15/02/26 11doors

誰かに“大好き”って感情を一瞬にして
伝えるのには、どうしたらいい?

…そんな質問をされたときに、キスという選択肢は
私にとっては『コロンブスの卵』って感じでした。

別に同性愛を好んだりする向きではないのですが(笑)
誰かがいなくなってから、その人の本心に気づく、
そんなシチュエーションに共鳴してしまいました。

15/02/26 海見みみみ

>こぐまじゅんこさま
ご覧いただきありがとうございます。
学生時代、進学校だと順位争いが激しいとよく聞きます。
一位が取れないことの悔しさ、嫉妬の気持ちがたった一つのキスで氷解する。
そんなお話を目指して執筆しました。
その点を褒めていただけてうれしかったです。
それでは感想ありがとうございました!

15/02/26 海見みみみ

さいのめさま
ご覧いただきありがとうございます。
好きという気持ちを伝えるにはこれほど単純で効果のあるものはありませんよね。
同性愛と異性愛、どちらも恋の切なさは共通しているのだと私は思います。
作品に共鳴してくださりありがとうございました。

15/02/27 水鴨 莢

読ませていただきました。
とくに新鮮な設定というわけでもないですけど、でもこういうシチュエーション
はやっぱりなんだか良いですね。
ああそういうあれかぁ、と思いつつも、なんだか。
永久に作られるべき物語に思います。

ですのであとは、評価するとなると演出の形だとか、そこらへんの好みの問題に
なってくるのだと思います。
私としては最後に後悔という言葉すら使わず、やっぱりきらいだって最後まで表面
的には書かれているけど・・・?っていうような、あとの真意は読者におまかせな
形のほうが好みやーという、ほんと、個人的なワガママなんですけど。
ワガママな読者なんです私は・・・。

15/02/27 海見みみみ

>水鴨十一さま
ごらんいただきありがとうございます。
こういうシチュエーションって良いですよね。
やはり王道は素晴らしいと思います。
演出の方法は様々ですよね。
好みは十人十色なので難しいところです。
それでは感想ありがとうございました!

15/02/28 須磨 円

読ませていただきました。
一見、ありがちな学校生活の一コマと思春期特有の女の子らしい感情の描写から、思いもよらない出来事へ。読み手をも翻弄させてしまう一連の流れが、とても読んでいて気持ちがいいです。
日常的だけれど何処か違うお話。いいですよね。
あと個人的に、私はみみみ様が書かれるお話のテンポの良さがとても羨ましいです(笑)
素敵なお話、ありがとうございます。

15/02/28 海見みみみ

>須磨 円さま

ご覧いただきありがとうございます。
今回はお話の展開に一捻り加えたつもりだったので、その点を褒めていただけてとても嬉しいです。
またテンポが良いとも言っていただけて、もう嬉しくて仕方ありません!
これからも創作活動がんばりますね。
感想ありがとうございました!

15/02/28 つつい つつ

1位になれない悔しさ。 転校していく友人に何も出来なかった悔しさ。
学生時代の淡い感情を想い出させてくれて、とても良かったです。

15/02/28 海見みみみ

>つつい つつ様
ご覧いただきありがとうございます。
学生時代ってさまざまな悔しい思い出がありますよね。
懐かしい淡い思い出を思い出していただけて嬉しいです。

15/03/08 海見みみみ

志水孝敏さま>
ご覧いただきありがとうございます。
たくさん褒めていただけてとても嬉しいです。
主人公がこの先どう行動するか。
それは読者の皆様のご想像に委ねたいと思います。
ありがとうございました!

15/03/09 ナポレオン

海見みみみ様
拝読いたしました。
まさかの百合展開!短い文ながら登場人物の個性が際立ており、作者の実力を感じました。

15/03/09 海見みみみ

ナポレオン様>
ご覧いただきありがとうございます。
まさかの百合展開でした笑
登場人物に個性があると言っていただけて嬉しいです。
ありがとうございました!

15/03/10 滝沢朱音

「私は大好きなんだけどね。」の一瞬が、とてもあざやかですね。
哀しいけど甘美なアリサの恋。嫉妬との対比が切ないなぁ、と。
この掌編でも素敵だけど、ドラマにもできそうなくらいに濃い物語だと思いました!

15/03/11 海見みみみ

滝沢朱音さま>
ご覧いただきありがとうございます。
おっしゃる通り長編にしても良さそうなお話ですよね。
この二人がその後どうなったのか……なんて描いたら面白そうです。
感想ありがとうございました!

15/03/19 そらの珊瑚

海見みみみさん、拝読しました。

誰にも嫉妬心はあるのかもしれませんが、それが自分をより頑張らせるものであったとしたら決してマイナスばかりではないなあと思います。
ライバルがいるからこそ、目標になり、励みにもなりますね
思いがけないラストでしたが、アリサに振り回されるような結果になってしまった
雨宮さんがなんだか可愛く思えてきました。

15/03/19 海見みみみ

そらの珊瑚さま>
ご覧いただきありがとうございます。
前向きに頑張れる嫉妬ならいいですよね。
嫉妬も全てが悪いものばかりだとは思わないです。
雨宮さんはかわいいですよね。
私もお気に入りのキャラクターです。
それでは感想ありがとうございました!

15/03/20 山田猫介

読ませていただきました。
勝手ですが、自分の過去の栄光(?)を思い出したりしました。
「お前が転向してきたせいで、テストの点が下がったわけでもないのに、俺は通知簿の成績が下がったんだぞ」とある優等生から言われたことが、ただの一度だけあったのです。

宝田アリサ・・・・僕は俳優の宝田明を連想しました。

15/03/20 海見みみみ

山田猫介さま>
ご覧いただきありがとうございます。
それは貴重なエピソードですね!
猫介さんの成績がよほど良かったことが伝わってきます。
そんな思い出をこの小説をもとに思い出していただけたなら何よりです。
それでは感想ありがとうございました!

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