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みやさん

写真と物語の融合、写真物語家を夢見ています。 マイペースで更新中。Twitter➪@miya_ayim

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いつか星になるまで

15/02/11 コンテスト(テーマ):第七十七回 時空モノガタリ文学賞 【 渋谷 】 コメント:2件 みや 閲覧数:1054

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クーちゃん、またオモチャを散らかしてる!お母さんが今日もぼくを怒ります。
クーちゃん、待てって言ってるのにすぐ食べる…お父さんが今日もぼくに幻滅します。

ぼくはどうやらダメな犬の様です。
御主人様の瀬奈ちゃんもいつもクーちゃんはおバカさんだね、と言って笑います。

忠犬ハチ公のモノガタリ、皆で観ていたテレビで賢い犬のお話しが放送されていました。ハチは死んでしまった御主人様を永遠に待ち続けて、そして待ち続けた駅で、今でも石になって御主人様を待ち続けています。
瀬奈ちゃんもお父さんもお母さんも感動して泣いていました。待つくらいだったらぼくでも出来るよ?ぼくは尻尾を思い切り振ってアピール!

クーちゃんには絶対無理ね、とお母さん。
クーちゃんは待つのが苦手だからな、とお父さん。
クーちゃんはおバカさんだからね、と瀬奈ちゃん。

待つくらいならぼくでも出来るのに…なんだかぼくはションボリしてしまいます。
ハチの次は…キュウだから、だから…次はクーちゃんの時代だ!と瀬奈ちゃんが笑ってぼくを抱っこしてくれて、クーだからキュウ…苦しいこじつけだなとぼくは思います。でも嬉しくて瀬奈ちゃんのほっぺをベロンベロン舐めます。クーちゃんやめてよ〜と瀬奈ちゃんがゲラゲラ笑います。ぼくはますますベロンベロン。
クーちゃんは石になるんじゃなくて、星になるんだ、我が家の星に!我が家のアイドル、クーちゃん!瀬奈ちゃんにそう言って貰えてぼくが嬉しすぎてオシッコをちびりそうになった事は皆には内緒です。

実際ぼくは御主人様である瀬奈ちゃんを毎日いつも待っていました。小学校から帰って来るのを、塾から帰って来るのを、今か今かと待ち侘びていた。でもジッとしているのが苦手なぼくは家の中をウロウロ、オモチャをガサゴソしながら瀬奈ちゃんの気配がするのを待っていました。瀬奈ちゃんが玄関を開ける音や自転車を止める音を察知すると、ぼくはワンワンと吠えてお出迎え。うるさい…と瀬奈ちゃんやお母さんにはすこぶる評判が悪かったのです。

吠えてはいけません、鳴いてはいけません。そう教えられてもぼくは嬉しい気持ちを抑える事が出来ません。だからおバカさんだねと皆に言われるのかな?
クーちゃんのおバカさん、と言って瀬奈ちゃんはいつも優しく抱っこしてくれます。それがぼくはいつも嬉しくて、ずっとおバカさんでイイかな、と思いました。

瀬奈ちゃんがある時から家に居ない日が増えて、ぼくはなんで?なんで?とさみしくてワンワン泣いたりオモチャを散らかしたり、ますますおバカさんになってしまいました。
時々帰って来て瀬奈ちゃんはいつもと変わらずぼくを可愛がってくれるけれど、何処に行ってたの?何してたの?と出来る限りの愛くるしい瞳で瀬奈ちゃんを見つめるのに、瀬奈ちゃんは、すごく楽しい所に行ってるんだよ、クーちゃんは絶対に連れて行ってあげない、と意地悪を言います。ひどいよ瀬奈ちゃん…ぼくはハチみたいに瀬奈ちゃんの事待っているのに…

瀬奈ちゃんはますます家に居ない日が多くなって、ぼくは面白くなくて、部屋のあちこちにお漏らしをしたり、訳もなく吠えたり、ソファを噛んだりしてお父さんとお母さんを困らせました。クーちゃん!良い子にしなきゃダメでしょ!お母さんは激怒しました。そんなんじゃ…瀬奈が悲しむでしょ…瀬奈は病気で頑張ってるんだからクーちゃんも良い子にならなきゃ…ぼくは何も知らなかったんだと愕然としました。

長い間留守にしていた瀬奈ちゃんが久しぶりに家に帰って来た日、瀬奈ちゃんは元気が無くてお父さんに抱っこされていて、まるでぼくが瀬奈ちゃんに抱っこされているみたいでした。そして細くなった手でぼくの頭を撫でてくれました。
クーちゃんのおバカさん、いつもの様にそう言って瀬奈ちゃんはニッコリ笑いました。クーちゃんはおバカさんでいいんだよ、ハチみたいに石にならなくていいからね、この家の星になってね。ぼくは瀬奈ちゃんの手をペロペロ舐めました。一生懸命舐めました。そして瀬奈ちゃんは、クーちゃんありがとう、もう瀬奈の事待たなくて良いからね、と言いました。
その日を最後に瀬奈ちゃんが家に帰って来る事はありませんでした。ぼくは悲しくて寂しくて、クーンクーン、ワオーン、と毎日鳴きました。鳴いてるぼくをお父さんもお母さんも怒らずに、皆で、皆で泣きました。

それからもぼくは元気にオモチャを散らかし、待てを待たずにごはんを食べています。
ワンワン吠えてお母さんに怒られるし、新聞をグチャグチャにしてお父さんを困らせます。瀬奈ちゃんとの約束だから、今まで通りおバカさんでいる事に決めました。この家の星になる事に決めました。いつか本当の星になるまでー
その時瀬奈ちゃんは褒めてくれるかな?


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このストーリーに関するコメント

15/03/22 海見みみみ

みやさん、拝読させていただきました。
とても切ない話ですね。
瀬奈ちゃんが家に帰らなくなったとき「彼氏でもできたのかな」と思っていたら、まさかこのような展開だとは……。
クーちゃんと共に家族が泣くシーンでは胸が痛くなりました。
とてもよい作品だったと思います。
クーちゃんにはこの家の星になってほしいですね。

15/04/03 みや

海見みみみ 様

コメントありがとうございます☺︎
書きながら私も泣きそうになりました。犬もきっと色んな事を考えているはず…

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