こぐまじゅんこさん

詩を書いたり童話を書いたりしている主婦です。 みなさん、よろしくお願いします。 MyISBN−デザインエッグ社さんから、絵本「おしえて!ねこばあちゃん」を出版しました。 アマゾンでも取り扱っていますので、よかったら みてくださいね。 ブログ「こぐまのノート」も書いています。

性別 女性
将来の夢 自分の書いた童話を孫に読んで聞かせたいです。
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2

ハチ

15/02/10 コンテスト(テーマ):第七十七回 時空モノガタリ文学賞 【 渋谷 】 コメント:0件 こぐまじゅんこ 閲覧数:1153

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 ぼくは、今、目の前に静かに横たわっているハチをみている。
 胸に手をあてると、もう息をしていないことがわかった。
 ハチは、あおぞら公園の片隅で、ポツンと眠るように死んでいた。


 ぼくは、片桐たつや。四年生になったばかりだ。
 ぼくは、まだ新しいクラスになじめずにいた。ひとりで、いつもすごしている。
だれにも声をかけてもらえなくて、ぼくは、休み時間には、ひとり本を読んだり、マンガをかいたりしていた。

 だれかと話したい。
 何度もそう思ったけど、なんて声をかけたらいいのか、わからなかった。

 ひとりで、毎日、学校から帰る。さみしくてたまらない。
 ぼくは、ふっと、あおぞら公園に寄ってみたくなった。
 小さい頃、お母さんとよく遊びにきた公園だ。

 ひさしぶりに来た公園は、変わっていなくて、なつかしくてたまらなかった。
 桜の木の下をみると、小さな犬がいた。やせていて、かなり年をとっているみたいだった。犬は、しっぽを振りながら、ぼくに鼻先をむけてきた。かわいい小さな目が、ぼくをみつめている。
 ぼくは、公園のごみ箱から、弁当の空き箱をとってくると、水を入れて、さしだした。
 犬は、ペロペロと、息もつかずに水を飲んだ。
 それから、ぼくは、犬と遊んだ。ポケットから、マスコット人形のついたキーホルダーをだして、犬にわたした。犬は、マスコット人形を相手にじゃれていた。

 ぼくは、この犬を飼いたいと思った。でも、ぼくの家は、マンションだ。犬は飼えない。だったら、この公園で飼おうと、思った。
 忠犬ハチ公のように、いつも待っててほしいなと、願いをこめて、ハチと名付けた。
 ハチは、本当にいつも、ぼくを待っててくれた。
 学校帰り、公園に寄ると、ハチは、いつも桜の木の下から、ぼくにとびついた。
 ハチといると、ぼくは、学校でひとりぼっちでいることを忘れられた。
 ぼくは、ハチが大好きだった。

 そんなぼくにも、クラスで声をかけてくれる友だちができた。
 まことっていう名前だ。
 ぼくと同じようにおとなしい子だった。
 まことと、本の話しや、マンガのことを話すのが楽しくて、いつもいっしょに帰るようになった。
 まことの家は、ぼくの家と同じ方向だった。
 まことといっしょに帰るようになって、ぼくは、あおぞら公園に行かなくなった。

 一か月、たった。

 ぼくは、まことといるのが楽しくて、ハチのことをすっかり忘れていた。
 
 今日、まことが、風邪をひいて学校を休んだので、ぼくは、ひさしぶりに、あおぞら公園に寄ってみた。

 ハチは、もうとっくにいなくなっていると思っていた。
  
 でも、ぼくの目の前には、ハチがいた。
 ぼくが、いつかわたしたマスコット人形のキーホルダーを大事そうに抱えて、桜の木の下で横たわるハチがいた。

 ぼくは、涙がとまらなかった。

「ハチ、ごめんよ。ハチは、本当にぼくの忠犬ハチ公だったんだね。」

 ハチのそばで、夕日がしずむまで、ぼくは、泣き続けた。


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