1. トップページ
  2. ベートーベンの肖像画

こぐまじゅんこさん

詩を書いたり童話を書いたりしている主婦です。 みなさん、よろしくお願いします。 MyISBN−デザインエッグ社さんから、絵本「おしえて!ねこばあちゃん」を出版しました。 アマゾンでも取り扱っていますので、よかったら みてくださいね。 ブログ「こぐまのノート」も書いています。

性別 女性
将来の夢 自分の書いた童話を孫に読んで聞かせたいです。
座右の銘 しあわせはいつも自分の心がきめる

投稿済みの作品

2

ベートーベンの肖像画

15/01/14 コンテスト(テーマ):第七十五回 時空モノガタリ文学賞 【クラシック音楽 】 コメント:0件 こぐまじゅんこ 閲覧数:1153

この作品を評価する

 ぼくは、音楽室に飾ってあるベートーベンの肖像画に見入っていた。
 ベートーベンは、晩年には耳が聞こえなくなっていたというのに、曲を作り続けたと聞いた。

 それほどまでに夢中になれるものが、ベートーベンには生涯あったということだ。
 ぼくには、それがうらやましい。

 ぼくは、太田なおき。四年生だ。
 小学一年生のとき、お母さんにすすめられて英会話教室に通い始めた。
 外国人の女の先生が、たどたどしい日本語で言った。
「コンニチハ コレカラ ナカヨク ベンキョウ シマショウ」

 生徒は、メガネをかけた頭のよさしうな男の子がひとりと、おしゃまな女の子がひとり、そしてぼくの三人だけだった。
 ぼくは、あまりこの教室の雰囲気になじめなかった。

 先生は、日本語で歌いながら英単語を教えてくれる。
「おぼえたかしら? おぼえたかしら? なにをおぼえたかしら? もう一度声をそろえておけいこしましょー」

「りんご」
「アップル」

「みかん」
「オレンジ」

 先生と交互に単語を言う。
 半年通って、ぼくは、やめた。
 ぼくが、この教室でおぼえたのは、勉強するときに歌う歌と簡単な単語だけだった。

 それから、またお母さんは、ぼくをピアノ教室に通わせた。
 ずらりと並んだ電子ピアノの前にすわって、ぼくは、ひたすら、ド・ド・ド・ドと親指でドの鍵盤をたたきつづけた。
 指の練習だったのだろうけど、余りの退屈さに、ぼくは、一回行ってピアノもやめた。
 その後も、懲りないお母さんは、書道、スイミング、剣道など、あらゆる習い事をさせようとした。
 ぼくは、どれもちょっとやっては、やめた。
 「いい加減、あきらめてくれないか」
と、ぼくは、お母さんに言おうと思った。
 お母さんが、どれだけぼくに期待しているのか知らないけれど、ぼくはまだ、自分が何をしたいのか自分でもわからないんだよって。

 そして、これだけいろいろなことをしても何も続けられなかったぼくは、ダメ人間なんじゃないかとさえ思うようになっていた。

 そんなとき、音楽室で、ベートーベンの肖像画と出会ったのだ。
 ベートーベンは、決して穏やかな顔ではなかった。でも、心の底から湧き出る情熱が滲み出ていた。
 お正月、ぼくは、お年玉でベートーベンのCDを買ってみた。
 「運命」をきく。

 ぼくの中で、何かが動きだした。
 
 ぼくは、勝負事が好きなんだ。ずっと前に、お父さんに教えてもらった将棋。あのときは、完敗だったけど、駒を動かしたり、相手の駒の動きを予想するのは面白かった。
 ぼくは、それから図書館に行って、将棋の本をたくさん借りてきた。
 
 毎日毎日、将棋を本で勉強した。
 ちょっとずつ、毎日が楽しくなった。
 インターネットで、将棋の対戦をするのが、面白くて仕方ない。 
 


  
 
 大学生になったぼくは今、プロの棋士を目指している。

 小学四年生の時、音楽室でベートーベンに出会えたことに、今、心から感謝している。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン