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霜月秋介さん

しもつきしゅうすけです。 日々の暮らしの中からモノガタリを見つけ出し、テーマに沿って書いていきます。

性別 男性
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叩かれたい欲求と快感

14/12/14 コンテスト(テーマ):第七十一回 時空モノガタリ文学賞【 不条理 】 コメント:3件 霜月秋介 閲覧数:1750

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  私は今、叩かれている。黒縁眼鏡の若くて美しいお姉さんに、とても真剣な表情で、激しく叩かれている。しかも毎日だ。

  叩かれている時はどんな感じなのかとよく聞かれる。それを聞いてどうするのかと言いたい処だが、叩かれてる時の感情を言葉で表現するならまあ、『快感』だ。

  誰だ?今、私のことを変態だと言った奴は!

  仕方がないだろう。私は日々、人に叩かれることを生業としているのだから。しかも、叩かれることで人様の役に立っている。人の為に己を犠牲にする。格好いいと思わないか?

  なに?是非ともその仕事を紹介して欲しいだと?君、ただ若いお姉さんに叩かれてみたいだけじゃないのか?それに君にこの仕事は無理だ。構造上の問題でな。

  毎日私を叩いてくれているお姉さん。実は初めて叩かれたときはヘタクソだった。叩くのがな。あの頃は快感ではなく、ただ痛いだけだったさ。嫌だったよ。

  しかし日を追うごとに、彼女の叩くスキルは上がっていき、今では叩くことに関してはプロ級。彼女無しでは生きられない体になってしまったようだ。毎日彼女に叩かれるのが楽しみでしょうがない。

  しかしこないだ、私の仲間がボヤいていた。

「最近、あまり叩かれなくなったよ」

  毎日ヒマで仕方がないそうだ。失業というものだ。なんでも『でっかい奴』に、叩かれる仕事を奪われたそうだ。動きたくても、自分では動けないもんだから、失業した仲間の体にはホコリが溜まっていた。泣いていたよ。

  仲間から仕事を奪った『でっかい奴』は、毎日の叩かれる量が私達と比べ物にならないくらい多いらしい。私が失業するのも時間の問題だ。

  そんな私達も実は元々、この叩かれる仕事は他の奴等から奪った仕事だ。私達に仕事を奪われる前まで、そいつらは『叩かれる』のではなく『はじかれる』のを生業としていた。

  確かに私達は今、『はじかれてた奴等』より数段仕事が出来てるかもしれない。しかし結果としてそれは、私達を叩く者の『考える力』を退化させていた。

  しかし『はじかれてた奴等』は違った。はじく者の『考える力』を鍛えていた。

  人間は一度職を失っても、また次の職を見つけられるかもしれない。しかし私達は違う。はじめから私達は、人に叩かれる為だけに生まれてきた。叩かれなくなればホコリがたまっていき、命が尽きるのを待つのみだ。

  私達は電卓という名の道具であり、いままで叩かれ続けてきた。しかしいつかは私も、叩かれなくなった仲間やはじかれなくなった算盤達のように、ホコリまみれになる日が来るのだろう。悲しいことだ…。


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このストーリーに関するコメント

14/12/17 夏日 純希

クイズっぽくて面白かったです。
というか、冒頭、脳内では完全にムチで叩かれてましたが(爆死

電卓さん、次はキーボードに生まれ変われることを祈っています。
ただし、メガネな野郎が相手でも、がっかりしないで下さい。

14/12/19 そらの珊瑚

霜月 秋介さん、拝読しました。

もぐらたたき? 布団? 「はじかれる」のところでまったくわからなくなりました。
私の負けです。(笑い)
そういえば、時代とともに要らなくなってしまう物って他にもたくさんありそう。
使われなくなったら道具としての価値もなくなるって、悲しいことですね。

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