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泡沫恋歌さん

泡沫恋歌(うたかた れんか)と申します。

性別 女性
将来の夢 いろいろ有りますが、声優ソムリエになりたいかも。
座右の銘 楽しんで創作をすること。

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不条理な男

14/12/12 コンテスト(テーマ):第七十一回 時空モノガタリ文学賞【 不条理 】 コメント:10件 泡沫恋歌 閲覧数:1668

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「――だから、不条理だと思わないか?」
「はぁ〜?」
 スマホで音ゲーやってる僕はイヤフォンを付けていたので、友人の石田君が何に同意を求めているのか、分からなかった。
「クリスマスだよ。世間はクリスマスで浮かれてるけど、いったいダレ得なんだ?」
「そりゃー、リア充な奴らや子どもが喜ぶだろう」
「違う! そんなこと訊いてない。GODと仏と神様ではクリスマス商戦で得するのが誰なんだ?」
 大学の講義が終わった僕らは食堂のテーブルに所在なさげに座っていた。
 一週間の半分は偏頭痛のせいで不機嫌な石田君も、たまに晴れ空のように機嫌がよい日がある。そんな時の彼はやたらと饒舌になり、いきなり不毛な議論をふっかけてくるから困る。
「キリストの誕生祝いだから、GODだろ?」
「カーネル・サンダースだ。赤い帽子と服を着ればサンタクロースにもなれる」
「ファッ!? 意味分からん」
「大昔に死んだ聖者の誕生日を全世界でお祝いすることが不条理だとは思わないか?」
 理解不能な思考回路を持つ、この男の方がよっぽど不条理な存在だ。

 石田君と僕は高校からの同級生で、くされ縁から大学も一緒になった。――てか、僕の志望した大学に石田君がついてきた訳なのだが。
 身長180センチ、細身で眉目秀麗、ストレートの長い髪を時々鬱陶しそうに掻きあげる仕草はまさに絵になる男だ。それに比べて、彼より12センチ背の低い僕は童顔で時々中学生に間違われる。
 本来なら女の子にモテモテだろうし、しかも優秀な頭脳を持った石田君だが、持病の偏頭痛に悩まされてリア充は捨てたと公言している。
 最近、大学の腐女子たちに、石田君と僕がいつもツレあっているからと、どうもヘンな噂を立てられているようだ。――だが、断じて違う! 僕らはBLとかそういう要素は全くない。
 僕らの関係は……ひと言では説明し難いが、変人過ぎて友達のいない石田君を保護してあげた親切な僕というか、なぜか石田君に懐かれてしまった気の毒な僕なのだ。

「けど、俺はクリスマス嫌いじゃない」
 何だよ! さっき、クリスマスの批判してたくせに。
「プレゼント貰えるから?」
「違う! 男が堂々とケーキを食べる日だから」
 クリスマス以外の日に、男がケーキを食べてるって、なんか照れくさいかもな。
「俺の密かな夢を教えよう。バスタブに生クリームをたっぷり入れて浸かりたい」
「うわっ! それってヘンタイだよ」
 何しろ石田君は無類の甘党なのだ。今も手に缶おしるこを持って、それをちびちび飲みながら語っている。缶おしるこを売っている自販機は極端に少ないので遠くまで買いに行ってるらしい。ムスッと不機嫌そうな顔でプリンを食べてる石田君は、まさにギャップ萌えの男なのだ。
 さっきから、隣のテーブルの腐女子のグループが僕らの方を熱い視線でみている。たぶん、男前の石田狙いだと思うが……なんか気になる。何しろ、乙女ゲーで頭の中を浸食された彼女たちには、石田君のような男がご馳走らしい。 

「攻めてきたら、こっちも受けて立つさ!」
 脈絡もなく、いきなり石田君が大声でそういった。
 えっ!? なにそれ? 隣の腐女子たちが一瞬どよめいた。
 そ、そ、それは決して口にしてはいけない。BL好きには堪らないキーワードだ!
「石田君、それはダメ!」
「は? 囲碁の話だ。俺の趣味の話さ」
 多趣味、多芸の石田君は囲碁も上手い。そんな年寄り染みたと思うが、町内の老人会で囲碁の指導をするくらいの腕前らしい。
 子どもの頃、田舎のお祖父ちゃんの家で碁石をオセロと間違えて「おじいちゃん、これ裏も表も色が変わらない」といって、親戚中の笑い者にされ、挙句『あほの子』認定を受けた僕は囲碁なんか大嫌いだ。
「黒と白のせめぎ合いだから」
「……だから、攻めるとか受けるって言葉がNGなんだ」
「なぜだ?」
 どうやら、石田君は何も分かっていないようだ。
 僕らの会話に聴き耳を立てている、隣の腐女子たちに目配せをして、僕は声をひそめて、
「……そういうことをいうと誤解されるんだって」
「なにを?」
「だから噂に……」
「おまえのそういう心配性なところが女みたいで、ほんと可愛いよなー」
 と言って、僕の頭をわしゃわしゃ撫でた。ぐはっ! なんてことするんだ。
 隣のBL好きの腐女子たちが確信に充ちた顔で僕らを見ている。
「よし! 駅前にスイーツの美味しい店がある。ついてこい奢ってやるさ」
 そういうと石田君は僕の腕を掴んだ。まるで肩を抱かれるようにして拉致られた。このシュチエーションはヤバ過ぎる! 選りによって石田君と僕が淫靡な関係なんて有りえない。それこそ不条理だ!

 その後、駅前のお店にまで、腐女子たちが僕らを追跡してきたことは言うまでもない。


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このストーリーに関するコメント

14/12/12 泡沫恋歌

『石田君と僕らの日常』という、事件もない、恋愛もない、BLでもない。
ただ、二人の男が不毛な会話をするだけの物語です。

14/12/12 泡沫恋歌

『石田君と僕らの日常』という、事件もない、恋愛もない、BLでもない。
ただ、二人の男が不毛な会話をするだけの物語です。

14/12/13 そらの珊瑚

泡沫恋歌さん、拝読しました。

我が道を行く石田君と、僕との会話がとても楽しくて、ほのぼのとしました。
石田君が甘党って意外性もあって、いいキャラクターですね。
続編読んでみたいです♪

14/12/15 草愛やし美

泡沫恋歌さん、拝読しました。

とてもユニークなキャラ石田君、再登場ですね、僕も楽しそうでうけます。

クリスマス、なるほど、不条理極まりないお祭りでしょうか。日本におけるそれは、まさにそのものです。最近は、ハロウィンまで大騒ぎになっている国ですから、あれ、おかしいのでは?と思うことしばしばです。若者は全く気にしてませんが、宗教行事で騒ぐのは海外からは、どう見えているのかと思うことあります。
まあ、楽しい時間がいっぱいの国はそれはそれで良いかなとも思います。どんどん、快楽に(苦笑)染まっていく私です。大汗

14/12/17 たま

恋歌さま、拝読しました。
まるで漫才のようなふたりの会話がとても洒落ています。
このまま漫才の台本になりますね。それはそれで凄いことです。
セリフの妙味はその作者の持って生まれたセンスだと思います。
石田君と僕のシリーズですか?
ぜひ、続きを読ませてくださいね♪

14/12/18 ドーナツ

拝読しました。

不毛な会話と書いてありますが、私はこの二人の会話にくわわりたいです。
GODと仏と神様ではクリスマス商戦で得するのが誰なんだ>)これスッゴイ興味深いテーマ。

読みながら、真剣に考えてしまった。
わたしも二人の会話がどこへ行くのか、続木を読みたいです。

14/12/19 鮎風 遊

若い男たちのノリ、昔は私もこんなのだったのかなと、
ちょっと懐かしい気分にもなりました。
もちろんBLはありませんでしたが。

ポンポンと飛び出す現代単語、なるほどと感心しました。
ちょっと使ってみようかと思いましたが、ドンビキされそうですね。

14/12/24 黒糖ロール

BLネタがわかってしまう自分ってどうなんだ、
と思いながら楽しませていただきました(笑)
さわやかなBLもの、よかったです(ほんとの意味でBLじゃないんでしょうけど)。

14/12/29 泡沫恋歌

スイマセン。
なぜか、同じコメントが二回反映されました。

そらの珊瑚 様、コメントありがとうございます。

石田君は私の嗜好に合わせて、超甘党のキャラにしました。
男の人にも案外甘党が多いようですよ。


草藍 様、コメントありがとうございます。

石田君を愛される『変人キャラ』として書いていきたいと思っています。
日本には神道がありますから、後はイベントみたいなものでしょうか(笑)


たま 様、コメントありがとうございます。

キャラクターを描くというのが、私の持ち味のひとつだと自負しています。
漫才コンビのような、この二人の今後のドタバタ劇をどうぞお楽しみに〜♪

14/12/29 泡沫恋歌

ドーナツ 様、コメントありがとうございます。

GODと仏と神様ではクリスマス商戦で得するのが誰なんだ?
たぶん、答えはイオンとか大型ショッピングモールだと思いますね。
この二人の不毛の会話は、グダグダと続いていくことでしょう(笑)


鮎風 遊 様、コメントありがとうございます。

私は若い女の子たちの会話よりも、可愛い男の子同士の会話の方が興味がある。
BLってほどではないけれど、イケメン二人の絡みは萌えます(笑)
昔は、みんな白皙の美少年です 壁]ω・)ニャ


黒糖ロール 様、コメントありがとうございます。

18禁のBLじゃなくて、爽やか青春系のBLですよ(笑)
正直、本物のBLはさすがに引きます! TVアニメ『Free』程度の青春学園物が好きなんです。
いい年して、娘とアニメ観てますσ(´∀` )ァタシ

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