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ゆうか♪さん

埼玉在住で、気が向いたら小説や詩やエッセイなどを書いています。                                                                                          下手の横好きで未熟者ですが、読んで下さった方がほっとするようなものをメインに書いていきたいと思っています。                                                                                                 たまに気分が沈んでいる時は暗いものも書いたりして、読者の気分を落とす危険性も……汗                                                                                                        こちらでは短編しか投稿できないので、その他の長編などは、ノベリストに投稿しています。                                                http://novelist.jp/member.php?id29090

性別 女性
将来の夢 色んな想いを描きたい。そして、それを読んだ方が何かひとつでも心の糧になるものを得てもらえたら・・何よりの幸せです。ヽ∩_∩ノ
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空と風と少年と…

12/07/09 コンテスト(テーマ):第十回 時空モノガタリ文学賞【 自転車 】 コメント:10件 ゆうか♪ 閲覧数:1949

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 坂道を颯爽と一人の少年が滑降してくる。
 晴れた日の青空をバックに降りてくる真っ白な自転車。
 それに乗って、いかにも楽しそうな表情で降りてくる。
 彼の笑顔はまるで空と友達でもあるかのように明るく、風を仲間として飛ぶように降りてくる。

 毎日閉じこもった部屋の窓から眺める風景。
 その中に時々覗く彼の笑顔。
 わたしは唯一それを見るのが楽しみだった。
 この部屋に閉じこもるようになって何年経つだろう。
 それは中学に入学してすぐのことだった。学校へ行くことが苦痛でしかなくなった。
 外の楽しみも忘れ、人と接することが怖くて、ずっと独りきりで音のない世界に浸って過ごしてきた。
 でももしかしたら、こんなわたしでも空と友達になり、風を仲間にして羽ばたくことができるかもしれない――その少年を見ていると、なんとなくそんな気分になれた。

 それなのに――
 ある日の午後、その少年は仲間の風とともに逝ってしまった。遠いところへ。
 猛スピードで走ってきた大型トラックが、その坂道を、わたしの目の前を、いきなり横切っていった。
 ガツッ!!
 激しい音と共に、少年の身体も自転車も跳ね飛ばされ、トラックの急ブレーキの音に、付近の家々の窓や戸が一斉に開いた。その中の誰かが呼んだのだろう。まもなく救急車やパトカーが集まってきたが、少年の脈はすでにこと切れていたようで、周囲を取り巻く人々の渦からは、哀れみの溜め息が風に乗って流れてきた。

 なんてことだろう。

 少年の天使のような笑顔がわたしを救ってくれるかもしれなかったのに……。
 この暗い苦しみの闇から開放してくれるかもしれなかったのに……。
 そう思って、じっと目を閉じた。

 そして、コンコンという音に目を開いたとき、ありえないものが見えた。
 二階のわたしの部屋の窓の外に、少年が屈託なく笑っている。
 よく見ると背中に羽が生えていて、彼は空中に浮かんでいた。
 わたしが呆然と彼を見つめていると、少年はまたコンコンと窓ガラスをノックする。そして、カモーンとでも言うように人差し指を曲げる。
 わたしは、操り人形のようにぎくしゃくとした動きで窓ガラスを開けた。
 すると少年はわたしの腕を掴み、そのまま空高くへと舞い上がった。
 わたしは鳥になり、風になり、雲になった。
 少しもっこりした雲の上には、彼のお気に入りの自転車がそっと置かれていて、彼がそれに乗り、わたしは彼の後ろに乗った。

 彼はいつもの坂道を下るように、気持ち良さそうにその自転車を走らせ、わたしの胸を高鳴らせてくれた。

 しばらくの遊覧飛行の後、少年は少し悲しそうな顔をしてわたしに言った。
「ミカ、君はまだ生きているんだ。まだ これからいっぱい飛べるんだよ!」と。

 翌日わたしは、何年かぶりで自宅の玄関の外へ出た。
 見上げると、真っ青な空の上で少年が笑っていた。とても嬉しそうに……。
「ありがとう」
 わたしは空に向かってそっと呟いた。


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このストーリーに関するコメント

12/07/09 デーオ

(思い浮かべる)ビジュアル的にはいい。
文字数制限があるが、少年が少女を見ているシーンがあればよかった。

12/07/09 ゆうか♪

デーオさん いつもコメントありがとうございます。

ビジュアル的には良かったですか? ヾ(*´ー`*)ノ゛ありがとう♪
ただ、この作品は私的には少女の一方的な想いが、少年が死ぬことで届いた・・というような、そんな内容にしたかったもので・・
どうもすみません。m(_ _)m

12/07/11 汐月夜空

少年と少女に直接的な関係が無いのが印象深い物語ですね。
全て少女の中で自己完結している話ながらも、少女が部屋から出れるようになったことで、少年の生にも意味が出来たようでよかったです。
自転車事故って、決定的で絶望的なものが多いですよね。それでも、自転車には誰かを救う力もあるんだ、と感じました。例え夢でも、幸せならば、幸せになれるならば、それでいいんだと思います。

12/07/11 ゆうか♪

汐月さん いつもコメントありがとうございます。

今回は汐月さんのコメを読んで、改めて気付かされる部分が多々ありました。自分で書いた作品なのに・・汗
いつもながら深く読み込んで下さって、本当に嬉しいです。(*^-^*)

12/07/14 かめかめ

タイトル入りのイラストはゆうか♪さんのオリジナルでしょうか?

12/07/15 ゆうか♪

かめかめさん こんにちわ(^o^)丿

私が使ってる作品のイメージ画像は、いつものことですが、無料サイトから引っ張ってきたものを自分で少し加工して作ったものです。
こういうのをオリジナルというのかどうか・・・:∵(;´∀`A冷汗il||li

残念ながら、私には絵心はないので・・(T-T)
コメントヾ(*´ー`*)ノ゛ありがとう♪

12/07/15 そらの珊瑚

ゆうか♪さん
拝読しました。

ファンタジーですね。
ひきこもり、したことないので想像ですが
決して外へ行きたくないのではなくて
行きたいのだけれど、行けないジレンマが苦しいのではないでしょうか。
その証拠に少女は毎朝外を眺めている。

少年はもしかしたら、少女に外へ出るその一歩を与えるためだけに
生み出された天使みたいな存在だったのかも
と思いました。(名前を知っていたのもそれで納得です)

12/07/16 ゆうか♪

珊瑚さん こんにちわ。

コメントありがとう♪
なかなかの想像力ですね!
私もひきこもりの経験は無いのですが、言われる通りじゃないかと思います。ただ、出る切欠が掴めない。

そんな少女の前に現れた少年は、正に神様が・・きっとそうなのでしょう♪
物語は、その解釈はいつも読者のものですから☆

名前については、不思議なことなのですが、私には少年が知っていて当然なような、そんな気持ちがしていました。

ともかく珊瑚さんの解釈は、私にとっては、とても嬉しい解釈でした。
本当にヾ(*´ー`*)ノ゛ありがとう♪

12/07/20 郷田三郎

読ませて頂きました。
一瞬、このまま主人公もお空へ連れてゆかれるのでは? と思いましたが、彼がそんな子じゃなくてよかったです。
このまま引きこもりが解消されるとは思わないけど、この奇跡がきっかけで主人公が立ち直るきっかけ掴んだとしたら、いいなぁ、と思いました。

12/07/20 ゆうか♪

郷田さん わざわざコメントを寄せて下さってヾ(*´ー`*)ノ゛ありがとう♪
優しいお言葉嬉しかったです。ヽ(*∩_∩*)ノ

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