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坂井Kさん

今年(2014年)は思い付きと勢いだけで書いてきましたが、来年(2015年)は、状況設定をもう少し固めてから書こうかな、と思っています。スティーヴン・キングによると、「状況設定をシッカリとすれば、プロットは無用の長物」らしいですから。

性別 男性
将来の夢 夢というより目標として、来年(2015年)こそ長編小説を書き上げたい。
座右の銘 明日はきっと、いい日になる。

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まるいやつ

14/11/29 コンテスト(テーマ):第七十一回 時空モノガタリ文学賞【 不条理 】 コメント:0件 坂井K 閲覧数:773

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 彼は帽子を被ってた。年がら年中被ってた。

 あれは中一、新学年。隣に座ったコイケくん、いつも帽子を被ってた。授業中でも被ってた。大きなつばのある帽子、目深に被って座ってた。「コイケくん、何で帽子を脱がないの?」疑問に思って聞いてみた。「脱いだら周りが迷惑さ。みんな座っちゃいられない」

――あれは小学四年生。学校帰りに歩いてた城跡にある公園で、僕の目の前横切った、小さくキレイなまるいやつ。何だろう? 僕はその後追いかけて、林の中に入ってた。だけど途中で見失い、その日はあきらめ帰宅した。

 三日後に、僕はそいつの潜んでる、木の洞見つけて手を入れた。ほんの小さな木の洞なのに、肘まで入れても届かない。肩まで入れても届かない。どうなってんだ? この洞は。おい、おーい! 僕はそいつを呼んでみた。

 反応がない。出て来ない。しばらく待ってみたけれど、その日はあきらめ帰宅した。まるいやつ、ハッキリ姿を見せたのは、それから四日も経った後。まる。まるん。まるる。まるるん。まるるるる。ヤケクソで言った言葉に喜んで、木の洞を出て、周り出す。僕の周りを、周り出す――

「まるいやつ……そいつは一体何だろね?」「たぶん妖精の類だろう」コイケくん、真面目な顔で答えてた。嘘を言ってる顔じゃない。「そいつの存在信じるよ。出来れば僕も会いたいな」コイケくん、眉をひそめてこう言った。「ダメだよ、やめた方がいい。帽子を手放せなくなるよ」

――まる。まるん。まるる。まるるん。まるるるる。いつものように声を出す。僕の掛け声聞き付けて、あいつはいつも現れる。目鼻もあるし口もある。なのに一切声出さない。キラキラ虹色まるいやつ。そう言や名前を付けてない。僕は名前を付けようと、多くの候補を口に出す。

 まるっちょ。まるっち。まるこっこ。あいつは反応示さない。まる夫。まる助。まる之進。とことことこ……。やつは無視して歩き出す。「おいコラ待てよ、バカにすな。こっちを向いて僕を見ろ!」僕は大声出したけど、やつは無視して去って行く。チクショウチクショウ明日こそ、あいつが気に入る名を付けて、こっちの方を向かせたる!

 家に帰って考える。やつの名前を考える。かわいい名前を考える。まるちん。まるたん。まるのくん。カッケー名前も考える。まるーに。まるのー。まるすとてれす。ついでにダサい名前もだ。猿まる。くそまる。ただのまる。こんだけあれば、まるいやつ、気に入る名前もあるだろう――

「ちょい待って。まるいやつ、そいつはたった一人なの? それとも他にもいたのかな?」「僕が見たのは一人だけれど、たぶん近くにもっといた。何か気配がしたからね」「そうなんだ……。それからさ、まるいやつ、色や形があまり良くイメージ出来ない。描いてよ、ここに」色鉛筆とノートを渡す。

――まる。まるん。まるる。まるるん。まるるるる。次の日になり声を出す。僕の掛け声聞き付けて、あいつはすぐに現れる。まるちん。まるたん。まるのくん。まるーに。まるのー。まるすとてれす。ところがやつは見てるだけ。少し離れて見てるだけ。

 猿まる。くそまる。ただのまる。ダメで元々言ってみる。やつの身体の虹色が、青一色に変化した。何だ一体? シューシューシュー。やつが口から息を吐く。「危ない! もっと離れなさい」誰だ一体? 振り返る。そこには爺さん立っていた。何度か見かけたことのある、野球帽の爺さんだ。

「一体何が危ないの?」僕は疑問を口に出す。「シューシューいう音それはだな、やつが発する警告音。逃げんとヤバいことになる」「たかが小さいまるいやつ。恐れることなどないでしょう?」侮っていた僕はまだ、やつの怖さを知らないで。「しゃがみなさい!」爺さん、いきなり怒鳴り出す。――

 コイケくん、絵を描きながら話してくれた。「こんな感じだ。似てないけどね」彼の描いた絵を見ると、七色のまるいボールに手足が生えた、ギョロギョロ目をした天狗鼻(口が見えないほど長い)。思わずプフッと吹き出した。「正直、変な顔だよね……どうでもいいけど、耳は無いんだ?」「大きな耳は無かったね」

 ふと見ると、コイケくん、帽子で耳を隠してる。帽子の下がどうなってるか、今すぐ取って、見たくなる。「コイケくん、たった一度でいいからさ、帽子を取ってくれないか?」「いいけどさ、後悔したって知らないよ」シューシューシュー。彼の耳から音がした。

――僕は一応しゃがんだが、反応少し遅かった。やつが頭にへばりつく。チクショウチクショウ何だこれ。僕は剥がしにかかったが、どうやったって取れはしない。「遅かったなあ、お前さん。それは一生取れないぞ」帽子を取った爺さんの、頭の色は……虹色だ。キラキラ眩しい虹色だ。目を開けてなどいられない――

 僕は帽子を被ってる。年がら年中被ってる。


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