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草愛やし美さん

時空文学コンテスト開催100回、おめでとうございます。思えば、初めて私が、こちらに投稿したのは2012年5月のこと、もう4年近く経ったのですね。時空モノガタリさまが、創作の場を与えてくださったお陰で楽しい時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 また、拙い私の作品を読んでくださった方々に感謝しております。 やし美というのは本名です、母がつけてくれた名前、生まれた時にラジオから流れていた、島崎藤村作詞の「椰子の実」にちなんで……大好きな名前です。ツイッター:草藍やし美、https://twitter.com/cocosouai 

性別 女性
将来の夢 いっぱい食べて飲んでも痩せているっての、いいだろうなあ〜〜
座右の銘 今を生きる  

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秘密のシータ

14/10/17 コンテスト(テーマ):第六十七回 時空モノガタリ文学賞【 秘密 】  コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:1236

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 あれ!? 公園のベンチで転寝していた僕の耳に奇妙な話し声が聞こえてきた。
「難しくはにゃい飼い主さんもきっと分ってくれるにゃん」
『ニャオ〜ン』
 ベンチの植え込みから三匹の猫が見える。何気なくその光景を見ていた僕は思わず跳ね起きた。
「えつ、今、猫が話した!?」 
 中にいる一匹の白猫が、確かに人間の言葉を話したのだ。僕の声に驚いた猫たちは一斉に逃げた──と思ったが、白猫は僕と同じようにその場に立ち竦んだまま。僕と白猫はお互い視線を逸らすことができず呆然と暫く見合っていた。
 ようやく我に返った白猫が、先に話しかけてきた。
「にゃんと、私、あなたの言葉がわかるにゃ」
「僕も君の言葉がわかる、君、本当に猫だよねぇ」
「初めてにゃ人間の言葉が分かるにゃんて……」
 それが白猫のシータとの出会いだった。お互いに、他の人間や猫の言葉は分からなかったが、僕らは不思議なものに惹かれ、お互い警戒することも無くすぐに友達になり、毎日、いろいろな話をした。シータから聞く猫社会の話は驚くことばかりだった。猫の目を通した人間の姿は滑稽でさえあった。――毎晩、猫を起こしトイレへ連れて行く怖がりの飼い主さん。反対に飼い主が心配で仕方ない猫は、トイレに監視に行きトイレのドアを開けるまで鳴き続け爪で扉をガリガリやっているらしい。無理強いされ炊飯器や土鍋に閉じ込められた猫もいるとか、人間相手なら監禁罪になるかもだ。──誰にも知られない閉ざされた家の中で飼い主たちは、猫相手に秘密の姿を見せているのかもしれない。僕とシータが話せることはお互い秘密にしようと決めていた。
 ◇
 そんなある日、息せき切ってシータがやってきた。
「飼い主のおじいさんが倒れているにゃん、助けてー」
 シータの飼い主さんが独り暮らしの老人だと聞いていた僕は、急ぎシータの家まで走った。玄関が締まっていたが、シータの案内で裏庭に回り縁側かた中に入ると、おじいさんは胸を押さえ倒れていた。携帯で救急車を呼び、すぐさま心臓マッサージと人工呼吸を始めた。心臓発作は倒れた後の数分間でその後の症状が決まる。初めの危機を乗り越えることが第一、医学生として勉強していることが役立てばいいが……。シータが、おじいさんを助けてと僕に必死に頼んでいる。「シータ、大丈夫、僕が付いて行くからね」 救急車の隊員が変な顔で僕を見たが構わない、シータに話し僕は到着した救急車に乗り込んだ。処置室の前で、僕はシータがどんな思いで待っているだろうと思うと堪らない気持ちになる。飼い主さんと自分の祖父が重なる、今度勉強が一段落したら田舎に逢いに行こう。そんなことを考えながらシータの飼い主さんの無事を祈っていた。
 長い時間が過ぎた後、ようやく処置室のランプが消えた。飼い主さんが、無事一命を取り留めることができたと聞いたとたん、体中の力が抜けるのを覚えた。シータの喜ぶ顔が目に浮かびほっとした。その時、一人の女性が病室に駆け込んできた。
「良かった……。あなた様に祖父が助けていただいたそうで、ありがとうございます」
 おじいさんの孫娘さんだったが、その女性を見て僕は驚いた。本当に驚いた。その女性を僕はよく知っていたからだ。彼女は僕のことなんか知らないだろうが……、僕にとっては、夢にまで見る憧れの人だった。毎朝学校に行く駅で見かけずっと心に思ってきた人だ。僕はその人に会いたくて、ここ数ヶ月の間、彼女と同じ時刻の電車に乗るために、一時限の授業がない日も、朝早起きして出かけたりしていた。その彼女が目の前にいて、にっこり僕に笑いかけている。
「一人暮らしは大変だからと何度言っても、気楽だからあそこが良いと言って……。おじいちゃん、なかなか同居してくれなかったんです。心配で何度も会いに行っていましたが、いつも元気そうで安心していたんです。本当にありがとうございました」
 ◇
 その後の僕らがどうなったって? 今、僕は医者になり結婚したんだ。僕の奥さんはその時の彼女。とても優しい人で、僕の自慢の奥さんなんだ、いや〜照れるなぁ――のろけるなってハハハごめんよ。シータは、どうなったって? 今、僕の傍にいるよ、楽しそうに飼い主のおじいさんと遊んでいるよ。
 僕とシータの間には誰も知らない秘密がある。僕らの運命を決めることになった秘密。シータとの秘密があるからこそ、医者だけど僕は不思議なことも信じられる。患者さんのために、僕は医療で最善を尽くす。でも医者の力の及ばない目に見えないことも信じている。最近、意識のなくなった患者さんも、家族の声が聞こえていると医学的に発表された。愛する人に向かう家族の真剣な心の叫びは、きっと患者さんの心に響くはずだと僕は思う。
 僕はシータとの秘密を心に秘め大切にしている。傍でシータが、「私も一緒にゃん」と小声で笑っている。


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このストーリーに関するコメント

14/10/18 メラ

草藍さん、拝読しました。
いいお話ですね。緊迫したムードも伝わりました。私は猫大好きなので、いつか猫と話がしたいです。
ストーリーにもありましたが、写真の炊飯器の猫・・・。入るんですね・・・。

14/10/18 泡沫恋歌

草藍 様、拝読しました。

猫と人間とが会話できたら楽しいだろうなあー♪
私も猫好きなので、時々、近所の野良猫と目で会話してますよ。
おじいさんが助かって、その孫娘まで手に入れた主人公はホント幸せ者ですね。

こういうハッピーエンドなら読んでいて心が温まります。

14/10/19 そらの珊瑚

草藍さん、拝読しました。

かわいいファンタジーに思わずにっこりしました。
私も是非、猫と話したい! もちろん秘密にしますから。

14/10/20 夏日 純希

猫と話せたらいいですよねぇ。
ほんわか楽しかったです。

最後のお医者さんになってからの一節がいいですね。
論理的でないといけない傍ら、未知への扉はいつも開いておかなければなりませんよね。
僕もそうあれるように、意識して生活するようにします。
ありがとうございました。

14/10/20 鮎風 遊

私もシータのような猫に出逢いたいです。
面白いでしょうね、いろいろと話ししたら。

そう言えば、いつもの川沿いの散歩道に4、5匹の野良猫がいます。
いつも誰か来て、喋ってますわ。
中に白い猫がおりますが、あれ、シータの親戚かな?

ほのぼのと面白かったです。

14/10/21 滝沢朱音

草藍さん、秘密で3つ書かれていたんですね!
しかもどれも違っててすごい。。。草藍さんワールドは奥深すぎます。

猫のキューピッドにゃん。
にゃんこシリーズ、私も好きですにゃー(ΦωΦ)

14/10/21 光石七

拝読しました。
猫と話せるなんて、ニャンて羨ましい!
ほのぼのと温かいお話ですが、目に見えないものの大切さに気付かせてくれるお話でもありました。

14/10/28 草愛やし美

>メラさん、この炊飯器猫ちゃん、可愛いですよね。思わず飛びついてしまいました。温かいからかしら、それとも居心地いいのかしら。
土鍋に入るにゃんさんたちも見たことありますが、あっちは冷たいだろうと思うのに、なぜなのでしょうねえ? 猫は寒がりなのに、土鍋ってあったかいのかしらん(-_-)ウーム 猫の話は、猫好き友人から聞いたものを書いています。結構猫さんって面白いかもですね。スパイ的な要素大有りですよ、私も話してみたいです。コメントありがとうございました。

>泡沫恋歌さん、いつもお立ち寄りくださって嬉しいです。コメント励みになります、ありがとうございます。

数年前に書いた過去作を推敲して投稿しましたが、元作が4,5倍の長さだったので、短くするのに苦労しました。何とか作品らしい恰好になってほっとしています。

>そらの珊瑚さん、猫って見ているだけで可愛くて話の素材になります。話せればどんなに面白い作品書けるかしらと思うことあります。苦笑
コメントありがとうございました。

>OHIMEさん、猫ほど、秘密にぴったりする生き物はいないと思います。人と猫が会話できるようになれば、スパイ活動バッチリだと思います。恋するお相手の家に派遣させて、本音を聞いてくるとかできそうな気がします。ああ、そうなると商売になるかもです。卑しい私はそっちへ脳みそが行ってしまいそうです。苦笑
画像3枚目のお猫ちゃま、疑問に思う探求心旺盛な猫ちゃまなのでしょうねえ。こちらこそ、コメント励みになりました、ありがとうございました。

>夏日純希さん、お読みくださって感謝しています。

楽しんでいただけたの嬉しいコメントありがとうございます。怠け者の私ですが、猫さんたちに恥じないような暮らしをしたいと願っています。

>鮎風游さん、コメントありがとうございます。

そそ、猫って見かえると話しかける人いますよね。私もその中の一人ですが……。なぜか自分を見てくれるので、話が通じそうに思ってしまうのです。もしかしたら、こちらはわからなくて、猫にだけはわかっていたりして( ̄-  ̄ ) ンーだとしたら、やばいかも。何がなんて聞かないでください。汗

>滝沢朱音さん、秘密がまたまた難しくてああでもない、こうでもないと悩み続け、結果3つ出すことにしました。運営さんが2〜3と温かいお言葉を書いてくださっているのに甘えました。何を出してよいか最後まで迷った末の結末ですが……大汗 にゃんこは素材としてファンタジものに扱うのにぴったりの生物だと感謝しています。笑

>光石七さん、お読みいただきありがとうございます。

光石さんのお宅の黒猫ちゃんも話せそうな気がします。夜中とかどうでしょうか? もしかして、時間限定で話せたりして。──こんなこと考えると楽しくなります。コメント励みにして頑張りたいです、ありがとうございました。

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