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アシタバさん

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つかまえて

14/10/16 コンテスト(テーマ):第六十八回 時空モノガタリ文学賞【猛スピードで】 コメント:1件 アシタバ 閲覧数:747

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中学生の時のぼく。
気になる女の子がいた。
その子に悪口を言っては校舎を追いかけまわされる日々。
ほぼ毎日。懲りずに来る日も、来る日も。
ぼくはそれしか彼女との接し方を知らなかった。
周りの同級生たちは呆れていた。
それでも彼女は律儀にそれに付き合ってくれる。
他の生徒達をすり抜けて、すり抜けて、廊下を駆けて逃げる。
そして、最後はいつも四階に逃げ込む。
意図的に。
空き教室と倉庫ばかりで人気のない四階の廊下。
まっすぐにのびている。
振り向くと彼女は笑っていた。
勝利を確信した笑み。
彼女が走り出す。
とても美しいフォームで。
髪がなびく。
猛スピードだ。
さすがは陸上部。
また、今日もつかまる。
ライオンに狩られるシマウマのように。
そして、つかまったぼくはチョークスリーパーをかまされた。
まいったか、と彼女が笑っている。
首を絞められながら、ぼくも笑う。
昨日も今日も明日も明後日も、ずっとこんな感じで。

彼女の足に異変が起きた。
疲労骨折、原因は部活での熱心な練習によるもの。
大会出場をあきらめたらしい。
自分にも責任があるかもしれない、そう思った。
元気を出して欲しい。
だけど、いつものようにしか接することしか出来ない。
おい、ぼくのこと追いかけて来いよ。
いつものように怒ってみろよ。ねぇ。ねぇ。
席に座り、彼女は黙って下を向いていたが。
やがて、すすり泣きを始めた。
その状況に言葉を失う。
彼女の友達が皆で駆け寄り、ぼくを睨み付ける。
自分の所為で彼女を泣かせてしまった。
どうしていいかわからない。
自分の席に戻り、ただ唇を噛みしめることしかできない。
素直に謝って仲直りがしたかった。
また、前みたいに笑ってほしかった。
しかし、言葉が口から出てこない。
それどころか、彼女の顔をちゃんと見ることが出来ない。
自分の幼さ、弱さを恨む。
強くなれないまま、日々が過ぎ去る。
猛スピードで。
やがて、卒業式を迎え、別々の高校に入り。
もう、会うことは無くなった。

大学生の時の僕。
飲み会の帰り道。
人のない夜の暗い並木道だった。
まっすぐにのびている。
ふと、思い出がよみがえる。
久しぶりに走ってみた。
全速力で。
しかし、運動不足と酔いですぐに失速してしまう。
後ろを振り向く。
当たり前だが、誰もいない。
只々、暗い道だけが広がっていた。
あの頃を懐かしく思う。
月日は瞬く間にすぎていった。
僕を追いかけるあの女の子はもういない。
そんなことはわかっている。
それでも。
あの猛スピードで。
もう一度、つかまえてほしかった。


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このストーリーに関するコメント

14/10/17 アシタバ

学校の廊下はくれぐれも走らないようお願いいたします。

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