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正義の味方

14/10/04 コンテスト(テーマ):第六十七回 時空モノガタリ文学賞【 秘密 】  コメント:1件 更地 閲覧数:892

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 僕には誰にも言えない秘密がある。そう、僕はみんなの笑顔を守る正義の味方なのだ。
 とは言っても、いつも朝にテレビでしているようなカッコいいヒーローじゃない。ただみんなの笑顔を見るためにたくさん働く、そんなやつだ。僕は今のままで満足しているから目立ちたいとは思わない。みんなに褒められるのは恥ずかしいから、どうしても僕のしていることは周りに秘密じゃないといけない。
 僕は今までに色々な良いことをしてきた。それはみんな笑顔を見るためにやったことだ。大変なこともあったけど、それでみんなが幸せになるんだと思うと頑張れた。僕は正義の味方なんだから、ちょっとのことでへこたれるわけにはいかない。
 ずいぶん前のことだ。僕は虫嫌いの女の子を助けてあげたことがある。その子は本当に虫が嫌いで、特に体がやたらぶにゅぶにゅしているのや足がうじゃうじゃしているやつが本当にダメだった。見るだけで顔が真っ青になって動けなくなっていた。だからその子と一緒に小学校の中庭を掃除している最中に、落ち葉の中からムカデが出てきた時は、それはもう大変だった。ブルブル震えて、今にも倒れそうだった。だから僕はその子を助けるためにそのムカデを踏み潰した。運動靴をぐりぐりとやって、足をどけて、完璧にやっつけたのを見てから、僕は「もう大丈夫」と言った。するとその子は心の底から安心したような顔をして「ありがとう」と言ってくれた。すごく嬉しかった。
 そしてその時僕は、こんなふうに悪い奴、虫やら嫌われ者やらをやっつければ、みんなが笑顔になるんだろうなと思った。それはとても難しいことのような気がしたけど、僕は頑張るとはっきり決めた。
 僕のクラスには嫌われ者のテケル君がいた。こいつは本当に嫌な奴で、いつも誰かを教室の隅でいじめていた。僕も何度かぶたれたことがある。授業中に大きな声を出して笑ったり、給食の余ったプリンを無理やりとったり、野良猫を棒キレで突っついたりと、いいところのない悪役みたいなやつだ。教室のみんなは困っている。本当に困っている。
 僕は正義の味方だ。だから僕はみんなを助けないといけない。タケル君をやっつけなきゃダメだ。
 僕はさっそくタケル君を山の中にあるボロっちい神社に呼び出した。いらないゲームをあげると言ったら騙されてくれた。神社には人は来ない。僕は腕くらいの太さがある木の棒を持って、ボロっちい鳥居の陰でタケル君を待ち構えた。やっつけてやる。
 しばらく待っていると、タケル君がやってきた。足音でわかる。タケル君はどんどんこっちに近づいてくる。僕はじりじりしながら待って、ここだという時に飛び出し、タケル君の頭を木の棒でぶった。タケル君は痛そうな声を出して倒れてしまった。それでも僕はタケル君をポカポカ叩いた。タケル君は「痛い」「やめて」と声を上げたけど、僕は叩くのをやめなかった。僕は正義の味方なんだ。みんなを守るために、こいつをやっつけなきゃいけないんだ。
 しばらくするとタケル君が動かなくなった。僕は疲れたからその場にお尻をつけて座った。やったんだなと、嬉しさがこみ上げてきた。テストで百点を取った時のような気持ちだ。これで悪い奴はいなくなった。みんなが笑顔になるんだ。正義の味方は必ず勝つ。
 僕は最後に動かなくなったタケル君を見たけど、気持ち悪かったからそのまま帰った。木の棒は近くの川に捨てた。

 それから僕のクラスは平和になった。最初タケル君がいなくなってざわざわと落ち着かなかったけど、そのうちにそれもなくなり、みんな笑顔になった。もう誰もいじめられない。授業は静かだ。プリンをもらえる人はジャンケンで決まり、猫は安心してお昼寝できる。これは僕が頑張ったおかげだけど、誰もそのことを知らない。それでいい。
 僕には誰にも言えない秘密がある。そう、僕はみんなの笑顔を守る正義の味方なのだ。


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