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笹峰霧子さん

性別 女性
将来の夢 健康になりますように。
座右の銘 自立。いくつになっても夢を持つ。

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聖羅の夢

14/09/30 コンテスト(テーマ):第六十七回 時空モノガタリ文学賞【 秘密 】  コメント:1件 笹峰霧子 閲覧数:1553

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 一樹は自分の胸の内を誰かに話したくて仕方がなかった。聖羅と高原へドライブした帰りに立ち寄った道の駅で、「誰か知ってる人に会わないかな」とぽつりと呟き聖羅を驚かせたことがある。
 あれからふたりは行く先々でも顔見知りの誰にも会わず、ドライブを楽しんでいた。
人目に付かぬ場所を選んで出かけはしたものの、そのことが一樹にはちょっと物足りなく思えた。

「多分いつかは洋介の耳に入るだろう。そのときは俺には覚悟がある」と一樹は聖羅に言った。
洋介というのは聖羅の義兄の息子で、現在は一樹がかつて勤めていた同じ職場にいる。

「そうなの…」、聖羅は深く考えている様子はなく一樹の真剣そうな言葉に軽く相槌を打った。

 一樹には奥さんがいるけれど、聖羅はシングルで一樹のことを誰かに知られたとしても微塵も疾しいことはないと思っているのだ。ただ一方的に執着されているだけ。いつ別れたっていいのよ、聖羅はそう思っていた。

 ≪秘密≫があってこそワクワクものだ、恋って…。オープンになればなるほど愛の密度は薄れていく。今のところ一樹と聖羅の関係を知る者はおらず、お互いの情熱は保持できる域に温存されている。
 聖羅にとってふたりの関係はずっとこのまま、うすいコーヒーにスプーン一杯の砂糖を入れて飲むほどの快感があれば、人生の終末を迎えるまで悔やむことはないのだ。聖羅はそう思っていた。

 日常生活の中に秘密を抱えていると精神のバランスが崩れるというのが潔癖な聖羅の信条だ。だからどんなことも秘密にせず誰かに話してしまう。

 今回話した相手はメル友の弥生だった。案の定、弥生は一樹のことを根ほり葉ほり聞いてきた。
「ねえ、一樹さんとはうまくいってるの?」
「ええ、まあね。あちらはご執心のようだけど…」

 恋人や恋人まがいのお相手を複数持っている弥生は自分のこと以外のことでもそういう類の話になると気になるようだ。最近健康診断で色々ひっかかったと鬱的になっているにも関わらず、いやに元気になって聞いてくる。おかしな女性(ひと)だ。



 聖羅は最近夢を見るようになった。
 夕べ見たのは一樹と旅に出た夢だった。旅の途中でふたりはまるで夫婦のように日帰り温泉に入ってのんびりしていた。
一樹は湯船の中で聖羅の身体をまじまじと眺めている。
もうすぐ五十になろうとしている聖羅だが、肌はまだ生娘のように艶やかでしかも熟し切っている。   
 一樹の物欲しげな目つきから逃げ出したくて聖羅は浴室の中を走り回っているのだが、逃げても逃げてもその執拗な目が追いかけてくる。

 ハッと目が覚めたとき聖羅は汗をびっしょりかいていた。
 あぁ〜。聖羅の口から安堵の吐息が漏れた。よかった!もしこんなことが現実になったらどうしよう。聖羅はひとり照れていた。三面鏡を開けてそっと覗く。うふっ…。

 やっぱり聖羅も誰かに話したくなっている……。この夢の中のできごとを弥生に話したら、彼女のことだから夢とは思わないだろう。
いじわるな気持がむくむくと湧いてきた。

 卓上に置いた携帯がチッカチッカ光っている。きっと弥生からのメールにちがいない。
青子はにんまりして朝食の準備にとりかかった。


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このストーリーに関するコメント

14/09/30 笹峰霧子

訂正
最後の行の主人公の名前は青子ではなく、聖羅です。

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