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アシタバさん

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天使が舞い落ちた思い出

14/09/22 コンテスト(テーマ):第六十六回 時空モノガタリ文学賞【 舞い降りたものは 】 コメント:2件 アシタバ 閲覧数:858

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 昔、天使に会ったことがある。
 俺が30歳くらいの頃かな?
 そいつは若い女で金色の髪の毛、外人のような透き通った肌だった。
 背中には白い大きな翼が生えていた。
 孫娘にその話をすると「素敵ね」と喜んでくれる。
 だが、最後にこれを言うと言葉を失うのだ。
「あいつ体重は100キロくらいあったぞ」と。

 当時、天使本人にそのことを言うと「失礼ね。97キロよ」といつもすかさずに言い返してきた。恰幅の良い顔で凄むと迫力がある。
 聞かされた話では天国で天使をしているのだが、望みの仕事をやらせてもらえず、ストレスでやけ食いしてしまい、いつのまにか立派な体格になったそうだ。俺と出会った日は長時間の飛行をしたため体の重さがたたり、地上、つまりはうちの近所に墜落したのだという。
「本当についてないわ。暫く療養しないと」とぼやく彼女。
 大した怪我なんてしてないくせによく言う。夜勤帰りにお前みたいなのに遭遇した俺の方がよっぽど不幸だ。力士のような大柄のこいつが落ちてきたその日の空は、皮肉なほどの綺麗な朝焼けだった。
 とりあえず家に連れて帰り、どうするのだと聞くと、堕天して地上で大好きなラーメン屋でもやるという。それに対して俺は「このアホが、飲食業なめるなよ」と、さんざん説教して、最終的にここでダイエットをして痩せてから帰れと言ってやった。
 こいつに腹を立てると同時に、いつの間にか面倒を見てやろうという義務感が俺の胸に湧いたのだ。うちは親父も爺さんも代々の江戸っ子であり、その血の所為か根っからのお節介焼きの一族だった。これも何かの縁かもしれないと思うと放ってはおけなかった。

 背中に羽の生えたあいつを見て、もっと騒ぎになるかと思いきや、俺も、俺の嫁も、その他出会った連中も最初は驚くが3日過ぎると慣れてしまった。特別騒ぐ奴はいなかった。まあ、人間とは案外そんなものなのだろう。
 ダイエットを初め嫌がっていたあいつに俺の嫁がわざわざカロリーってやつを計算して作った料理を食わせて、俺の働く大工仕事の現場でがんがん手伝いをさせていたらどんどん痩せていった。やらせた俺も驚くほどだったので、褒めたら本人もやる気になっていった。単細胞な奴だった。
 数か月が過ぎたある日。あいつに聞いた。
「前に言っていたやりたい仕事ってなんだ?」
 彼女は恥ずかしがりながらも答えてくれた。
「天使にも色々な仕事があるけれど、その一つに死んだ人の魂を天国に案内をする役割があるの。昔、天国へ行く人の魂をやさしく導いている天使を見て、私もこうなりたいって思ったわ」そう話しながら目をキラキラとさせていた。
 そうか、夢を見ることはいいことだな。青春ってやつだ。
 感動した俺はその日から、より厳しく仕事でしごいてやった。
 やつは嬉しいのか泣きながら仕事に励んだ。

 さらに数か月過ぎると見事な痩せ型の身体になった。
 若干、筋肉質でたくましい感じはするが。
 別れの日が決まり、その前日に送別会を開いたのだが、翌日、その酒が残って見事に二日酔いになっちまった。頭が痛い。
 だが、天気はこいつが落ちてきた日と同じ綺麗な朝焼けだった。
 俺の嫁と名残惜しそうに挨拶をかわす。俺も別れの言葉を口にした。
「まあ、なんだ、頑張ってこい」何だか目頭が熱くなるな。江戸っ子は涙もろくもあるのだ。「夢叶えて来いよ」そう言ってやると、ありがとうございますとやつも涙目になっていた。
 なんだ、改めてこうして見るとこいつ美人だなと思った。
「さようなら」
 そう言って明け方の空に飛びあがっていく。
 白い大きな羽をはばたかせて。
 その姿はどんどん小さくなり、やがて消えていった。

 月日は何十年と過ぎ去り、俺は老衰してほぼ寝たきりになってしまった。
 息子と娘、さらには孫たちにも恵まれて、まあ、悔いのない人生を送れたと思う。
 家で布団に横たわり、床の間から開け放たれた庭を眺めていた。すると、空の方から何かが降り立ってきた。
 鳥? いや、人? ん、こいつは……。
 やがて、誰かわかったのでこう言った。
「夢が叶ったな」と。


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このストーリーに関するコメント

14/09/29 橘瞬華

この話好きです。タイトルを見て舞い降りるじゃなくて舞い落ちる……?テーマに合うのか?等と思いましたが、最後の最後で舞い降りてる!となって読んでいて胸が温かくなりました。
それにしても太ってる天使も嫌ですが、筋肉質というのもまた違う気がしますね。最期に会った時にはほどほどになっていたのでしょうか。少しだけ気になります(笑)

14/09/30 アシタバ

橘瞬華様 お読みいただきありがとうございました。

陸上選手のような細くて割と目立たないけど実はマッチョ。そんな体型をイメージして書いておりましたが、私の文書が未熟で読み手の方にはムキムキな天使を想像させてしまうかもしれませんね。反省です。
最期はほどほどの体格でイメージしていただけると幸いです。

しかし、そんなレスラーみたいな天使が活躍する話も面白いかもしれないとも思いました(笑)

嬉しいコメントをいただきまして、どうもありがとうございました。

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