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ポテトチップスさん

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罪の根源は欲深さ

14/09/16 コンテスト(テーマ):第六十六回 時空モノガタリ文学賞【 舞い降りたものは 】 コメント:3件 ポテトチップス 閲覧数:848

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「お母ちゃん、ただいま!」
「おかえり。ちゃんと学校で勉強してきたか?」
「うん。僕ね算数のテストで78点とったんだよ」
「へー、偉いこと。ちゃぶ台の上に焼き芋があるから、一本食べな」
「お母ちゃん、これから松ヤンと外で遊ぶ約束してるの。松ヤンの分も焼き芋持って行ってもいい?」
「いいよ。松ヤンに大きなお芋を選んであげなさい」
「うん」
ちゃぶ台に敷かれた新聞紙の上に載っているお芋に平蔵が手を伸ばすと、酒に酔って目がトロンとした亀蔵が呂律の回らない口調で「俺には、ただいまを言わないのか!」と怒鳴った。
平蔵は眉間に皺を寄せながら「お父ちゃん、ただいま」と言った。
「算数で何点とったって?」
「78点」
「オマエは、お父ちゃんに似て賢い人間だ。早くお父ちゃんに親孝行してくれ」
「お父ちゃんのどこが賢い人間だよ。働きもしないで朝から酒ばっかり飲んで」
「黙れ! クソガキが!」亀蔵は力を込めて平蔵の左頬を張った。平蔵はお芋を二本素早く手に取って、泣きながら家を出た。
待ち合わせ場所の茂上川沿いの田んぼに行くと、松ヤンが手を振って待っていた。
「平ヤン、どうしたのその頬。真っ赤だよ」
「お父ちゃんにぶたれた」そう言いながら、手に持っている焼き芋を一本、松ヤンにあげた。松ヤンは美味しそうに皮もむかずに焼き芋に齧りついた。
「今日もいる?」
「今日はまだいないみたいだ。だけど、もうすぐ夕日が出る頃だから、そろそろ現れるよ」
平蔵と松ヤンは、刈り取られた稲の根本だけが枯れて残る田んぼに座って、それが現れるのを待った。

「ただいま。松ヤンと遊んできた」
「もう10月なんだから、こんな時間まで遊ぶのやめなさい。外が真っ暗でしょう」
「うん、わかった。もっと早く家に帰るようにする」
「さあ、夕飯にしましょう。お父ちゃんを起して」
平蔵は面倒に思いながらも、酒に酔って眠っている亀蔵の体を揺すって起こした。
「お父ちゃん、夕飯だって」
「おう、ちょうど腹が減ったな」
ちゃぶ台の上にご飯を盛った茶碗が3つと味噌汁、それに焼き秋刀魚が一尾、皿にのっていた。
「アンタ、先に秋刀魚を食べてちょうだい」
「一人で一尾、秋刀魚を食べてみたいもんだな」そう言いながら、箸で身をほぐして、それを自分のご飯を盛った茶碗にのせた。
「次、平蔵がとりなさい」
「お父ちゃんがいっぱい取ったから、お母ちゃんの分が無くなっちゃうよ」
「お母ちゃんはほんの少しでいいから、平蔵とりなさい」
平蔵がまだ食べていると、先に食事が終わった亀蔵が、平蔵が正座する畳の横に置かれた鳥の羽を指さした。
「なんだその羽は?」
「珍しい鳥を見つけたんだ。その鳥の羽」
「見せてみろ」と言って、平蔵から鳥の羽を受け取った。しばらく何かを考えるように羽を見たあと「何ていう鳥だ?」
「名前は分かんない。でも、見たことない鳥だよ」
「どんな鳥でどんな色してる?」
「シラサギみたいな鳥で白い色」
「くちばしは何色だ?」
「朱色だったと思う」
亀蔵は腕組みをしたまま、天井に顔を向けた。
「アンタ、鳥がどうかしたのかい?」菊子が聞いた。
「もしかしたら、トキかもしれん」
「トキ?」
「3年前の昭和40年に、国の特別天然記念物になった。もう日本でトキは絶滅したと言われていたが……」
「その鳥がトキだったとしたらどうなるんだい?」菊子は続けて聞いた。
「金になる。平蔵、そのトキは何処にいるんだ」
「教えられない。松ヤンに2人だけの秘密にしようって言われているから」
菊子は亀蔵に「金になるっていくらくらいになるの?」
「いくらになるかは分からんが、20年前の昭和23年が最後に目撃された鳥だ。もし絶滅したと言われている日本トキを捕まえられたら、家が一軒とテレビが買えるくらいの金になるかもしれん」
「平蔵、そのトキがいる場所をお父ちゃんとお母ちゃんに教えなさい」菊子が興奮気味に言った。
「場所を教えたら、松ヤンに怒られるよ」
「平蔵、こんなボロな家からテレビが観れる大きな立派な家に住めるのよ。そんな暮らしがしてみたいでしょう」
平蔵は心の中で松ヤンに詫びながら、場所を教えた。

翌日の夕暮れ前、平蔵は亀蔵と菊子と一緒に秘密の場所にいた。亀蔵の手には漁業で使われる投げ網が持たれていた。三人は静かにそれが現れるのを待った。
真っ赤な夕日が目が痛くなるほどの光線を放つようになった頃、カラスの鳴き声に似た「グアー グアー」という鳴き声とともに、その珍しい鳥は3人がいる田んぼからほど近い茂上川に空から舞い降りた。
「トキだ! 間違いなくあれはトキだ!」亀蔵が言った。
「金になる。金になる」菊子が飛び跳ねがら言った。
一羽の白いトキは、川面に顔を沈めたり羽をばたつかせたりしていた。
平蔵は父と母の醜さに子供ながらに悲しく思った。


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このストーリーに関するコメント

14/09/21 suggino

悲しいお話ですね。どこか懐かしさも感じました。
平蔵は心やさしい、おおきな大人になってほしいと願います。

14/09/22 ポテトチップス

suggino様へ

コメントありがとうございます。
昭和末期生まれの私は、作中の昭和40年頃の日本など知る由もありませんが、どんな社会だったんでしょうね。

でも漠然と想像できるのは、現代の日本社会よりも不便ではあったが、人間らしく精一杯生きれた時代だったのではないかと思ってしまいます。

作中の登場人物である平蔵や亀蔵、菊子に松ヤン、名前がとても気に入っています。
昨今の日本人の子供の名前が洋風的であることに、私は悲しみと憤りを感じてしまいます。

昭和は悲しみが多い時代でしたが、日本人が力強く生きれた時代でもあったのではないでしょうか。

14/09/22 ポテトチップス

suggino様へ

コメントありがとうございます。
昭和末期生まれの私は、作中の昭和40年頃の日本など知る由もありませんが、どんな社会だったんでしょうね。

でも漠然と想像できるのは、現代の日本社会よりも不便ではあったが、人間らしく精一杯生きれた時代だったのではないかと思ってしまいます。

作中の登場人物である平蔵や亀蔵、菊子に松ヤン、名前がとても気に入っています。
昨今の日本人の子供の名前が洋風的であることに、私は悲しみと憤りを感じてしまいます。

昭和は悲しみが多い時代でしたが、日本人が力強く生きれた時代でもあったのではないでしょうか。

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