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こぐまじゅんこさん

詩を書いたり童話を書いたりしている主婦です。 みなさん、よろしくお願いします。 MyISBN−デザインエッグ社さんから、絵本「おしえて!ねこばあちゃん」を出版しました。 アマゾンでも取り扱っていますので、よかったら みてくださいね。 ブログ「こぐまのノート」も書いています。

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将来の夢 自分の書いた童話を孫に読んで聞かせたいです。
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心のカギ

14/09/09 コンテスト(テーマ):第六十六回 時空モノガタリ文学賞【 舞い降りたものは 】 コメント:6件 こぐまじゅんこ 閲覧数:1596

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 ぼくは、川井ゆうと。小学三年生だ。
 
 三学期のある日、授業中に、おしっこをがまんできなくなってもらしてしまった。そのときから、クラスのいじめっこに、「おもらしゆうと」ってからかわれて、学校に行くのがいやになっている。
 ぼくのお母さんは、パートで夕方まで働いているから、ぼくは、家のカギをいつも持っている。カギって、しめると他の人は入ってこれないんだよな。そして、ふと、ぼくは思った。ぼくの心にも、だれにも入ってほしくない、と。

 だから、ぼくは心にカギをかけたんだ。
 誰にも邪魔されないし、いじめられない。ぼくの心は静かになった。だけど、笑うこともなくなってしまったんだ。
 ずっと、心にカギをかけていたから、学校にも行けなくなってしまった。

 朝、起きると必ず、おなかが痛くなって、お母さんに学校に連絡してもらう。
 お母さんは、
「先生が、心配していたわよ。おなかが治ったら学校に行きなさいよ。」
と、ほんとうに心配そうに言うけど、パートの時間がくると、仕方なく家からでていく。

 四月になった。
 学校を休んでいるあいだに、春休みも終わり、今日から四年生だ。
 まだ、学校には行けない。

 窓から差し込む日差しが、ずいぶん明るい。

 そっと窓をあけてみると、さわやかな風が吹き込んできた。そして、その風といっしょに小さな花びらが、一枚舞い込んできた。

 ひらひらひらっと舞い落ちた花びら。
 気にもとめていなかったけど、後ろから声が聞こえる。
 ふりむくと、そこは、さっきの花びらが落ちていたところだった。
 よくみると、小さな小さな女の子がいる。
 ぼくは、おどろいて思わず、「うわぁっ」と叫んだ。

「はじめまして。私、桜の妖精、さくらこ。ゆうと兄ちゃん、学校に行かないの?」

 その、「さくらこ」という妖精が聞く。

 ぼくは、答えたくなかったから、だまっていた。
 すると、さくらこは、ぼくの左胸に手をあてて、
「お兄ちゃんの心には、小さな穴があいてるよ。」
と言うと、ポケットから細長いカギをとりだして、
「お兄ちゃんの心の穴に、このカギをさしこめば、心のカギがあくんだよ。」

 そう言って、左胸のところにカギをおしあて、くるっと回した。

 カチッと音がしたような気がした。
 そのとたん、ぼくの心が動きだした。

 おしっこをもらしたときの恥ずかしかった気持ちを思い出す。それから、そのあとの、いじめっこの笑い声とはやしたてる声も、どんどん思い出されてくる。
 ぼくは、わぁわぁ泣きだした。

 さくらこが、
「お兄ちゃん、つらかったんだね。泣きたいときは、泣いた方がいいよ。」
と、やさしく言ってくれた。

 大声で泣き続けたぼくは、いじめっこから言われた「おもらしゆうと」という言葉が、心からしだいに消えていくのを感じた。そして、いつのまにか、心が軽くなっていた。

 泣きやんだぼくに、さくらこが、
「お兄ちゃん、心のカギをあけたら、まわりのことがよくみえるようになるでしょ。」
とほほえむと、窓から、ふわっと出て行ってしまった。

 ぼくは、気づいた。今まで、ぼくは、まわりにあるものをよくみていなかったんだってことに。

 ぼくは、いそいで窓の外をみた。

 遠くに、桜の木がみえた。満開の花を咲かせた桜をみて、ぼくは、元気がわいてくるのがわかった。

 おじいちゃんも言ってたっけ。

「桜の花は、冬の寒さを我慢していたから、春、こんなにきれいに花を咲かすことができるんだぞ」
って。

 ぼくも、桜みたいに、まわりの人を喜ばせるようなことをしたいなぁ・・・。


 ぼくは、立ち上がると、すぐに学校に行く準備を始めた。


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このストーリーに関するコメント

14/09/09 泡沫恋歌

こぐまじゅんこ 様、拝読しました。

ゆうとくん、心のカギで辛かった気持ちを全部さらけ出したら
心が軽くなって、また学校に行けるようになって良かったですね。

14/09/10 こぐまじゅんこ

泡沫恋歌さま。

コメントありがとうございます。
このお話は、童話教室に通い始めた頃作ったもので、少し直しましたが、
なんとか形になって、よかったです。

さくらこ っていう名前は、最初考えてませんでした。

さくらこ に私も会ってみたいです。

では、またぁ。

14/09/10 草愛やし美

こぐまじゅんこさん、拝読しました。

心があったかくなるお話ですね、ゆうとくん頑張ってとエール贈りたいです。

桜の花のように綺麗な花を咲かせる、そんな妖精の「さくらこちゃん」、どんなのかなあって想像しています。

14/09/11 こぐまじゅんこ

草藍さま。

コメントありがとうございます。
あったかいお話といっていただけて、うれしいです。

14/10/06 光石七

拝読しました。
舞い落ちる桜、妖精、心のカギ…… あたたかいふんわりした絵が浮かびます。
心が軽くなったゆうとくん、ゆっくりでいいから前に進んでくださいね。

14/10/08 こぐまじゅんこ

光石七さま。

あたたかいコメント、ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。

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