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泡沫恋歌さん

泡沫恋歌(うたかた れんか)と申します。

性別 女性
将来の夢 いろいろ有りますが、声優ソムリエになりたいかも。
座右の銘 楽しんで創作をすること。

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【 寓話 】詩人の村

14/09/07 コンテスト(テーマ):第六十四回 時空モノガタリ文学賞【 詩人 】 コメント:17件 泡沫恋歌 閲覧数:1759

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 ある所に詩人たちが住む村がありました。

 ここに居る者は農民も大工も鍛冶屋もみんな詩人ですが、彼らはあまり働かない。
 清貧こそ詩人のあるべき姿、貧困と闘って夭折した詩人を尊敬して、拝金主義者や俗物的な人物を軽蔑しているのだ。
 清らかな魂を持つ繊細な人間のみが詩人と呼ぶに相応しいと、ナルシストの彼らはそう思い込んでいる。
 詩人のプライドを比喩と隠喩で表現すると、
『プライドは高く富士山のようだ』⇒ 比喩(アナロジー)
『プライドが富士山』⇒ 隠喩(メタファー)
 そういうレトリックで自分たちの性質を詩的に説明していた。

 ある時、谷を挟んで隣にある『小説家の丘』から物書きがやってきた。
 彼は文章の長さやプロットを考える手間からいっても、小説の方がずいぶん時間がかかるし大変なので、詩人に向って、
「詩は短いから、すぐに書けるでしょう」
 と、不用意な言葉を投げかけた。
 これは詩人にとって、もっとも屈辱的な言葉であった。
 単に文章が短いからと安易みたいに言われたことに憤慨したのだ。詩というのは肝心なことを明記せずに、断片的な単語の羅列から深い精神性を伝えようとする。――それは読む者の洞察力が試される。短いからと侮るなかれ!

『詩は浅く見えても底が深い摩周湖のように』⇒ 比喩(アナロジー)
『詩は摩周湖だ!』⇒ 隠喩(メタファー)
 と、詩的に怒りの抗議をした。しかし物書きには理解されなかった。
 詩と小説は言語形式で表現する文学だが、実は似て非なるものである。自分が感動した事柄についてリズムをもつ言語形式で表現したものが詩である。むしろ、文学というよりも音楽に近い感覚であり、ビジュアル的なのだ。
 詩人という輩は一度怒らせると執念深く、その時、味わった屈辱をテーマに詩作し何度でも相手を断罪しますから――。

 さて、『詩人の村』では、村の広場の掲示板に自分の書いた詩を貼って、それを村人たちが評価し合う習わしになっています。
 掲示板の詩の中で良いと思う作品にはリボンの花を付けていく、一番たくさん花が飾られた詩が優秀だと賞賛される。
 その週の掲示板で一番評価の高かった詩人がリボンの花で作った『詩人の王冠』を贈られて村人たちに祝福されていた。そこへ、批評家の赤ペン先生という男が現れて、みんなの前で優秀作品をこき下ろした。
「君の詩は無知で軽薄だ。オノマトペを多様するのもチープな臭味。おまけに詩中に口語と文語が混淆しとる。一区切りのスタンザが凡庸な形式だし、目新しさも新鮮さもない!」
 くどくどと酷評を吐き散らした。
 赤ペン先生のこの露骨な言い方には村人たちも眉を顰めた。――だが、優秀詩人は笑って答えた。
「僕の詩が気に入りませんか? でも、その詩は僕自身だから理解されなくても結構です」
「生意気を言うな! ワシはお前のために批評してやってるんだぞっ!」
 大声で気弱な詩人を恫喝するのだった。

 赤ペン先生は村外れに小屋を建てて住んでいた。
 家の軒下に『作品の添削承る』という看板を出している。彼の素性は誰も知らないが、あっちこっちの文学村を放浪して、この『詩人の村』に住みついたようだ。
 かなり専門知識が深く、それを誇示したくて、村の掲示板の詩に赤ペンで添削や辛口批評を書き込んでいくのだ。

「こんな愚劣な詩が優秀作品とは、この村のレベルも大したことない」
 その言葉に村人たちが怒った。
「アンタ何様のつもりか知らんが、ワシらが選んだ作品にケチをつけんで貰いたい」
「そうだ! アンタのせいで村から去っていく詩人が増えたんだ」
 詩人たちは常にナーバスなので、精神的打撃を受けると姿を消してしまうのだ。
「辛辣な批評に、叙情詩人さんは『語彙沼』に沈んだ。叙景詩人さんは『俯瞰岳』から身を投げた。叙事詩人さんは『オマージュの木』で首を括ったんだ」
「そんなことワシは知らん! 才能のない者は消えるだけじゃ。フン!」
 鼻を鳴らし偉そうに言い放った。
「アンタの批評は名ばかりで自分の優位性を示しているだけじゃないか」
「黙れ! ワシの知性と教養でお前らを啓蒙してやってるんだ。感謝しろ! 愚民どもめ!」
「その心使いには感謝しますがね。その才能を他人の作品批評に使うよりも、ご自分で作品を書いて発表されたらどうですか?」
 先ほどの優秀詩人が提案し、その言葉に村人たちも賛同する。
「そうだ、そうだ! アンタも詩を書けよ。俺たちが評価してやる」
「な、なんじゃと……ワシの作品は秀逸過ぎてお前らみたいな能無しには理解できまい!」
 捨て台詞を残して、赤ペン先生は広場から立ち去った。

 数日後、村外れの小屋からも姿を消した。風の噂では『短歌の里』で、今はブーブー言っているらしい。

『詩人とは言葉を武器に闘う戦士のようだ!』


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このストーリーに関するコメント

14/09/08 泡沫恋歌

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14/09/08 夏日 純希

読後に心が素直に吐いた言葉↓


「お、おもしれぇ・・・・」

あまり綺麗な賛辞じゃなくて、すいません。
でも、なんか自然とじんわり出てきた言葉なので、書いておきたくて。

『詩は摩周湖だ』あたりでもう鷲づかみですね。
まるで三頭身ぐらいのキャラがかわいく言い合っているような(アナロジー?)
コミカルな感じが良かったです。
楽しかったです。ありがとうございました。

14/09/08 鮎風 遊

なるほどそういうメカニズムだったのですね。
なにか今までぼんやりと思ってたことが、ぱあと晴れた感じです。

根っこにあるところを論理的に語られてあって、面白かったです。

14/09/08 そらの珊瑚

泡沫恋歌さん、拝読しました。

面白かったです! 
面白さのなかにある痛烈な批判精神に、なんだか胸がすっきりしたのは私だけでしょうか?

詩の批評というものは、いろいろ意見はあるのでしょうけど、
結局のところその詩が好きか嫌いかとか、心に響くか響かないかとか、
そんな単純なものでいいのではないかなあって最近は思います。
その一方でやはり上手な詩を目指したいという矛盾も抱えていますが。

14/09/08 たま

恋歌さま、拝読しました。

ありますねぇ、そのような村・・・^^ 広場の掲示板と赤ペン先生の設定はそのままですし、口語と文語・・・には思わず吹き出してしまいましたよ^^

詩人は器用に小説を書いても、小説家は詩を書けません。やはり、しくみがちがいますね。
詩人と小説家、どっちが得かしら^^

最近はメタファーも、一般社会で市民権を得ましたから、詩人だけのものではなくなりました。
そんな今だからこそ、もっともっと、詩がこの社会に浸透してほしいですね。
互いにがんばりましょう♪

14/09/08 クナリ

作中で、あえて極端に断じながら描かれていくのは、創作というものにまつわって人が作り出す闇の部分ッ。
けれどコメディ映画のような軽快なテンポで揚々と展開していくので、風刺も嫌味なく読めますね。
その読みやすさの裏で、読み手自身の立場によって、読み取り方が変わりそうな怪作ですね…!
赤ペン先生に感情移入してしまう人も、多いかも?(^^;)

14/09/08 泡沫恋歌

夏日 純希 様、コメントありがとうございます。

「お、おもしれぇ・・・・」

これこそ、泡沫恋歌にとっては最高の褒め言葉ですよ。
私の小説はエンタメとしての面白さを追求しているので、理屈抜きに楽しんで読んで
貰えることが嬉しいのです。



鮎風 遊 様、コメントありがとうございます。

創作やってて、サイトに投稿してると必ず、赤ペン先生のような御仁を遭遇します。
無視しようとしても、辛辣な批評されると2、3日は気分悪いのが現実です。

いつも思うのは、気に入らないなら読まなきゃいいでしょう?
スルーという選択肢がないのは、たぶん、そういう理由があるからだろう。



そらの珊瑚 様、コメントありがとうございます。

胸がスッキリして貰えて良かったです(笑)

あるサイトで赤ペン先生のような御仁を痛烈に批判した詩に感銘を受けて、
今回、このテーマで書いてみました。

実際、批評は有難いけれど、上から目線の独断的な意見には反発を思えますよね。

14/09/08 泡沫恋歌

夏日 純希 様、コメントありがとうございます。

「お、おもしれぇ・・・・」

これこそ、泡沫恋歌にとっては最高の褒め言葉ですよ。
私の小説はエンタメとしての面白さを追求しているので、理屈抜きに楽しんで読んで
貰えることが嬉しいのです。



鮎風 遊 様、コメントありがとうございます。

創作やってて、サイトに投稿してると必ず、赤ペン先生のような御仁を遭遇します。
無視しようとしても、辛辣な批評されると2、3日は気分悪いのが現実です。

いつも思うのは、気に入らないなら読まなきゃいいでしょう?
スルーという選択肢がないのは、たぶん、そういう理由があるからだろう。



そらの珊瑚 様、コメントありがとうございます。

胸がスッキリして貰えて良かったです(笑)

あるサイトで赤ペン先生のような御仁を痛烈に批判した詩に感銘を受けて、
今回、このテーマで書いてみました。

実際、批評は有難いけれど、上から目線の独断的な意見には反発を思えますよね。

14/09/08 泡沫恋歌

たま 様、コメントありがとうございます。

ありますね、そういう所が・・・(笑)

添削してくれるのは有難いけれど、思想的な問題で相手を徹底的に論破しないと
気が済まないという姿勢はいかがなものか。

人の作品を自分の趣味に合うように書き直させるよりも、自分が納得する作品を書けばいいと思う。

小説を書く詩人は私の周りにいます、てか、上手い詩を書く人は小説も上手いと思いますね。
その逆はあまりいない。

どうも、小説を書く人からみると曲の歌詞も詩も同じだと考えられているようです。
実際、詩なんか誰でも書けると思ってる人も多いよね。



クナリ 様、コメントありがとうございます。

多少、面白く読ませるために誇張した部分はあります。

まあ、この作品のテーマに関してはいろいろ意見もあるでしょうし、反発する人もいるでしょう。
あえて、その闇について書きました。

実際、批評と称する独善的な意見の押し売りに、メンタリティーの強い創作者ばかりではない。
言葉の端々に他者を思いやる気づかいを感じられない批評はただの悪口だと感じられる。

デリカシーのない人間の意見に惑わされたくないというのが本音です。

14/09/08 草愛やし美

泡沫恋歌さん、拝読しました。

詩ってそういうものなのですか、いや、そこらの解説よりわかり易いかもですね。でも言語の知識が未熟な私は、かなり検索して調べました。大汗

批判するは易しでしょうね、詩でも小説でもそこは同じかと思います。書くのは大変です、善意からの批評はいいですが、頭ごなしは悲しいです。詩人の村、一度行ってみたいものです。面白かったです。

14/09/09 光石七

拝読しました。
極端なデフォルメが痛快でした。
素人物書きながら思い当たることもあったり。
最高に面白かったです!

14/09/09 泡沫恋歌

最初のコメント返しが何故か重複しています。

ご迷惑をお掛けしました(m´・ω・`)m ゴメン

14/09/09 泡沫恋歌

草藍 様、コメントありがとうございます。

あえて、詩の専門用語を使ってみました。
分からない方も居られるかも知れませんが、ただ、理屈っぽく難しい用語を使う赤ペン先生の
イメージとして多用したのです。

詩人村にも小説家の丘にも重箱の底を突く評論家さんがいますね(笑)



光石七 様、コメントありがとうございます。

そうですよね。
文学系のサイトだと必ず、独断的な批評家が出現します。

そんなに批評が書きたいなら「● ●でごはん」という甘口批評は厳禁というサイトで
活動をしたらどうだろう?

しかし、あそこは猛者揃いと聞いたので下手すると返り打ちに合うかも(笑)

14/09/12 かめかめ

にやり( ̄ー ̄)ニヤリッ

14/09/16 泡沫恋歌

かめかめ 様、コメントありがとうございます。

にやり( ̄ー ̄)ニヤリッ ← これって意味深なコメントですね(笑)

14/09/30 ドーナツ

拝読しました。

語彙沼、俯瞰岳、オマージュの木  名前の付け方に拍手。


「その詞は僕自身だから。。」というセリフにも  BIG拍手!


彼は 詩という形で 芸術作品を作ったんですよね。

芸術って、理解するものじゃなくて 感じるもの、そう思います。


   技術には添削できても、芸術には添削は不可能です。
だからこの赤ペンさんみたいなのは、技術屋レベルでしか、評価できないのだろうなと思います。

それをわかってるから、優秀詩人さんのこういうセリフが出てきたのだろうと思いました。


いつも思うんだけど、
批評家が有名人だったり、~~大学の教授とかだと、何も知らない読者は、そういう肩書に感化されちゃッて、あの人がこのように言ってるのだから、この作品はこのように理解しなきゃいけないとか、、、、


こういうのって、
芸術作品を鑑賞するときのじゃまになるし、場合によっては害悪だ、と思ってます。て、特に芸術と言われる分野には害になると思うんですが。

赤ペンさんみたいなのは、詞も小説も 文字で表現するという共通な部分があるんで、そこんとこで勘違いしちゃうのかな。職人と芸術家の違いが分かんない人 って感じね。

拝読して、よくぞ言ったって感じで、胸がすっきり爽快です。

14/10/01 泡沫恋歌

ドーナツ 様、コメントありがとうございます。

赤ペン先生のような方はいます。

粘着する方なのでサイトの人々には敬遠されるか、内心無視されています。
どうしても持論をとうさないと気が済まないので、広い視野から他者の作品を見ようという姿勢がありません。

文法の些細な過ちをわざわざ書き込んでいく、皆に晒すというやり方はどうも好きになれない。
アラ探しという感じでセコイ、気になるならメールで知らせてあげればイイと思う。

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