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タックさん

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「対話ヒーロー『トーキング・レッド』 危機一髪の巻!」

14/09/05 コンテスト(テーマ):第六十四回 時空モノガタリ文学賞【 詩人 】 コメント:8件 タック 閲覧数:972

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――炎の燃え盛る、湾岸のとある倉庫内――

「助けて、トーキング・レッド! この怪人を改心させて!」

怪人の腕の中。叫び、もがく少女に高熱の舌先が迫る。
瞬時には届かない怪人との距離。強引な救出は望めない状況。その中で。
『対話ヒーロー』トーキング・レッドは怪人を見すえながら猛スピードの心理分析を実行していた。
怪人の性質を雰囲気や外見から察知し、弱点を見つけ改心させる。それが、トーキング・レッドの戦い方。トーキング・レッド、唯一の武器だった。

ピピ、と音を鳴らす腕時計型通話機。表れるホログラム。吉崎博士である。飛び級で大学を卒業し、若干十五歳でパワースーツを開発した天才少女だった。(ネコのぬいぐるみ集めが趣味、それを隠しに隠す、実は年頃の少女だった)

「トーキング・レッド、聞こえる? 解析結果を伝えるよ。その怪人は、精神攻撃を得意とするみたい。今までにないタイプだから、気をつけてね」
「ああ、ありがとう博士。大丈夫、ちょうど分析も終わった。今から、説得に移るよ。期待して待っててくれ」

真紅のマスクから白い歯を見せ、親指を立てる。微笑が返され、黒髪のホログラムは煙霧へと消えていく。
上げる、視線の対岸。傲岸に笑む、怪人。
手中に拘束された少女の表情が、真紅の心を熱く、気高く炎上させた。

「さあ、いい子になる時間だ、怪人よ」 声の届く位置まで接近したヒーロー。その口から、正義の福音が発せられようとした、瞬間。機先を制し、言葉を紡いだのは、怪人だった。身を凍らせる、悪意の冷笑を供して。



君の笑顔は 輝くダイヤ
君の香りは 薔薇よりスウィートゥ
ボクの目クラクラ ハートドキドキ
君は女神さ イケないアフロディーテ
ラブラブラブリン ラブリンリン
教室? 屋上? それとも校庭?
ノンノンノンノン ノーンノン
ボクの居場所は
君のO・TO・NA・RI……。



「……ぐ、ぐはっ」
「ど、どうしたの!? トーキング・レッド!?」

少女の目前で崩れ落ちる、ヒーロー。
炎の演舞を圧し、怪人の哄笑が倉庫に響き渡る。
その手には、一冊のノートが握られていた。

「ふははは! どうだ、トーキング・レッドよ! 自身の作った詩を読まれるのは、恥ずかしかろう? ふははは!」

高笑し、少女を懐中に怪人は歩み出す。床に這う、トーキング・レッド。その口唇は「実家の引き出しにしまったはずなのに、ノート」と呟きを発し、紫に色を変じたまま、儚く生気を失いかけていた。怯えた、ウサギの背。横たわる体に、悪辣な影が落ちる。

「さあ、ヒーローパワーを頂こう。これで、我らの体制は磐石となるのだ!」

真紅の頭部へ腕を伸ばす怪人。
溢れる黒き光に、正義の源泉は塗り潰される――――しかし。

「…………だめ」
「ん? なんだ、小娘?」
「…………負けちゃ、だめ!」

少女の、突然の反抗。
その発現に顔を歪ませ、怪人は強力で抑えにかかる。
少女は負けず、倒れたヒーローへ、精一杯に声を張り上げた。

「トーキング・レッド! 詩を書くことの、何が悪いの? 何が恥ずかしいの? あなたは自分をありのままに描いた。臆病にならずに、心を表現した。それは、胸を張っていいこと、馬鹿にされることなんかじゃ、絶対にないんだよ! ……だから、立ち上がって! もう一度、勇気を見せて! トーキング・レッド!」

「ふん、小娘が何を…………な、なに!?」

悪に濡れた瞳が驚愕に見開かれる。
視線のはがれた刹那。その、間隙に。
真紅の影は陽炎に毅然と舞い戻っていた。
その姿から、悔恨は欠片も残さず、霧散していた。

「……ありがとう、君の言う通りだ。詩を書くことは、恥ずかしいことじゃない。僕は、僕を素直に書いただけなんだ!」

「く、くそ! 覚えていろ!」

粗暴に少女を手放し、逃亡を図る怪人。
その眼前に立ち塞がり、トーキング・レッドは優しく、怪人に向かい言葉を送り届けた。

「いくぞ、怪人! 僕の言葉で、改心したまえ!…………」





「いやあ、今日も改心できてよかった! 君のおかげだよ、名も知らぬ少女!」
「トーキング・レッド、かっこよかったよ! 詩も、その……、ぜ、ぜんぜん、悪くなかったよ!」
「え、そうかい? 嬉しいなあ! なら今度、詩をプレゼントしよう! 博士も、どうだい?」
「いや、私はいらないよ。ダサいし」
「……。じゃ、じゃあ、少女にあげよう。ね?」
「……わ、わたしも、遠慮しとこうかな」
「そ、そんなあ、なんで?」
「あはははは」

 
 ………………。

 
「なあ、姉ちゃん。今日のトーキング・レッド、妙に説教くさくなかった? どしたんだろ?」
「さあ、真面目なメッセージも書けるんだ、とでも思ってほしかったんじゃないの」
「……誰がよ?」
「……さあ」


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このストーリーに関するコメント

14/09/06 夏日 純希

>薔薇よりスウィートゥ

最後の“ゥ”でやられて、笑っちまいました。
ヒーロー者の映像見ているみたいで楽しかったです。

14/09/07 かめかめ

実家のノートはヤバイ!!!

14/09/09 光石七

一人で大笑いしてしまいました。
こういうヒーロー、いいかも。
しかし、彼の詩のセンスって……
楽しかったです。

14/09/10 草愛やし美

タックさん、拝読しました。

この発想、めちゃぶっ飛んでます。詩人のテーマに正義の味方、しかも、この内容、はちゃめちゃのようで、ちゃんと詩人の本音を書いておられますね。
詩人って考えれば考えるほど、難しいもののように思いますけれども、実際は、幼子の言葉はそのまま詩だったりすることも多く、素直な心の叫びを持つ子供が一番の詩人かもしれません。
そういう意味合いから、トーキングレッドのように素直な気持ちを吐露することが詩人だと思えます。想定外的な面白さを持っていてとてもよかったです。

14/09/23 タック

夏日 純希さん、遅れてしまい申し訳ありません。コメントありがとうございます。

楽しい、と言っていただけることが一番うれしいです。
ベタなヒーロー物を書いてみたい、と思っていたので、テーマにはふさわしくないものではありましたが、書いてしまいました。楽しんでいただけたなら、幸いでございます。

ご一読、ありがとうございます。

14/09/23 タック

かめかめさん、遅れてしまい申し訳ありません。コメントありがとうございます。

確かに、ノートはマズイものですね。
開示されたら逃げ出したくなる人が大勢いるのではないでしょうか。
でもまあ、それも青春の一側面と考えれば、悪いものでもないのかも……。

ご一読、ありがとうございました。

14/09/23 タック

光石七さん、遅れてしまい申し訳ありません。コメントありがとうございます。

笑っていただけたなら、これほど嬉しいことはありません。ありがとうございます。
「戦わないヒーローもいいかも」と思い、書いたものでした。
できあがってみれば、全然盛り上がりもない話でしたが、まあ、書いて楽しかったからいいか、という感じです。詩を書く時が、一番楽しい瞬間でした。バカバカしくて。

ご一読、ありがとうございました。


14/09/23 タック

草藍さん、遅れてしまい申し訳ありません。コメントありがとうございます。

おっしゃるとおりで、何の気も使わずに書いたものがそのまま「詩」であることが、一番いいことなのでしょうね。
でも、成長するにしたがって様々な側面が膨れあがり、他人の目も自分の目も気にするようになって、ありのままの表現が難しくなっていく。ですが、その膨れあがりもある方面から見れば「技術的成長」と捉えられることでもあって、そう考えると表現って何だろうな、と思います。すごく、難しいことですね。

よかったと言っていただき、本当に嬉しく思います。
ご一読、ありがとうございました。

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