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聖耶さん

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詩人の手紙

14/09/05 コンテスト(テーマ):第六十四回 時空モノガタリ文学賞【 詩人 】 コメント:3件 聖耶 閲覧数:876

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 手紙をもらった。
差出人の名はない、『あなたへ』と宛名に書かれた白い封筒に入った一枚の便箋。
封はされずに僕の机の中にそっと置かれていた。

「あなたへじゃ、誰に書いたものなのかわからないじゃないか」

 それでも僕の机の中に入っていたんだから、これは僕に宛てた手紙なんだろう。
そっと中を開くと一枚の便箋を取り出す。

(あっ…)

 便箋とともに封筒から漂う香りに気づく。
甘い、けれどさわやかな心を落ち着かせる香りに、ここに来るまでに感じていた胸の苦しさが消えていく。

 少しの間その香りに浸ってから、便箋に目を落とす。
封筒と同じく白い便箋を開くと見たことがある字が並んでいた。
少し右上がりな、癖のある字に思わずくすりと笑ってしまった。


――あなたへ

 あなたと出会ってどれほど経ったのでしょうか。
雨の中、傘をささずに寂しそうに歩く背中は今でも忘れません。
あの日にわたしが声をかけなければそれぞれまた違った道を歩んでいたのでしょうね。
もう一度、あなたに会いたい…なんて贅沢な願いですね。
 わたしは、後悔はしてません。
詩人のように、歌うようにわたしに下さった言葉たちを忘れることはないでしょう。
どこまでも自由であり続けたあなたに、多くの人に愛されているあなたに、
たとえわたしの言葉が届かなくても語り続けましょう。

 あなたが幸せでありますように
 風に乗って羽ばたく鳥のように自由でありますように
 優しい笑顔があなたを包みますように
 いつまででも願いましょう
 そしてできるのであれば
 わたしがあなたのそばで


 書かれていたのはそこまでだった。
中途半端な終わりに続きがあるのかと思ったが便箋の下の部分はまだ空いているから二枚目はないだろう。
書きかけだったのだろうか。

 封をされていないことからもこの手紙は書き上げる途中だったのだろう。
それとも書けぬ理由があったのだろうか。

「詩人って…。君のほうが詩人のようだよ」

 便箋を封筒にしまい、机の中に戻す。
さっと手を動かした際に、机の上に積もったほこりが舞った。
手で触れると結構な量のほこりがくっついてくる。

「ねえ、君はどこに行ってしまったんだろうね」

 詩人のように言葉を残して去ってしまった君こそ、背中に翼でも生えて飛んでいってしまったのではないか。
おぼろげな存在の君に儚さを感じた。

 何度、何度ここに来たのだろうか。
寂しいとき、辛いとき、泣きたいとき、その度にここへときた。

 それでも差出人の名前は思い出せない。一番最初の僕なら知っていたのかな。
自然と呼ばれるように僕はここを訪れる。
ここにはどんな時でも僕を心配してくれる優しい笑顔の詩人がいるから。

 ここだけは昔から変わらずに存在する唯一の場所。
時代がどれだけ流れても、僕の姿がどれだけ変わってもこの場所と手紙はここにある。


 君はいつまでも僕とともにいてくれる。



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このストーリーに関するコメント

14/09/06 夏日 純希

主人公はずっと彷徨っているのでしょうか。
記憶は薄れてるけれど、大事なものは消そうとしても消えないものです。
自分の帰れる場所があるのはいいことですね。

別に私はどこかを彷徨っているわけではないのですが、
なんとなく共感できる作品でした。

再会した先で、手紙の続きが読めるといいのですね。

14/09/08 聖耶

夏目さん、こんばんは。コメントありがとうございます。

そうなんです。主人公はずっと彷徨ってて、記憶もあいまいになってるけどそれでも忘れられない記憶があるんです。
日常でも、ふとした瞬間に迷子になるときがありませんか。覚えているはずなのに思い出せない。覚えているはずだという思いはあるのに、霞がかったように曖昧になってしまう。そんなもどかしさとか、表せれたらと思っていたんですが、なかなか上手く書けませんでした。
読み取っていただけてうれしいです。

読んでくださり、ありがとうございます。

14/09/08 聖耶

夏目ではなくて、夏日さんでしたね!!
大変失礼しました(><)

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