1. トップページ
  2. 戦争賛成

W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 作者はつねにぶっきらぼう

投稿済みの作品

3

戦争賛成

14/08/25 コンテスト(テーマ):第六十五回 時空モノガタリ文学賞【 守る 】  コメント:6件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:1450

この作品を評価する

 ピースは、胸にたらしたお守りを、力をこめてにぎりしめた。
 勝利を我らに。
 彼は首をめぐらすと、背後にちらばる仲間たちを確認した。だれもが、突撃の合図をまって、血走った目を前方にこらしている。
 街並みは、これまでの激しい戦闘によって、みるも無残に破壊されていた。しかしその破壊された建物の影に、敵がひそんでいるのだ。こちら同様、戦闘意欲に燃え、相手を殺傷することに無上の喜びをおぼえる連中が―――。
「隊長、まだですか、攻撃は」
 業を煮やしたように、イカルガがかけよってきた。
「みんな、はやく突撃したくて、うずうずしてますよ」
 ほっておいたら、いまにもあたりに銃を乱射しかねないイカルガの逸りようだった。彼のいうとおり、ほかのみんなも、同じ心のたかぶりをおぼえているにちがいない。
「―――ようし、いっせい攻撃だ」
 ピースは命令を下した。
 戦士たちは自動小銃を連射しながら、かけだした。ほとんど同時に、敵から発射された弾丸が空気を切り裂きながら火の礫となって飛んできた。
 ピースのすぐちかくで、バスーカ砲が着弾し、木端微塵に建物が吹き飛んだ。そのいまバスーカがとんできた位置めざして、味方がうちこんだロケット砲がさく裂し、瓦礫もろとも人間が高々と空中に舞いあがるのがみえた。
 そのときピースはみた。
 だれもの張りつめた顔に、どす黒い笑みが張り付いているのを。死に対する恐怖よりも、殺戮することへの本能的な歓びに、まるで酔いし知れるかのように。
 はげしい銃撃戦は三十分ほどつづいただろうか。敵も訓練をうけた戦士ばかりで、力はほぼ五分と五分、勝敗の行方はまさに紙一重だったが、戦意をしゃにむに高揚させた分、ピースの隊に勝利は傾いた。
 最後の敵を射殺したところで、戦いは終了をつげた。
「勝った」
 戦士たちはピースをとりまいて勝どきをあげると、いまの戦闘でまた一段と破壊がひどくなった街が一望できる高台に腰をおろした。
 そこへ、食糧運搬車がなじみのメロディーを奏でながら、こちらにむかって走り寄ってきた。
「おめでとうございます」
 運搬人は各自に祝福の言葉をなげかけながら、豪華な料理でうめられた弁当をくばりはじめた。勝利ののち三日間は、酒もふんだんにふるまわれる習わしだ。
 かれらが食事をはじめたころ、街中には何台ものトラックや重機が集結し、瓦礫や破砕された家屋、路上にちらばるコンクリート片などの片づけにとりかかった。遺体はすでに専用車で搬送されていた。
 翌日、仮設テントで目覚めたピースは、すでに現場は更地になっていて、はやくもそこに、建材を積んだトラックや、ミキサー車が集いはじめているのをみた。
 速乾性のコンクリートによる道の修復は、ものの三日も必要としなかった。家屋もまた、ほとんどがはめ込み式のため、道路の完成と歩調をあわせるようにできあがった。
「隊長、こんどの敵は、きまりましたか」
 まちきれないといった調子で、イカルガがピースにたずねた。
「うん。さっき本部からメールで書類が送られてきた。次の敵は、中東の戦士が相手だ」
「それはまた強敵だ………」
「ああ、心してかからねばならない」
「もっと大量に武器をとりよせてはどうです」
「その点はだいじょうぶだ。核以外の兵器はみな、発注しといたから、明日にはすべてそろうだろう」
「核もつかえたら、いいのになあ………」
 残念そうにつぶやくとイカルガは、広大な透明のドームにおおわれた頭上をみあげた。
 いまや世界で戦争がおこなえる場所はひとつ、このドームの内側だけにかぎられた。国際法でみとめられた戦争許可地帯だった。人類発生以来、延々とつづく争いへの欲望をみたすのが目的で、戦争希望国はあとをたたず、勝敗が決するやいなや、すぐに次回のチャレンジャーたちが名乗りをあげた。
 おのおのの国から選出された戦士同志が争い、今回のピースたちのように、相手を全滅においやるか、あるいはギブアップするまで終結することはなかった。勝利者はじぶんたちの意思でドームから出ることもできたが、アドレナリンでかきたてられたファイテングスピリットをもてあますみんなは、とてもこの状態で外にでることなど考えられなかった。
「中東でもどこでも、かかってきやがれ」
 みんなは頭上にむかって、にぎりしめた拳をふりあげた。
 そして一週間後、ピースたちと中東からやってきた戦士たちとの戦争がはじまり、イカルガのおそれたとおり、中東の戦士たちのライオンのような獰猛な戦いぶりのまえに、あえなく全員命をおとした。
 このようにして、ドーム内の合法的な戦争はそれからも、引きも切らずくりかえされ、その間、数えきれないほどの人間たちが死んでいった。
 おかげで、世界の平和は守られ、人々は一様に幸福のありがたさを心から感謝した。





コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

14/08/25 亜子

読みました。人は戦争したいから戦争するんだ、と感じました。よく多くの人の考えでは、戦争したい人なんて誰もいない、と綺麗ごとばかりあるけれど本当のところは、違うと思います。戦争を起こす誇り、戦争を許さない誇り、どちらが正しいかは誰もが分かっているはず。本音が違っているのはどうしてなのだろうと考えさせられました。

14/08/25 W・アーム・スープレックス

鮎子さん、コメントありがとうございました。
この世は決して平和ではありませんよね。それは人間関係ひとつみても、はっきりしています。まずそれを認めるところからはじめなければ、本当のところはみえてこないのでは。物書きはどちらの立場に立つのか、それは各自が決めることでしょうが、鮎子さんのコメントを読み、こういう人もいるのだと、ちょっとうれしくなりました。

14/08/25 suggino

ブラックユーモアですね。ひじょうにおもしろかったです。
ニュースをみながらときどき「そんなに戦争がしたいなら、各国トップが一対一で殺しあうか、さもなければ誰にも迷惑のかからないところでやってくれ」と思うことがあるので、この発想は、おお、と思いました。
「合法◯◯」という言葉が近年増えているように感じていましたが、合法的な戦争…すごい言葉ですね。おぞましくも諧謔的で。

14/08/26 W・アーム・スープレックス

sugginoさん、コメントありがとうございます。

タイトルといい、もしくは内容といい、ともすれば誤解を招きかねない作品を、まさにズバリと言い当ててくださり、感謝しています。世界中で唱えられている「戦争反対」―――しかし、現実は………。世界的権威の学者が、世界はあと六十年足らずで破滅すると予測していますが、それまで声をからしながら唱え続けなければならないのでしょうか。

14/09/22 光石七

拝読しました。
合法的にドーム内で戦争をすることで世界の平和が守られる…… こんなの本当の平和じゃないと心の中で叫びましたが、人間の愚かさ・残虐さを考えるとこうなっても不自然じゃないと思う気持ちもあり。
どうしたら戦争はなくなるのでしょう……
問題提起の作品に唸るばかりです。

14/09/22 W・アーム・スープレックス

光石七さん、コメントありがとうございます。

人間が存在するかぎり、戦争はなくならないような気がしないでもありません。実際に銃をもっての戦いはなくても、地位や名誉の奪い合い、仕事上での競争、もっと平たく、電車の座席とり、映画館の席の肘置きのスペース争い………平和のあいだも我々は、なにかと戦っているようです。自分の中にある戦争に気づく―――問題はどうもそこらあたりにあるように思えてなりません。

ログイン