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光石七さん

光石七(みついしなな)です。 子供の頃から空想(妄想?)が好きでした。 2013年から文章化を始めました。 自分では気付かないことも多いので、ダメ出しを頂けるとありがたいです。

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告白シンドローム

14/08/23 コンテスト(テーマ):第六十三回 時空モノガタリ文学賞【 告白 】 コメント:8件 光石七 閲覧数:1460

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「あのさ、お前MEGUの写真集が無いって騒いでたじゃん?」
「ああ、先月ね。結局みつからなかったけど」
「実はさ、あれ俺が売っちゃったんだ」
「は?」
「小遣い欲しくてさ。サイン入りだし高値が付くかなって」 
「……兄貴、マジ?」
「悪い。秘密にしとくつもりだったんだけど、なんでか言っちまった」


「私ね、本当は美憂のこと嫌いなの」
「羽奈?」
「アンタがお金持ちのお嬢さんじゃなければ付き合ってないって」
「羽奈、私のこと親友だって……」
「思ってるわけないじゃん。トロいし、見ててイライラするんだよね」
「そんな……」
「もう、すぐ泣く。そういうとこも嫌いだわ。じゃあね」


「お前に大事な話がある」
「何、父さんも母さんも改まって」
「実はな……お前は俺たちの息子じゃないんだ」
「え……?」
「俺たちとお前は血が繋がっていない。ある施設から赤ん坊のお前を引き取ったんだ」
「でも、私たちはあなたを本当の息子だと思ってる。それは今までもこれからも変わらないわ」
「あ、うん……」
「混乱させたか。戸籍も操作してあるし、一生黙っているつもりだった。だが、やはりお前に真実を伝えるべきだと母さんと意見が一致したんだ」


「こちら会場です。まもなく記者会見が始まります。急遽決まったこの会見、榎畑議員は何を語るのでしょうか? ……あ、榎畑議員が姿を見せました」
「皆様、お集まり頂きありがとうございます。民和党の榎畑量次です。本日私がお伝えしたいこと、それは私の罪です。――私は昨年五月、Q産業より五千万円の賄賂を受け取りました。公共事業受注の便宜を図る約束でした。皆様の信頼を裏切る行為をしてしまい、誠に申し訳ありません」
「これは寝耳に水です。なんとあの榎畑議員が自ら過ちを告白しました」
「――ずっと隠し通すつもりでしたが、政治家として人間としてやはり真摯であるべきだと思い、本日この場を設けさせていただきました。警察にも自首致します」



 会議室に集められた有識者たちは頭を悩ませていた。
「告白シンドロームか……」
「ある日突然胸に納めていたことを話し出すのが症状だ。日本中に広がりつつある。だが、一点から徐々に周りに派生した感じではない。場所は飛び飛びだ。そして患者――これが適切な言葉かはわからないが、秘密を告白する人たちには接点も共通点もみつからない」
「自白剤を打たれたわけじゃないだろ? 病原菌やウィルスでもない。面白い話や言葉、ファッションとかならテレビやネットで全国的に広まることはあるが、自分に不利な情報をぶっちゃける行為はなあ……」
原因不明、当然対策も立てられない。皆ため息を吐くばかりだ。
「でも、犯罪の検挙件数も立件数も増えてるだろ? 犯人が自白するからな。いいことじゃないか」
一人が呟くように言う。
「そこだけ見ればな。だが、秘密を吐露することがマイナスになることもある。産業スパイがいい例だ。企業秘密が他社に渡ることは大きなダメージになる。極秘情報を扱う仕事もあるしな。それに、我が国はあからさまに言わないことで人間関係を円滑にしている部分が大きい。ここが崩れると国の根幹を揺るがしかねない」
「建前はそうだろ。要はお偉方がいろいろ困るから早急になんとかしろってことだ」
「ま、結局はな」
またため息になる。
「原因がわからないのにどうしろと……」
「とりあえず、患者たちにもう一度詳しく話を聞くか」
有識者たちは頷き合った。


 とある家で眠り続ける若い女性。人工呼吸器が装着され、点滴や心電図などの医療器具も繋げられている。
「愛美、もう少しだ」
白髪交じりの父親がベッドの傍らに座り娘に話しかける。
「お前が望んだ嘘偽りの無い社会、お父さんが作ってやるからな」
娘の反応は無い。父は娘の髪を撫でた
「お前がいつ目を覚ましても良いように……」
彼は憎んでいた。娘を騙した男を。娘に偽りの愛を囁き、金と純潔を奪って逃げた男。純粋で疑うことを知らなかった娘は深く傷付き、自ら命を断とうとした……。
『この世に欺瞞なんていらない。真実だけでいいのに』
娘の遺書にあった言葉を父は胸に刻んだ。
(あいつだけじゃない。世界自体が愛美を裏切った)
その後、父はある動画をネットに投稿した。猫を数分撮影したものだが、『嘘はやめよ、真実を話せ』というフレーズを密かに幾度も紛れ込ませていた。サブリミナルだ。この動画はテレビでも紹介され、アクセス数が一気に伸びた。父はCM制作会社に金を渡し、テレビCMにもサブリミナルを取り入れさせた。
(効果が現れる時期は人それぞれ。……あの男もこの方法で殺してもよかったか)
男の最期の姿を思い出し、父は静かに微笑む。そして娘の頬にそっと触れた。


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このストーリーに関するコメント

14/08/24 滝沢朱音

光石さん、こんにちは☆

うっわ〜、告白シンドローム! 
今回の「告白」テーマ、こうきましたか…面白い!!!

かなり苦戦しててなかなか思いつかず、
いくつか書きかけてはストップ中の私です_| ̄|○ うぅぅ

嘘の多い世の中ですが、ときどきこんなことがほんとに起こってたりして!
そんなふうにゾッとしてしまいました。面白かったです。

14/08/24 夏日 純希

発想がすごく面白いです。オチもいいと思います。

勿体ないなぁと感じた所があったので、以下書きますが、
個人的な見解なので、そういうこと思う人もいるのかぁ程度で
受け取ってもらえれば、と思います。

・最初の告白の分量が多い
告白シンドロームで、読者の興味をぐっと引っ張ってくる大事な部分ですが、
全体の1/3以上を使うのはバランス的に少し多いかなと思います。
削ればもうワンエピソードぐらい書けたかもしれません。
「読者の興味をぐっと引っ張ってくる」という目的を
最小の文字数でやるにはどうすればいいかな、と考えてみたらどうなったでしょうか。
(最小ばかり求めると、物語の厚みが減るので、バランスはいりますが…)

・サブリミナル効果の利用には注意して下さい
後の報告では、サブリミナル効果は嘘だったということも言われているので、
そこに全てを委ねると小説の価値がガクンと落ちてしまう可能性があります。
(宮部みゆきさんのある作品のコアになっていたりするのですが、
 あれはネットのない時代だから許されてたのかなぁ・・・)
 
・オチが独立しすぎている(?)
例えば、父親がもう少し前の段落から登場していたりすると、
段落間の結びつきがあって、全体としては締まった感じになったかもしれません。

以上、未熟者の意見なので、参考になれば良いのですが…。

14/08/25 草愛やし美

えっ! この結末ですか、驚きました。光石七様、拝読しました。

告白シンドローム、犯罪はなくなって良いかもしれませんね、真実に優るものはないはずですから。でも、それでいいのかと考えてしまいました。

対外的に嘘は必要かと、思います。「お前の国なんか潰れてしまえばいい、大嫌いだ○○大臣、○○○指導者もおぞましいぞ」なんてこと、もしや、一国の大統領や首相が告白してしまったら……、ゾッとしますね。そう考えると、この世はなんと嘘で固められた世界なのかと思いました。発想が独特で、大変面白かったです。

14/08/25 そらの珊瑚

光石七さん、拝読しました。

告白シンドローム、面白い切り口でした!
真実を話すという行為、人を騙すことがなくなるということは、いい意味もあり、逆になることもあり、まさに裏表だなあと思います。
そのからくりは悲しいものでしたが、父親として娘の仇をとりたかったという気持ちも分かるような気がします。

14/08/25 泡沫恋歌

光石七 様、拝読しました。

告白シンドロームでみんなが真実を言い出したら、世の中が混乱しそうですよ。
知らない方が良いことだって世の中にはいっぱいあるんだから・・・。

大変面白く読ませていただきました。

14/08/26 光石七

>朱音さん
コメントありがとうございます。
今回のテーマではいくつか告白する場面は浮かぶもののどれも話が膨らまず、ならばこの断片たちを全部使って一つの話にできないかと、無理矢理書いてみたのが今作です(苦笑)
難しいテーマが多いですよね。苦戦しないテーマってあっただろうか……
本当は『カミングアウト症候群』という名前にしたかったのですが、カミングアウトだとニュアンスが変わってくるようなので、『告白シンドローム』にしました。
嘘はよくないと子供の頃教えられましたが、なんと嘘の多い世の中か。必要な嘘も中にはありますけど。
面白かったとのお言葉、うれしいです。



>夏日 純希さん
丁寧なコメントありがとうございます。
結構苦し紛れの発想とオチでしたが、そこは評価してくださりうれしく思います。

構成のバランスの悪さは自分でも感じていました。
告白の場面を会話文だけにして多少削ったつもりでしたが、それでも長いですよね。
夏日さんのコメントを読んで、告白のひと言台詞を羅列してもよかったかなと思いました。でも、それだと具体的な状況が伝わりにくいかな……

サブリミナル効果が信憑性に欠けることは承知しています。
告白シンドロームの原因として薬とか電磁波とかいろいろ考えたのですが、できれば地域性がなくすぐには特定されない方法を、と思い当たったのがサブリミナルでした。
これ以上は思いつかなかったです。どうせフィクションだし……と甘えた部分もありました。

オチについて。
父親を前段から出すことは全く考えていませんでした。世の中が混乱する中で当の犯人は離れたところで半ば狂気じみて静かにほくそ笑んでる、そんなイメージでした。
でも、確かに唐突感はあると思います。
父親を有識者の一人にしても面白い展開になったかもしれないなと、夏日さんのコメントで思いました。

もっと練って寝かせてから投稿できればよかったですね。
自分の未熟さを痛感します。
真摯なご意見、心から感謝致します。
しっかり読んでくださればこそですし、自分では気付かないことを指摘してくださるのはとてもありがたいです。



>草藍さん
コメントありがとうございます。
唐突な結末ですみません(苦笑)
建前というものも社会で生きるにはやはり必要ですよね。
“大統領や首相が……”という草藍さんのコメントに、これを話に使えばよかったと思いました(笑)
しかし、みんながみんな本音だけを語り出したら……怖い、怖すぎるッ!
やはりフィクションの世界だけにしておいたほうがよさそうです。
楽しんでいただけてよかったです。



>そらの珊瑚さん
コメントありがとうございます。
嘘を吐いてはいけないと言われて育ちましたが、それが完全に守られた世界はいいのか悪いのか……
父親の気持ちを思いやってくださり、うれしいです。
若干(どころじゃない?)狂気が入ってますけど、それだけ娘への愛情が深いわけです。
しかし、もし娘が目覚めたら彼女は父が作った世界を喜ぶでしょうか……?



>泡沫恋歌さん
コメントありがとうございます。
ええ、相当混乱しますよね。知らないほうが幸せなこと、建前だから成り立つ関係、世の中多いですから。
面白く読まれたとのこと、とてもうれしく思います。

14/08/30 クナリ

え、サブリミナルって効果が疑問視されてるんですか?
し、知らなかった…(もしや、常識ッ…?)。

コメントを拝見していますと、書き手様の中でも不完全燃焼の部分がお有りなのかもしれませぬが、こうして作品の形にしたことは、必ず意味を生じますね。
やってみないと分からないことって、多いですしね!(←身にしみて)

さて、作品について私見ですがッ。
最初に身近な事例から、段々話が大きくなって行く構成に、「え? え? おお?」と、話へ読み手を引き込む工夫がありますね。
自分としては、分量的にも、ここはむしろ良かったところでした。
どちらかというと、その後の有識者たちの説明の方が、分量を減らせるかなーと。
その分の字数を後半のドラマ作りに注ぎ込むのか、ラスト付近の描写はこのままに別のエピソードを入れるのか(冒頭に娘が男に傷つけられるシーンだとか、殺された男の死体が発見される所を描写するとか(父の殺人であることは勿論隠して、謎の死体として))…など悩ましい選択肢が生まれそうですが。
世間を広く騒がせる事件の原因の元は、人知れずこっそりと作られて拡散したのだ、その理由は個人の抱いた深い悲しみなのだ、というサスペンス要素が良いですね。
ユーザインタフェースの具合一つで、どんな情報も爆発的に広まってしまう昨今。
いずれ起こりそうな気がしますね、こんな事件も…。

14/08/30 光石七

>クナリさん
サブリミナル効果は科学的には立証されていないそうです。私も今回調べて知った次第です。
ええ、やってみないとわからない、投稿してみないとわからない、いつもそんな感じで書いております(苦笑)
告白のエピソードを程度の軽いものから徐々に重くしたのは意図的だったので、評価してくださりうれしいです。
「なんか頭でっかちな構成だなー」と思っていましたが、分量的にもOKでしたか。
“有識者たちの説明を減らしてその分……”というクナリさんの案の数々に唸らされました。
告白シンドロームの原因を「こう受け取ってほしい」と思ったそのままの言葉で分析してくださり、感激です。
丁寧で真摯なコメント、ありがとうございます!

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