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BADBYE FRIEND

14/08/22 コンテスト(テーマ):第六十三回 時空モノガタリ文学賞【 告白 】 コメント:0件 樫木 閲覧数:623

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私の友達は、物事をはっきりと断ることができない。
私は、彼女のそんなところがとても嫌いだ。

「ねえ、今度のお休みに東京行こうって約束してたよね?どこ行こうか、マコ」

放課後、学校の近くのカフェにマコと寄った。
他愛もない話をして、話が一段落した後に私がそう尋ねるとマコは、ボブカットのハニーオレンジの毛先をくるくるといじりながら
そうだねえ、と呟いた。

あ、これは行きたくないサインだな。私はすぐにわかった。
今までの経験上、マコは乗り気だと返事は早いのに。そうじゃないと今のように曖昧な返事をする。

断るならはっきり言えばいいのに。
むっとした顔が出てしまわないように、私は俯いて、砂糖も何も入っていないコーヒーをスプーンでかきまぜた。マコのその顔を見ないように。
しばらく意味もなくかき回しているとやっとマコが答えた。

「行きたいんだけど、お金がねえ」
「バイトしてるんじゃなかった?」
「うん、でも欲しいCDがあってさあ…」
「ふーん…じゃあなに?行けなくなったってこと?」
「うん…いや、ほんと行きたかったんだけどね、あはは…」

なにそれ。私と遊ぶよりCDが優先なの?なにがあはは…よ。
東京に行く約束は2か月前からしてたよね。そのCDは来月じゃだめなの?
そう言いそうになる唇にコーヒーカップを押し付けて、ごくりと飲み込む。
冷めてしまったコーヒーはあまりおいしくない。

「マコさあ、そういうのもうちょっと早く言ってくれないと。私、行く気満々だったんだよ?」
「はーい」

何がはーい、よ。そこはごめんねじゃないの?
マコはいつもそう。私の優先順位は低くて、ドタキャンはあたりまえ。
でもそれが悪いなんて思ってない。
私はいつもそれで悲しい思いをしてきた。今回の東京、本当に楽しみにしてたのに。
前のスイーツ巡りだってそう。その前も前も。

いつも耐えて、次こそはって期待してた。
だってマコは高校入学のときからずっとずっと親友だったから。
三年生になった今も、私たちはずっと二人で行動してきた。
マコが例え私のことを見下してるとか。どうせ私だから断っても許してくれるとか思ってるとしても。
私には大切な友達だったの。でももう、タイムリミットだね。残念だな。
コーヒーカップを机に置いて、マコの顔を見つめた。

「ねえマコ」
「なに?」
「私ね、学校辞めるんだ。だから、来週からもう学校には行かないの」
「え…?」
「だから、最後に思い出作りたかったんだけど、仕方ないよね。マコ、欲しいCDあるんだもんね。ああ、聴けないのが残念だなあ。マコの選曲ってセンスあるからね、残念」
「え、ちょっと待ってよ。本当に言ってるの?」

マコは机から身を乗り出して私に聞く。
それを私は静かにうなずいた。

「…は?じゃあ私来週からどうすればいいの?一人じゃん。やめてよ私この三年あんたとしかつるまなかったんだよ?今更どこのグループにも入れないし。ふざけんなよ!」

私はその言葉を聞いて固まってしまった。
ああ私じゃなくて自分の心配なんだ。とか、それが本心なんだなあとか色々思いついたけど、私に言えるのはこれだけだった。

「私はマコから解放されて嬉しいよ」

精一杯強がって言ったこのセリフ。
嘘だよマコ、ねえ、本当は行かないでって言われたかった、もっと一緒に遊びたかったよ。
学校辞めても友達で居てほしかった。でもそれはできないね。


最初のあの頃みたいに戻りたかった。私たちは本当に仲良しでいつも一緒で毎日遊んでたね。
ずっと笑いあって、ああ私はマコっていう友達ができてよかった、ずっと一緒に居たいなって思ったあの頃に。
マコが笑わなくなったのはいつだったかな、口数も減って私の優先順位が低くなったのはいつだったかな。もう何もわからなくなっちゃたけど、大好きだったよマコ。でもさよならだね。永遠に。

心の中で呟いた私のこの告白は、マコには届けられないんだなと思うととても悲しくなって私はまた俯いた。


コーヒーカップに涙が一粒落ちて、真っ黒な液体に溶けていった。


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