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坂井Kさん

今年(2014年)は思い付きと勢いだけで書いてきましたが、来年(2015年)は、状況設定をもう少し固めてから書こうかな、と思っています。スティーヴン・キングによると、「状況設定をシッカリとすれば、プロットは無用の長物」らしいですから。

性別 男性
将来の夢 夢というより目標として、来年(2015年)こそ長編小説を書き上げたい。
座右の銘 明日はきっと、いい日になる。

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ロボ人親王

14/07/31 コンテスト(テーマ):第六十三回 時空モノガタリ文学賞【 告白 】 コメント:5件 坂井K 閲覧数:1050

時空モノガタリからの選評

普通のロボット物とは一味違う、SFと寓話と恋愛ものが合わさったような、ほのぼのとした風味が面白いと思いました。人間とロボットの長所を併せ持ち、完璧なはずが、結果的に人間よりも人間臭く、不器用な人柄になっているのが面白いですね。また「辛い記憶」も忘れられず、また忘れていたくないと思う彼の優しさが素敵だと思います。「告白」が自分を受け入れるきっかけになったのならいいですね。

時空モノガタリK

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 ロボ人親王はロボットであり、人でもある。人間の王様とロボットの夫人との間に生まれたのが、彼だ。親王はロボットの長所と人間の長所を併せ持つ。ロボットの正確さと記憶力を持ち、人間並に融通が利き、ユーモアもある。見た目は人間と変わりはないが、気持ちが昂ると高温を発するのが特徴だ。

 ロボ人親王はロボットであり、人でもある。親王は父親譲りの熱い気持ちと、母親譲りの冷静さを併せ持つ。表情は豊かで、外から見ると人間臭い。ただ、親王は我を忘れて笑ったり、怒ったり、泣いたりすることはない。感情が一定以上になると、ストッパー機能が作動するためだ。

 ロボ人親王はロボットであり、人でもある。ロボットであれ人であれ、生まれてすぐは何も知らない。親王だってそうだった。ただ、彼は、一度頭に入ったことは忘れない。それは長所でもあり、短所でもある。人は、嫌な記憶を忘れて行ける。親王は決して忘れない。どんなに辛い記憶であっても。

 ロボ人親王はロボットであり、人でもある。子供の頃、親王の可愛がっていた猫が、交通事故で死んだ。親王は悲しんだ。それは短時間の激しい悲しみではなく、長時間の緩やかな悲しみだった。王様は国一番の技術者および医者を呼び、親王の辛い記憶を消去させようとした。が、彼は断乎として拒否した。

 ロボ人親王はロボットであり、人でもある。親王は運動能力も高い。本気を出せば、スポーツ選手にも引けを取らない。が、彼は本気を出したことはない。周りの人の能力に合わせてしまうのだ。それが人間的「配慮」によるものか、ロボット的「計算」によるものか、本人にも分かっていない。

 ロボ人親王はロボットであり、人でもある。高等学校に入り、親王は人間の少女に恋をした。同級生で、隣の席になった子だった。告白を決意した日、親王は大きな水筒を持って宮殿を出た。彼は、気持ちが昂ったとき、体温を上げ過ぎないために大量の水を要するのだ。

 ロボ人親王はロボットであり、人でもある。親王は背が高くて手足も長く、整った顔立ちをしている。頭が良くてユーモアもあり、運動能力も高い。当然、女の子からの人気も高く、告白されたことだって、何回もある。だけど、全て断って来た。波長が合わなかったのだ。

 ロボ人親王はロボットであり、人でもある。普通の人なら何とはなしに感じるだけの波長だが、親王にはハッキリと分かってしまう。初恋相手の少女とは、波長がバッチリ合っていた。だから必ず上手く行くはず。親王は席に着くなり、少女の目を見てこう言った。「今日から、僕と付き合ってくれませんか?」と。

 ロボ人親王はロボットであり、人でもある。普通の人ならば、緊張すれば心臓が激しく動く。手や脇に汗をかく。喉が渇いて、場合によっては吐き気もする。親王の身体には、そんな現象は起こらない。心臓の動きは一定で、汗の量も普段と変わらず、喉は渇かず、吐き気も起きない。ただ、身体が熱くなる。

 ロボ人親王はロボットであり、人でもある。告白後すぐ、親王は水筒を出し、水を飲んだ。渇きを癒すためではなくて、身体の熱を抑えるためだ。「返事は、すぐじゃなきゃダメ?」少女は言った。「出来れば早く聞かせて欲しい。水が足りなくなる前に」親王はオーバーヒート寸前だった。

 ロボ人親王はロボットであり、人でもある。「いいよ。熱過ぎる人は苦手だけれど、殿下のことは好きだから」少女はクールな顔で答えると、親王の額に手を触れた。「熱いね。でも、火傷するほどでは無いね」「水をたくさん飲んだからね。それにもう、胸の昂りは治まったしね」親王は冷静になるのも早い。

 ロボ人親王はロボットであり、人でもある。「本当だ。もう、ドキドキしてないね」少女は親王の胸に右手の指先を当てると、言った。「それでは分からないよ。僕の鼓動は、常に一定だから」「そうなの? 羨ましい。私はこんなにドキドキしてるのに」少女は左手を自分の胸に当てて、言った。「聞いてみる?」

 ロボ人親王はロボットであり、人でもある。「いいよ。ここからでも分かるから」「聞こえるの?」「聞こえるというより、感じるんだ。身体が触れてさえいれば」「そうなんだ」「僕は普通の人ではないから……」親王の表情が少し曇った。「だからOKしたんだよ」少女は、ほんの少し怒気を含んだ声で話す。

 ロボ人親王はロボットであり、人でもある。少女は言った。「肯定する人だっているんだよ。少なくとも、私はそう。だから、気にすることなんてないよ。殿下は殿下だけなんだし、殿下以外のものにはなれないんだから」親王の身体が、再び熱くなって来た。幸いにも、水筒の中の水は、まだ残っている。

 ロボ人親王はロボットであり、人でもある。あるいは、ロボットではなく、人でもない。だけど親王は、今では、それでいいと思えるようになった。


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このストーリーに関するコメント

14/08/01 クナリ

特異なキャラクタにカメラを据えて、突飛な展開が巻き起こるのではなく、丁寧に描かれていく人物像(?)がいいですね。
描写の量はそれほど多くないのに、少女のナマの人間らしさが充分に伝わってきました。
主人公との性質の比較によるものだと思いますが、いいキャラクタ造形だと思いました。

14/08/02 坂井K

コメントありがとうございます。

私は、主人公以外の登場人物は全くの白紙状態で書き始めます。ですから、主人公と少女が上手く対比できているとしても、計算して書いたわけではありません。

最初から最後まで、細かいところまで考えてから書き始めるという書き方は、私には難しいものです。だからでしょう、長編小説はなかなか書き上げられません。

14/08/02 草愛やし美

坂井K様、拝読しました。

書き方も設定もユニークですね。ロボ人で親王、キャラがとても素敵に描かれていて好感持てます。
人間よりも、ロボ人親王は人らしいと思います。それは、正確を特徴とするロボットの部分によるものなのでしょうが、律義さというか、この誠実さは、人への警告のように思えます。人はずるいですから。
少女が外見はそっけなさそうだけど、思い遣りのある人ですね、いい相手を選ばれて良かった。

14/08/02 坂井K

コメントありがとうございます。

私は、どちらかと言うと一人称の方が書きやすいのですが、今回は「親王」を出来るだけ客観的に描きたかったので、三人称を選択しました。

繰り返しを多用したのは、親王が「ロボットであり、人でもある」ことを印象付けたかったからです。

14/09/30 坂井K

えーっと、遅ればせながら、受賞についてコメントします。

私は賞を取るためだけに小説を書いている――わけではありません。が、初受賞はやっぱり嬉しいです。ありがとうございます。

ただ、私は「思い付いたら勢いに任せて一気に書き上げる」というスタイルを取っているため、書いている当時何を考えていたのか、あまり覚えていませんでした。そこで、メモを探し出して見てみると、「ロボ人親王の流れ。出自の説明→普段の生活→初恋と告白→振られる?」と書いてありました。

どうやら最初は、「告白しても拒否される」という流れになっていたみたいです。それが、書いていくうちにこのような結末になったのですから、不思議なものです。

――何にしても、読んでいただいた皆さん全員に感謝します。ありがとうございました。

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