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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

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第2話 赤い果実ティア  魔九志夢(まくしむ)のアド・ミス物語

14/06/30 コンテスト(テーマ):第六十回 時空モノガタリ文学賞【 涙 】 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:887

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 20歳の時、帰郷した私に、祖父の妖風魔九志夢(ようふうまくしむ)がアド・ミス物語の第1話を話してくれました。それを終え、「楼恋巣(ろうれんす)、この果物を食べてごらん」と手の平に赤い果実を乗せてくれました。
「おじいちゃん、これプラム?」と尋ね、歯の先でちょっぴり囓ってみました。すると甘酸っぱくて、思わず身体がキュンと。こんな反応に祖父はニコリと笑い、「ティアという果物だよ」と教えてくれました。
 ティア、それは私にとって初めてのフルーツです。今度はガブリとかぶり付くと口一杯に甘い果汁が溢れました。それからです、どことなく気持ちがワクワクしてきて、奇妙なことに嬉し泣き気分に。挙げ句に涙がポロポロと零れるではありませんか。
 この様子を見た祖父は実に満足げに、桃栗3年柿8年、梅はすいすい13年、柚子は大馬鹿18年、林檎ニコニコ25年と唱えました。そして最後に、ティアは涙で70年、と。
「えっ、そんなに、なっが〜!」と仰け反りますと、「最近思い出したんだよ、どうしたら実がなるかを」と祖父は言い、後は淡々と第2話を語り始めたのです。

 梅雨明けし、いよいよ夏本番の頃のことでした。小学二年生のクラスで海水浴に行きました。児童たちも、そして付き添いの親たちも、いやママ友たちもバスに乗った時からテンションが上がってました。1時間ほど走り、松林を抜けると、水平線上にモコモコと雲が立ち昇る碧い大海原が広がっていました。そして足下にはさらさらとした白い砂浜が岬へと伸びていました。
 仲間はいつもの6人、すなわちガキ大将の魔九志夢(まくしむ)に泣き虫の麻里鈴(まりりん)、ヤンチャ坊主の安渡玲(あんどれ)とお転婆の織美亜(おりびあ)、そして引っ込み思案の剣斗(けんと)におしゃまな伽沙凛(きゃさりん)、みんな大はしゃぎです。なぜなら海で泳ぐなんて、いや浸かるなんて初めてだったからです。
 しかし、案の定でした、浮き輪を着けて海に入れたのは魔九志夢と安渡玲と織美亜の3人だけ。残りの3人は寄せ来る波が怖くって、波打ち際でパシャパシャと遊ぶだけでした。
 これでは面白くありません。そこで魔九志夢が「向こうへ行って遊ぼう」と松林を指差しました。それに、今までベソをかいていた麻理鈴が「私、そっちがいい」と走り出しました。それをみんなで追い掛けました。

 松林の中は心地よい風が吹き、6人はそれに戯れるように、松ぼっくりを投げ合ったりして遊びました。そんな時に伽沙凛が見付けたのです、松に隠れた砂場を。それは円形で、土俵のようなものでした。
「あそこで相撲取ろうよ」
 運動大好きな安渡玲が元気よく駆け出し、これに負けじと全員突進しました。
 どすこい、どすこいとみんな声を上げ、白砂の土俵に上がりました。するといきなりのことでした、周りの緑の松林はさあっと消え、砂ばかりの世界に変わったのです。そして、なぜか目の前に城がそびえていました。
「迷子になっちゃったの?」
 泣き虫の麻里鈴の目にはもう涙が。そんな時に城門が開き、頭にターバンを巻いたおじさんがラクダに乗ってやってきました。6人は言われるままにラクダに乗せてもらって城の中へと入って行きました。

「アタイは亜尼砂(あにさ)よ。砂漠の民は涙まで涸らしてしまってさ。さっき望遠鏡で覗きよったら、嬢ちゃんが涙流してはるから、その涙、お猪口一杯おくんなまし」
 6人は驚きました。謁見した、気品ある女王様が日本の方言ごちゃ混ぜで話されるものだから。それにしても涙とは…、なんで? 子供たちがポカンと茫然自失。それに女王様がなんとオヤジ訓話をぶたれるではありませんか。
「シッコに汗、それにツバ、全部人間が出す水分だわさ。その中でイッチャン綺麗な水が涙なんえ。その純な涙をこの木に一滴吸わして上げると、ティアという赤い実がなりよります。その実を食べると、もうワクワク気分。後は嬉し泣きさ。その涙をまた他の木に、とね」
 こんな熱弁を無理矢理聞かされた子供たち、それでも何となくわかったような気になった。それを察してか、女王様は「かちこいガキンチョのこと」と持ち上げ、「chain of tears、涙の連鎖で砂漠を緑豊かな大地に変えとうおます。さっ、みんな、泣いてくだされ。涙が溜まったら、お土産にティアの苗木一本だんべ」と訴えられました。
 たとえ小学二年生であっても、義を見てせざるは勇無きなり。魔九志夢たちは円陣を組んで大泣きし、涙をお猪口に集めました。

 祖父からこんな物語を聞き終えた私、ちょっと不思議です。「70年ぶりの、この赤い実は…、まさかおじいちゃんの涙で?」と訊いてしまいました。
「楼恋巣、それは私の涙だよ。年を取っても泣けるもんだね」
 泣き虫だったという麻里鈴お婆ちゃんが、横から私に優しく微笑んでくれたのでした。


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このストーリーに関するコメント

14/07/01 鮎風 遊

みな様へ

小学1年生から始まった魔九志夢(まくしむ)のアドベンチャー & ミステリー物語、本日は小学二年生の時の第2話を紹介させてもらいました。

この後、小学3年生、4年生と…、そしてやがて成人し、年老いていく。
その年々を追って物語をご披露させてもらうつもりです。

どうか気長にお付き合いのほどよろしくお願いします。

14/07/01 泡沫恋歌

鮎風 遊 様、拝読しました。

何やら、楽し気な子供たちの声が聴こえてきそうなお話ですね。
この子供たちの冒険楽しみにしています。

砂漠の女王様がとってもオチャメでした。
私が子供の頃にみた、「ひょっこりひょうたん島」を思い出しました。

14/07/01 草愛やし美

鮎風遊様、拝読しました。

ティアという果実、一度食したいものです。涙で育ったその赤い実は、どんな味なのでしょう。
幼い頃に歌った童謡を思い出しています。『赤い鳥、小鳥、なぜなぜ赤い、赤い実を食べた。青い鳥、小鳥、なぜなぜ青い、青い実を食べた』 北原白秋の作詞ですが、なぜだか幼心に凄く残る不思議な歌でした。赤い鳥や青い鳥にあってみたいなあとロマンティックな気持ちになりました。きっと、この赤い鳥の食べた実が、ティアだったのではないでしょうか?
涙がいかに大切なものかと、子供達は考えたことでしょうね。面白かったです。

14/07/02 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

コメントありがとうございます。

子供たちはいつも大騒ぎです。
そして冒険です。

もっと楽しく書けるよう頑張ってみます。

14/07/02 鮎風 遊

草藍さん

コメントありがとうございます。

ティア(tear)という赤い実の果物。
私も探しています。

私の想像では
すもも+いちご+オレンジ+マンゴー
のような味かな?

次は小学3年生の時の話しです。
よろしく。

14/07/09 そらの珊瑚

鮎風 遊さん、拝読しました。

情景が浮かんできて、なんだか絵本を読んでいるような気分になりました。
砂漠の女王は今でも一生懸命涙を集めて回ってるのかもしれませんね。
とても楽しいお話でした!

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