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北村ゆうきさん

慣れない部分が多いですが、一生懸命、作品を書いていきたいと思います。

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理想と現実のはざまで

14/06/25 コンテスト(テーマ):第五十九回 時空モノガタリ文学賞【 ON THE ROAD 】 コメント:0件 北村ゆうき 閲覧数:812

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「ごめんなさい。」

日陰で少し薄暗くなっている校舎裏。
校庭では、それぞれが皆、挨拶をしたり励まし合ったりしている。

智也は人生で初めて振られた。
サラサラの茶色い髪、切れ長の目、優しい口元。
そのどれを取っても完璧である自分が振られる訳がないと思っていた。

卒業式。

今日で、この高校ともお別れ。
智也は学年一の美人と評判の奈美と3年生で初めて同じクラスになった。
1年生の時から狙っていたが、他の女と仕方なく付き合っていたり、奈美と関わりがなかった事もあり、最後の最後、卒業式での告白となった。

「どうして…。」
断られた理由が分からない。
目の前にいる奈美は少し俯いて、それ以上、何も話そうとしない。
「どうしてなんだよ。」
問いただす様にもう一度聞くと、ようやく奈美は小さな声で俯いたまま話し始めた。

「私…、杉本君が好きだから…。」
「す、杉本!?」
同じクラスに杉本はいる。
メガネをかけて優しそうな顔をしているが、成績も普通、運動も普通、顔も普通の平凡な男子生徒だ。
智也は杉本の名前を奈美の口から聞くと、思わず苦笑いを浮かべた。

「杉本なんかのどこがいいんだよ?」
「…な、んか。」
その言葉に反応し、今まで俯いていた奈美が突然顔を上げた。

「そんな言い方しないでよ!」
涙を浮かべながら口を真一文字にして智也を睨みつけている。
「な、何だよ。」
突然の大声に思わず智也が後ずさりをした。

「私は…、あの時から杉本君の事が好き…。」
「あの時?」
「そう…。1年生の時、帰り道で助けてくれた杉本君…。」
「助けてくれた?」
話が見えない。

「帰り道に、私が1人で歩いていて…。
飲酒運転の車が交差点でいきなり歩道に突っ込んできたの。
咄嗟の事で私は何も分からなかった。
そこへいきなり杉本君が飛び込んできて私を抱きしめてくれて…。
杉本君が助けてくれなかったら、私は、私は…。」
奈美の肩が小刻みに震える。

「その時から私は杉本君の事が好きになった。
杉本君の優しさと強い気持ちが好きになった…。」
「じゃあ、杉本に告白すれば…。」
智也のその言葉に奈美はまたキッと睨みつけてきた。

「そんな簡単な事じゃないの。」
「簡単、じゃない?」

「…杉本君には彼女がいるの。
いつも仲良く2人で歩いていて…。
私は杉本君の彼女になりたいなんて思わないの。
杉本君が幸せならそれでいいの。
幸せな杉本君を見る事が出来ればそれでいいの。
その代り、私は杉本君の事が好きな間は誰とも付き合わない。
それが今の私の信念なの。」

「信念、ねぇ…。」
余りの迫力に圧倒された智也だったが理由が分かると奈美に向かって1つ息を吐くと笑顔を見せた。

「分かったよ。奈美の信念、思い。それが私の生きる道、だとしたら…。」
くるりと奈美に背を向けた。

「俺の生きる道は、一度振られた女には二度と告白しない。」
そのまま歩き出し、右手を振った。

「じゃあ。お互い、卒業おめでとう。」


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