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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
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幽霊バス

14/06/18 コンテスト(テーマ):第五十九回 時空モノガタリ文学賞【 ON THE ROAD 】 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1793

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 ひょんな拍子で、あなたがもし幽霊バスに乗ってしまったら、その後の人生は一体どうなるのでしょうか?

 じとっとした空気が肌に纏わり付き、生暖かい。だが背筋に悪寒を感じる。そんな陰鬱な夜に、幽霊バスはあなたの目の前に現れる。
 昭和時代を彷彿させる箱形で、くすんだ橙色のボディに緑のラインが伸びる。とにかく気分が悪くなる色合いだ。その上バンパーがへこみ、車体のあちこちに錆が浮き上がってる。
 誰が取り付けたのか、運転席横に立てられた竹竿に白い吹き流しが。だが、たなびいていない。これからしてスピードはかなり遅そう。
 そんな幽霊バスがヘッドライトからぼやけた光を放ち、ゆらゆらと車体を揺らしながらゆっくりとやってくる。

 あっ、赤信号。右からトラックが、ぶつかる!
 摩訶不思議、トラックは幽霊バスの車体をスルッと通り抜け、さっさと走り去った。どうも幽霊バスって、実体があるようで、ないのかも知れない。
 ならばバンパーのへこみはどうして出来たのだろうか?
 多分、魔神山に捨てられてたすでにボコボコのバスを、幽霊たちが使い出したのだろう。
 兎にも角にも、もはや幽霊バスに交通事故は起こらない。そのせいか一旦停止もせず、勝手気ままに走ってくる。

 ところで、運転手は誰?
 確かにハンドルを握ってるヤツがいる。白い着物を身に纏い、額に白い三角の天冠(てんかん)を貼り付けてる。これは冥土へと旅立つ時に着る衣装だ。だけど、それって制服?
 てな疑問もあるが、このオヤジ、ご丁寧に黒い帽子を被ってやがるから、笑えてくる。
 一方乗客といえば、ぼんやりとした室内灯の中に、三、四人の影が見える。
 さらに目を懲らすと、窓から景色を眺めてる女がいる。どんな女だろうかと窺うと、ガチンコに目が合う。その瞬間、おどろおどろしい形相で、女は赤い口紅を塗りたくった口をガバッと開く。身の毛もよだつこの女、都市伝説にある口裂け女なのだ。
 こんな幽霊バス、これから一体どこへ向かおうとしているのだろうか? それは乗車した者にしかわからない。

 さてさて、もしあなたが間違って幽霊バスに乗ってしまったら、死んでしまうのか、それとも生還できるのか、あなたのその後の人生を想像できますか?
 そこで御参考に、たとえばここに花形遥希(はながたはるき)という男がいる。
 完璧に名前負けしてる状態、つまり貧乏/もてない/暗いの三拍子を背負ったサラリーマンだ。
 そんな遥希だが、わずかなボーナスを手にした時だけは弾けてしまう。とは言っても、大した話しではない。居酒屋の片隅で、誰も集わぬ一人宴会をしみじみと。
「今夜は七夕、ひこ星と織姫星の年1回のデートか。俺は彼女いない歴10年、悔しいけど祝ってやろう」
 嫌われ男だが、優しい気持ちだけは持ち合わせてる遥希、今夜は半額唐揚げでついつい飲み過ぎた。12時も過ぎ、さっ安アパートに帰ろうかと外へと出た。
 ムッと蒸し、どことなく普段の夜とは違うようだ。それでも遥希は気分良く、ヨロヨロとバス停へと向かう。

「しまった、最終は出てしまったか」
 1時間かけて、歩いて帰るしかない。そんな時にオンボロバスが入って来た。
〈あなたの別世界行き〉、遥希はこんな行き先表示につられ、酔っ払った勢いでひょいと乗ってしまったのだ。
 暗い室内を見渡すと、死に神にお岩さん、一つ目小僧に鬼婆が座ってる。遥希は恐怖を感じない。なぜなら、このバスは夏の夜の仮装イベントだと思ったからだ。そして遥希は白装束の運転手を誘導し、アパート前まで行ってもらった。
「ここが俺の別世界だよ」と自虐的に告げると、運転手が「えっ、冥土へ行かないのか、だったら代わりに、この女を持ち帰ってくれないか」と頭を下げる。すると横にいた女が「私、この世で暮らしてみたいの」と遥希の身体に胸を押し付けてくる。
 遥希はこの意図がもう一つわからない。だがそれはちょっと棚上げして、なかなかのふっくら美人だと感動。もちろん断る理由はない。ああ、いいよと軽く返し、女の手を引いて降りた。
 その後バスはエンジンを噴かし、左右に揺れながら消えて行く。また縁あらばと遥希がナンバープレートを確認すると、〈幽ー0〉とある。
「えっ、あのバスって、幽霊バスだったのか」
 やっと気付いた遥希、ならば、この女は?
 遥希が女を窺うと、ギョッ!
 なんと珍奇なことに、福福しいバストを持ち上げて、その下にある大口で唄ってるではないか。

♪ この別世界で 夜な夜な歌って上げるわ オッパイで
  今夜も どこかの町を
  私の胸のように ゆらゆらと
  幽霊バスが ON THE ROAD ♪

 貧乏/もてない/暗いの三拍子揃った花形遥希、幽霊バスに乗って、冥界のオッパイ歌姫と出逢った。そして別世界へとやっと辿り着いたのだった。


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このストーリーに関するコメント

14/06/20 泡沫恋歌

鮎風さん、拝読しました。

蒸し暑い真夏の夜に「幽霊バス」は運行してそうです。

花形遥希くん、最後に冥界のオッパイ歌姫という
摩訶不思議な女性を貰っちゃいましたね(笑)

14/06/20 草愛やし美

鮎風遊様、拝読しました。

こんなバスが来て乗ってしまう花形満じゃなくって遥希さん、素晴らしい酔いじゃないですか。のりが良い人、この方、関西人の流れを汲んでおられると思います。しかし、お持ち帰りまで、できたのは幸か不幸か、まあ、世間で認知されている「オッパイ星人」なら、飛びつくかもです。いや、その大口など、気にしないで見ないようにすれば、いいのですから。笑

14/06/20 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

コメントありがとうございます。

最近結構走ってるらしいですよ、幽霊バス。
花形遥希くんはオッパイ歌姫でしたが、
噂によれば、最近ある女性が乗ってしまって、
冥界のイケ明太子に出逢ったとか。

14/06/20 鮎風 遊

草藍さん

コメントありがとうございます。

はい、遥希くん、
マクドナルドをマクド、ミスタードーナツをミスドと呼ぶ、
まいどおおきに食堂をこよなく愛する関西流れです。

オッパイ歌姫と結婚し、きっとおもろい人生になったことでしょう。

14/06/20 そらの珊瑚

鮎風さん、拝読しました。

ホラーかと思いきや、最後はなんだか楽しそうでした。
冥土へは行かず、別世界で案外ふたりは幸せに暮らしているのかなあ。

14/06/24 鮎風 遊

そらの珊瑚さん

コメントありがとうございます。

はい、コメディーぽいかな。
幸せに暮らしてると情報があります。
よろしく。

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