はちゃめちゃ太郎さん

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12/06/13 コンテスト(テーマ):第八回 時空モノガタリ文学賞【 大分 】 コメント:2件 はちゃめちゃ太郎 閲覧数:1479

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仕事が終わって、「よしっ」と気合を入れなおしたあと、今日もこれからある合コンの支度をする。
あたしはもうすぐ二十九歳。正直、ギリギリのように思ってる。周りは「結婚なんてまだまだ大丈夫よ」なんて笑顔で言うけれど、腹の中ではみんな我先にって考えてるのがわかる。もちろん、あたしだって同じ。自分より年上の人に対しては同じように言っているわ。
少しでも良い人を見つけ、早く幸せになりたい。そのために自分を磨く。くだらない男をその磨かれた輝きで遠ざけ、素敵な男性のみを引き寄せるために。

会社の化粧室で、鏡を入念に見る。
「トモカ、今日の相手ってちゃんと信用できるんでしょうね?」と前回の相手に不満だったあたしが聞く。くだらないプロフィール詐称をされたのだ。
「もちろんよ。あのあときちんと紹介者にはキツく言っておいたわ」
「じゃあ今回は大丈夫ってことよね」
「ん〜、どうかな。インチキしない代わりに堂々とダメなのが来るかも」と少し笑う。
あたしは思わず深く吐息して、感情を過剰に吐露してしまった。

四対四。あたしたち二人が最後にお店に到着したようで、トモカに続いて個室に入った。 そこはすでに、冒険者たちの、体中から立ちのぼる不満の煙が満ちたような妙な空気が出来上がっていた。
それはやがて腐臭へと変わり、あたしの鼻腔を鋭角的に刺激した。
右手にはドアノブ――。あたしはまだドアを締めていない。
さようなら、ごめんなさい。男たちの顔すらまともに見て居ないのに、心の中で一度だけ謝って逃げるように踵を返しドアを閉めたのだった。

ガレリア竹町を抜け、少し気を紛らそうといつも通らない道を歩く。
気づけば、外灯も人通りも少ない路地裏のようなところをさまよっていたことに気づいた。
身体がほのかに不安をいだく。すると前から、三人の男たちがこちらへ向かって歩いてくるのがわかった。服装は月夜の中でもB系とわかるくらいダボついている。
すれ違うときに、「オネーさんなにしてんの?」と絡んできた。顔つきも体つきもいかつくてなんだか怖い。
歩みを止めずに無視して歩く。それが一番いいと思った。
「ちょっと待てって。シカトすんなよな」
「いたいっ」
無理やり腕を掴んで制止しようとしたらしかった。
「やめてください、なんですか?」
「遊ぼうよ。お? よく見りゃ超キレーじゃん」
「時間がないので離してください」
「ダメだね〜遊んでくれるまで離さない」
あたしを囲む三人の男がほくそ笑んでいる。
「警察呼びますよ」
「へえ、この手でどうやって呼ぶのかな?」
掴まれた手を無理やり上へ引っ張られた。
「だ、だれか」と叫ぼうとしたその時、一人があたしの口を塞いだのだった。
こ、殺される?
「なあネーちゃん、規約って知ってっか? 知ってるよな。簡単に言えば約束だ。オレはね、超優しーの。だから規約違反はしないんだよ。これ見てみろ」
そう言って ボウズの男はスマホを見せ、サイトを拡大表示した。
「ここに『※注意!R18的な暴力表現・性描写はお控えください。』ってあるだろ? 見たか? オレは約束は守る男だ。だから酷いことはしない。削除されたくねーしな。でもテーマが難しい。関連できない」
あたしは必死にもがいていた。
「聞けっつってるだろ」
あたしの顎を軽く持ち上げて顔の前で睨みつける。怖くて泣きそうだ。でもあまり怖がると、それは暴力されてるってことになっちゃうかも、って思ったからここは我慢する。あたしも頑張る。
「はい」と静かに頷く。
「よし。オレたちはオネーちゃんと遊びたいだけなの。カラオケでもビリヤードでもいい。わかったら……」
「テメーら、何してやがる」
闇の中から別の青年が突如現れた。あたしは心底から助かったと思った。
「ああん? 何だテメー」
「なにしてると聞いてるんだ」
「関係ねーだろ。消えろよ」
そう言って相手の胸元を小突く。
押された青年も負けじと小突き返した。
「くそう、やるじゃねえか」
ボウズは再び小突き返す。そしたらまた青年も。小さな小突き合いだ。
「くっそ! ラチがあかねえ! お前ら、帰るぞ」
ボウズは仲間を従え「覚えてやがれ!」と吐き捨てて闇の中へととけていった。
あたしは脱力して地べたへ座り込んだ。
「もう大丈夫ですよ」
「あ、ありがとうございます」
「夜道は危険ですから、送りましょう」
彼はずっと紳士だった。優しかった。たとえ野獣と化そうとも、規約がある以上、あたしは守られる。
マンションの前につき、彼の顔を始めてしっかりと見た。とても凛々しいステキな人だった。
「あの、お礼をしたいので上がっていきませんか?」
私は逡巡する彼を無理やり連れ込んだ。お酒も食事も楽しかった。ただひとつ、規約だけがもどかしかった。


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このストーリーに関するコメント

12/06/14 ゆうか♪

初めまして、、拝読させて頂きました。

この中で言う規約って、時空モノガタリの規約ですよね?
ある意味 作者のユーモアに笑わせて頂きました。
楽しかったですよ〜♪ ありがとう。
でも作者としては欲求不満なのでは・・? クスクス

12/06/18 はちゃめちゃ太郎

ゆうかさん。
コメントありがとうございます。

>この中で言う規約って、時空モノガタリの規約ですよね?

そうです。理解して頂けて幸いです。
反則かなとヒヤヒヤしてますが(笑)。

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