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草愛やし美さん

時空文学コンテスト開催100回、おめでとうございます。思えば、初めて私が、こちらに投稿したのは2012年5月のこと、もう4年近く経ったのですね。時空モノガタリさまが、創作の場を与えてくださったお陰で楽しい時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 また、拙い私の作品を読んでくださった方々に感謝しております。 やし美というのは本名です、母がつけてくれた名前、生まれた時にラジオから流れていた、島崎藤村作詞の「椰子の実」にちなんで……大好きな名前です。ツイッター:草藍やし美、https://twitter.com/cocosouai 

性別 女性
将来の夢 いっぱい食べて飲んでも痩せているっての、いいだろうなあ〜〜
座右の銘 今を生きる  

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ウエディングケーキ請負人 朝倉真帆

12/06/12 コンテスト(テーマ):第七回【 結婚 】 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:3382

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「ウエディングケーキプロデューサーの朝倉です。今回はどうのようなケーキをご希望でしょうか?」
「私たち、香川県出身でしてうどんに目がないのです」
「香川といえば、有名な讃岐うどんですね。それで?」
「うどんケーキでお願いします」

 頼まれた私はどんなケーキであろうと絶対首を横に振らない。それは意地というものではなく、その人たちにとって一生一度の結婚式だからこそ、お式で夢を叶えてあげたいと思っているからだ。私は請負人として誇りを持って仕事をしている。

 うどんケーキは大成功だった。参列者全員でうどんを捏ねる作業から始まったお式は、うどん生地を、参列者全員で手を繋ぎ輪になって踏んだ。もちろん真っ白な靴下を用意した。留袖姿のお母さんは裾をたくしあげ、たすき掛け。タキシード姿のお父さんは腕まくり、神父も参加して大騒動だった。新婦は真っ白なミニドレスに可愛らしいコック帽、新郎は白の短パン姿。みんな楽しくうどん生地を踏みつける。

「1・2・1・2、それ、人生もしっかり両足で踏んで歩くんだよ」
 仲人さんの掛け声が今でも耳に残っている。

 みんなで打ったうどん生地を真ん丸く纏めケーキに見たて積み上げた。鏡餅のようだが艶々とライトの下で輝いてうどんケーキは美しい。ケーキの飾りはもちろん、ちくわ天や、野菜のかき揚げ、青ねぎなど讃岐流のトッピングだ。参列者さんの希望の具が用意された。美しい真っ白なうどん生地がお式の間、寝かされるのだ。こうして協力し合ったうどんは腰のある素晴らしいうどんになった。
 最後は大きなハート型の桶にたっぷりぬくぬくのお湯に入った茹で立ての釜揚げうどんを掬って食べた。桶の回りに片手に汁椀を持ちみんなでズルズル一気に食べていくと自然に笑顔がこぼれた。とてもいい記念になったとみなさんに喜んで貰えた。

 次に請け負ったケーキのコンセプトはみんなで作って食べようだった。新婦は幼稚園の先生、新郎はその園の息子さんで園長見習いさん。子供好きなお二人は幼稚園で挙式をしたいと希望された。

「子供たちみんなに僕たちのウエディングケーキを作って貰いたいんです」
「一生一度の思い出に残る挙式だから園児たちにも覚えておいて欲しいんです」
「凄くいいアイディアですね、了解しました。朝倉が素晴らしいお式を請け負います」

 お式は終始、蜂の巣をつついたような賑やかさで包まれていた。
 
 制服の上から可愛い白いエプロンをつけてもらった園児たちはみんな神妙な顔つきでウエディンギケーキを見つめていた。

「ほんとにこのケーキに落書きしてもいいの?」
「ちーちゃん、落書きじゃなくって、このチューブに入った生クリームを搾り出して、いろんな飾りを乗っけるのよ」
「やった〜、僕初めてなんだ、お料理するって」
「お料理なんてもんじゃないわよ、卓くん子供なんだから」
「えっちゃん、お前だって子供じゃないか、おんなじ薔薇組さんだぞ」
 わいわい言い合いながら、クリームのチューブを握り締め園児たちは嬉しそうだ。ヌルヌル搾りだしたクリームをこっそり舐めている子もいる。
「あっ、隼人がつまみ食いしてるよぉ先生〜」
 騒ぎの中で新郎新婦の顔は輝いている。飾りつけの苺やメロンを潰してしまう子、喧嘩してクリームまみれになる子、マジパンの人形を落として泣きだす子、しっちゃかめっちゃだ。それでも何とかケーキが完成すると全員から大きな歓声が沸きあがった。

「先生おめでとう〜」
「ずっとずっと先生でいてね〜」
「ケーキ作るのすっごく楽しかったよ」
 みんなで作ったケーキの前で涙ぐむ二人の姿に私も感動して貰い泣きした。

 
 今日もまた依頼者の二人がやってきた。
「朝倉です。どんなケーキをご希望ですか?」
「あたしたちは無類のプリン好きなの」
「プリン命なので、どでかいプリンケーキを作って欲しいんだ」
「テレビで見たんだけどバケツプリンっての。でもね、あたしたちはもっともっとでか〜〜〜いプリンで挙式したいんだ」
「ギネスものプリン、しかも味も超抜群ってのでお願いしま〜す」
 口を揃えて頼まれてしまった。だけどプリンって崩れるからどうなるだろう……不安がよぎる。だけど私はウエディングケーキ請負人、どんな依頼にも応えるのが信条だ。すぐさま答える。

「了解しました、夢のプリンケーキをプロデュースいたします。朝倉真帆頑張ります」
 さてさてどうなることやら、でも遣り甲斐のあるお仕事だ。

「みなさん、一生一度ですから、思い出に残る夢の挙式を叶えてみませんか。ぜひこの朝倉真帆にウエディングケーキのプロデュースをご用命ください」


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このストーリーに関するコメント

12/06/12 そらの珊瑚

ひと昔前に流行った、はりぼてのウェディングケーキより、どれも想い出に残るものになったでしょうね。

特にうどんケーキのカップルは、その後の結婚生活も地に足をつけて歩んでいける気がしました。

12/06/12 泡沫恋歌

拝読しました。

みんなで脚で踏んづけて作る「うどんウェデイングケーキ」の発想は
とっても面白かった。
こういうユニークなウェデイングケーキなら一生の思い出になりますよね。

12/06/13 智宇純子

うどんのケーキ、面白い!
次はどんなケーキが登場し、どんなドラマが生まれるのでしょう。シリーズ化していただきたい♪

12/06/19 草愛やし美

そらの珊瑚さま
コメントをありがとうございます。

大きな張りぼてのウエディングケーキとは知らないで、式の当日その事実を知って驚いたのは私です。ケーキカットの時になって初めて細工された一部分だけが本物だと知りました。おかしくて厳粛なケーキカットに笑い転げそうになるのを抑えるのに必死でした。

そんな懐かしいことを思い出しながら、お話を書いてみました。

12/06/19 草愛やし美

泡沫恋歌さま
お読みくださってありがとうございます。

うどん作りって手間がかかるようです。みんなで手間暇かけて結婚式をするって素敵かなぁと考えて書きました。麺のように腰がある生活はいいでしょうが、伸びすぎないように注意して暮らしていこうって意味合いもあるようです(笑)

12/06/19 草愛やし美

ポリさま
コメントをありがとうございます。

うどんのケーキの次は……? いろいろ出てきそうですね。ポリさんでしたら、どんなケーキがよろしいでしょうか、ご希望ございましたら、ぜひ朝倉真帆までお知らせくださいねぇ〜よろしくお願いします。

13/09/15 yumesamurai

とても素敵な物語です。うどんケーキを作る「ハート型の桶」を作るのが難しいと思いました。園児たちが愉しんでいる中に、私も一緒にいる光景を見ることができた。そして、プリンケーキも、どこまで大きく作ることが出来るのか、夢が膨らむ、素敵な物語ですね‼

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