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草愛やし美さん

時空文学コンテスト開催100回、おめでとうございます。思えば、初めて私が、こちらに投稿したのは2012年5月のこと、もう4年近く経ったのですね。時空モノガタリさまが、創作の場を与えてくださったお陰で楽しい時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 また、拙い私の作品を読んでくださった方々に感謝しております。 やし美というのは本名です、母がつけてくれた名前、生まれた時にラジオから流れていた、島崎藤村作詞の「椰子の実」にちなんで……大好きな名前です。ツイッター:草藍やし美、https://twitter.com/cocosouai 

性別 女性
将来の夢 いっぱい食べて飲んでも痩せているっての、いいだろうなあ〜〜
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十五年分の幸せ

14/05/19 コンテスト(テーマ):第五十六回 時空モノガタリ文学賞【 結婚 】 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:1130

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「母さん、元気?」
「おお、久しぶりやね、元気よ。和はどう?」
「話があって……実は、結婚したい人ができたんだ」
「ええ! ほんと、アラフォーでついにゲットだ、おめでとう。で、どんな人?」
「それが……」
「何、言い難いことあるの」 
「年上の人なんだ。十五歳……」
「えっ!」
 急な話に驚いて小夜は受話器を落としそうになった。今、流行りの年上妻が自分の身に現実になる話だ。
「ごめんね母さん子供は無理だと思う、孫なしでも許してくれる?ごめん、迷惑かけて」
「迷惑なんて思ってないよ、母さんは、孫はどっちでもよいと思ってたから気にしなくていいよ。和が好きな人なら、どんな人でも、たとえ、八十、九十歳でも構わないよ。和の人生はお前自身のもの、自分が納得していればいいのよ」
 少し笑い合った後、和は弾む声になった。
「ありがとう、俺、母さんの子で良かった。けど、父さんは怒るだろうなあ」
「父さんには母さんから話しておくけど、和からもちゃんと報告しなさいよ」
「了解、今から携帯かけるよ。そのうち、彼女、連れて帰るから会って下さい」
「うん、わかった、待ってるから。体に気を付けて仕事頑張りなさいね」
「じゃまた」
 和の相手の彩は初婚で五十三歳。独身なのは、ずっと、病弱な母親を看てきたからだ。母一人子一人、母子家庭で苦労して娘さんを育てた母親は、娘が看護師になってすぐに倒れた。介護が必要になった母を抱え、彩は、生活を支えるため看護師を続けてきた。介護士をしている和と知り合ったのは二年前のこと。気があってよく話す仲になっていたが、和が正式な交際を申し込んだ時、彩は断った。
「こんなおばさんの私より、君に相応しいお嬢さんがいるはずと思うよ」
「いや、僕には、あなたしか考えられない。どうか付き合ってください」
 看護長である彼女の下で働いている。職場ではきちんと身分をわきまえて接していたが、好きだということをはっきり伝えたのだ。
 ◇
 隆夫は面食らっていた。妻と十歳しか年の違わない女が今日、自分の家に挨拶にやって来るというのだ。ずっと、反対してきた手前、家にいたくなく。急遽出張が入ったことにして日曜だというのに早朝に家を出た。
「また、休日に仕事だなんて、明日ならよかったのに。ねえ、お父さん」
 妻の小夜は残念そうにしながら、隆夫の真意を読み取っていた。
「帰宅したら、私から報告しますね、いってらっしゃい」
 無理を押しての仕事。新幹線の中、いつものようには眠れない。正直、折れたよと何度も言おうとしたができなかった。初めに「よりによってなんで十五も年上を、世間体が悪い」と発してしまったからだ。妻は呆れた顔をして「何言ってるの、私もあなたより三歳年上よ。金の草鞋で探した嫁ってプロポーズしてくれたの、今でも忘れてませんよ。嬉しかったわ、あの時の言葉」隆夫が一番苦手な言葉で妻は迫った。
 ◇
 無造作にダイニングテーブルの上に、スナップ写真が置かれている。隆夫はちらっと視線を落としたが、素知らぬ顔でドカッと椅子に座った。朝刊を広げたが、株価の数字を追う視線が、自然と写真に向かう。幸せそうな息子の横に並ぶ花嫁も笑顔だ。質素な式で花嫁はベールこそ被っているが白いワンピース姿だ。隆夫は、昨夜、聞いてない振りをしながら、妻と妹、美貴の電話の会話に聴き耳を立てていた。
「いいお式だったよ、質素だけど手作り感満載でね、美貴さんにも出て戴きたかったわ。怪我の具合はどう?そうなの、まだ痛むの大変ねえ。ベールありがとうね、嫁になった彩さん、凄く喜んでいたわ。ああ、そうなの、電話あったのね。やっぱ、しっかりしているでしょ。とってもいい人、和は幸せだと思う。ありがとう、お陰で白いワンピースがウエディングドレスに見えたって、あちらのお母様がおっしゃって、お母さま、車椅子だったけど、何とか出席できて、親孝行ってああいうのをいうのだろうねってしみじみ思ったわ。うん、親しい者だけのお式だけど、全員二人を応援したいって人ばかりでしょ、そうなの、だから最後は、お友達の制作したDVDに感動してみなで泣いちゃって。でもね、最近の化粧品はいいよ、目がパンダにならなくってさ、ハハハ、昔はね隈取なったよね……」
 美貴は実妹だが自分よりも妻と仲が良い。隆夫は二人から頭が古いと諭されたが、ガンとして譲らず、ついに息子の結婚式に出席しなかった。意地を通したのだ。だけど落した目線の先の写真に、席者たちの笑顔の花が咲いているのを見て、和んでいる自分にふと笑いが毀れた。人を和ませる子にと自分がつけた名前通りのよい式をやったようだと嬉しくなった。そして、頑なに反対して出席せずじまいに終わった結婚式のことに思いを馳せ後悔していた。
 隆夫は今、昨日までの自分と僅かずつだが確実に変わっていく自分を感じていた。


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このストーリーに関するコメント

14/05/20 鮎風 遊

良い結婚でしたね。
十五年分だからいっそう取り戻さないと。

これから隆夫さんも意地張らず、一所懸命サポートすることでしょう。
心暖まるお話しでした。


14/05/20 泡沫恋歌

草藍 様、拝読しました。

とても良い話ですね。
最近は本人同士が愛し合っていれば、年の差なんて関係ない時代ですよ。

結婚は縁の問題だし、夫婦は他人には分からない相性があります。

手作りの心温まる結婚式は良いですね。

このご夫婦に幸多かれ!!

14/05/20 クナリ

結婚は当人同士の意志…などと言われていても(言われてないかもしれませんが)、そこにはさまざまな人々の思いが錯綜しますね。
気遣い、遠慮、恩、これから先への思い…
まず、お母さんは本当に「孫はどっちでもよい」と思っていたのかなあ…などというところからして勘繰ってしまいながら読みました(^^;)。
お父さんは欠席したことをこれからずっと後悔し続けるかもしれませんが(^^;)、それも含めて、家族として続いていく人間模様、ですよね。

14/05/20 クナリ

連続すみません。
プロフィル画像のケーキ、めちゃめちゃかわいいです!

14/05/20 滝沢朱音

草藍さん、こんばんは。読ませていただきました〜♪♪

あ〜、隆夫さんみたいなお父さん、いらっしゃいますよね〜笑
世間体とか、息子さんの将来を案じてとか、一度反対してしまった意地とか。。。
お父さんの後悔も入り混じる複雑な心境が切なくて、共感してしまいました。

そして、いろいろなことを考えて、
あえて白いワンピース姿で式をあげた彩さんの気持ちにも、ウルウルしてしまいました。゚(゚´Д`゚)゚。

14/05/20 そらの珊瑚

草藍さん、拝読しました。

私の友達も13歳だったかな、かなり年下の彼と結婚し、もう十年くらいになりますが、今も幸せそうです。
これが男女逆だったら、お父さんは反対したかなあと思いました。
やはりどうしても孫とかのこと考えてしまうのは仕方ないことです。
でも結婚して幸せになることで、きっとお父さんも応援してくれることだと思いました。
究極、親は子が幸せでさえあったらいい生き物ですから。

14/05/21 笹峰霧子

とても良いお話しでした。
お母さんが全面的に賛成してくれたのが何よりの救いですね。
15歳の年の差など年をとったらなんてことありません。

14/05/29 ドーナツ

拝読しました。

こういうお父さん いますいます(^^

スッゴイ身近に感じてしまいました。

自分の素直な気持ちより意地のほうが勝っちゃうんでしょうね。かわいいお父さんなのかもしれないと最近は思います。

結婚は、家族が絡んでくるから 難しいね。それぞれの思惑もあるし。

でも、このお二人の幸せを願っています。

14/06/04 草愛やし美

>鮎風遊様、コメントありがとうございます。

そなんです、十五年分を取り戻して、だからこそたくさんの幸せを持って欲しいのです。

知り合いに年上の奥様という人がおります。十七歳上の方と結婚となった時、当人通しより以上に、周りの方の心配があったそうです。奥さまのお身内の方、兄にあたる方は、やめておくようにとまで言ってくださったとか……。君が50歳になった時、妹は77歳、八十前の奥さんでも良いのかと。ですが、愛が勝ち結婚されたそうですね。私は、本人が良ければいいのではという意見です。

>泡沫恋歌様、お読みくださって感謝です。

世間はいろいろですが、ある意味、いい時代になったのだと考えています。年齢が見合っていても、すぐに離婚なんてことになるくらいなら、しっかり相性があっての人が良いと思います。コメントありがとうございました。

>クナリ様、お立ち寄りいただき、コメント大変嬉しいです。

どんどん勘ぐってくださいな、笑。普通は、そうですよねえ、でも、案外、身近な人にこういう考えの人もいるかもですよ。アラフォーはまだしも、一生独身という方も増えているご時世ですから、もう相手さえできればという……、いやそうじゃないでしょう、それをいっちゃあお終いかあ。苦笑

プロフの写真にお目を止めていただき嬉しいです。可愛いですよね、実際、売っておられるお店より借りて参りました。私も、こういうケーキいいなあと思います。手作りもできそうな……、あっ、私には無理ですけどね。すみません、(_ _(--;(_ _(--; ペコペコ 本格的にケーキなんて作ったことないないのずぼら主婦です。せいぜい、ホットケーキの素でケーキ焼きホイップ飾るくらいかなあと。大汗

>滝沢朱音様、いつもお読みいただき励みになります、コメント嬉しいです、ありがとうございます。

お父さんなりに夢を持っておられたのかもしれませんね、それとも、照れくさくてうまく言えなかったのかもでしょうか。男親って結構やっかいなものかと思いますね。苦笑

>そらの珊瑚様、コメントありがとうございます。

そうなんです、これが逆転しているパターンだと大喝采なのです。「よくやった我が息子」と絶対なりますよね。お父さんの場合、自分が変わってでもと言い出しそうな。苦笑 男尊女卑というか、いまだにその考えは生きていると思います。まあ、あまり年下すぎると、これまた問題になりますけどねえ。なんで、年齢でと思いますが、子供に関しては、制限されるので仕方ないのかと悲しくなります。里子でもと言いますが、なかなかそこは難しいもののようです。我が子が欲しいという人も今は減ってきていますが、国の繁栄はやはり子供の数が減ると減退すると言われていますので、複雑な思いもありますね。

>笹峰霧子様、コメントをありがとうございます。

年を経ると年の差は感じなくなりますよね、確かに。70歳でも今や若いと言われる時代、長生きするのですから、好きな人と過ごすことが楽しい人生には、とても大事なことかと思います。

>ドーナツ様、お忙しい中、お読みいただき感謝しております。

まだまだ結婚は、当人だけのことでない部分ありますよね。お互い、全く知らないお家通しが親戚として付き合っていくことになるのですから、周りもウンチク垂れまくると思います。結婚は最終的に、当人の問題だと思うのですが、そこがややこしい。
こういう頑固で照れ屋の男親さんおられますよね。親御さんも、もともと男の方は、子供さんとの間に距離があるのでこうなるのかもしれませんね。遠慮なくどんどん意見を言い合えばいいのだと思うのですが……、できれば、苦労しませんかあ。苦笑 コメントありがとうございました。

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