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浅月庵さん

笑えるでも泣けるでも考えさせられるでも何でもいいから、面白い小説を書きたい。

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ゲームマスター北見

14/04/28 コンテスト(テーマ): 第二十九回 【 自由投稿スペース 】  コメント:0件 浅月庵 閲覧数:836

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 35,000フィートを飛ぶこの機体は、5人のハイジャック犯によって占拠されている。
 現在、勝負カウントは352対0。今、クラヴァー紋別と名乗る目の前の黒づくめの男に捉えられている機長が最後の人質だ。
「ゲームマスター北見よ、お前と勝負できて本当に楽しかったよ。どんなジャンルの、いかなるゲームにおいても、お前は裏技を使う。ふふ、本当に面白い男だよ」
「俺はゲームと一緒に育って来た。息をするのと同じようにゲームをしたし、夢の中でもゲームをしていた。それこそジャンケンからテレビゲームまで、なんでもだ。そんな俺にぬかりなどない」
「はははっ、さすがだよ、ゲームマスター北見。それじゃあ、最後のゲームといこうか」クラヴァー紋別は機長の背中を強く押し、床に倒す。ほかの黒づくめの連中がサブマシンガンを機長へ向け、身動きの取れないようにする。俺が負けたらこの機長は蜂の巣というわけだ。

「最後のゲームはなんだ?」
「あー、最後はだな、限定あっち向いてホイだ」
「ルールは?」
「ルールは簡単さ。従来のあっち向いてホイと何ら変わりないのだが、ただ一つ、右と左しか向いちゃいけないというルールを追加させてもらう」クラヴァー紋別は指を右、左と動かす。
「普通のあっち向いてホイなら、4方向選択肢があるけど、今回は2分の1の確率というわけか」
「そうさ。かなり厳しいルールだろう。一回のジャンケンで、一瞬にして勝敗が決まる可能性が、非常に高い」
「......そうだな。これはかなりハイリスクなゲームだ」
「もちろん、反則したら負けだ。その瞬間、この機長さんは、パラララ、と撃たれて跡形もなく死んじゃう」
「ひーーーっ! 助けてくれぇぇえええっ!!」機長はその場で頭を抱え込み、必死に助けを請う。
「ふふ、機長さん。大丈夫ですよ」
「ほぉー? なんだ、まさかこのゲームにもあるというのか?」クラヴァー紋別は嫌みたらしく聞く。
「そうさ、その通りさ」
「なんだと」
「このゲームには、裏技がある」
「な、なんだって?」「おいおい、マジかよ」他の黒づくめの男が揃いも揃ってざわつき始める。どこかニヤニヤした表情を浮かべながら。
「さすが北見さんだね、恐れいったよ。まさかこのゲームで裏技を使い、本気で勝ちにくるとはね」
「当たり前だろ。俺は何が何でも最後の一人を救う」
「かっこいいねー! さぁ、泣いても笑っても最後のゲームだ。そろそろ始めようか」クラヴァー紋別は銃を背中に回し、首を鳴らす。まるで、これからか弱い子羊を一捻りするかのような余裕の行動。
「いつでもいいぜ、準備は整ってる」俺は右手を腰の位置に持って来て、いつでも手を出せる状況を作る。

「いくぜ、最初はグー、ジャンケン......」
「ホッ!」俺とクラヴァー紋別の勝負が始まる。最初に出した手は俺がグーでクラブヴァーがチョキだ。「あっち向いてホイッ!」
 俺は勢い良く人差し指を右に向けるも、クラヴァーは逆の方向を向く。俺は2分の1の確率をまんまと外す。黒いマスクであまり表情の窺えないクラヴァーの目が、笑っているような気がする。もう油断してられない。
「最初はグー、ジャンケンホッ! あいこでホッ!」次の勝負。俺の手はグーで、クラヴァーはパー。ヤバい、クラヴァーの攻撃がくる。
「あっち向いてホイっ!」クラブァーの人差し指は右を向く。もうおちおちしてられない、裏技を使うしかないようだ。俺の向く方向は......
「上だぁぁあああっ!」俺は勢い良く顏を上げ、天を向く。これだ、俺の裏技は。右、左しか許されていない状況で、絶対的安全策の上を選んだ。誰にも真似の出来ない、俺しか思いつかない最強の裏技。どうだ、クラヴァー、度肝抜かれただろう。

 その瞬間、乾いた音がパラララと機内に鳴り響き、機長はしっかり蜂の巣になって死んだ。
「だーかーらーゲームマスター北見ちゃん。それも反則だっつーの。それも一個前の勝負も一番最初の勝負も、裏技じゃなくて全部反則です。反則負けです」
 これで機内には、もう1人死体が増えたというわけだ。ゲームカウントは353対0。
 どうやら勝負は俺の完敗で、多分その内カウントは、354対0になるだろう。


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