1. トップページ
  2. この雨の中で

FRIDAYさん

こんにちは。FRIDAYといいます。 ときどきどこかのコンテストに投稿しようと思います。 興味と時間が許すなら、どうぞお立ち寄り下さいませ。   “小説家になろう”でも遊んでいます。宜しければそちらにも御足労いただけると嬉しく思います。 http://mypage.syosetu.com/321183/

性別 男性
将来の夢
座右の銘 「なるようになる」 「まだ大丈夫」

投稿済みの作品

0

この雨の中で

14/04/19 コンテスト(テーマ):第五十四回 時空モノガタリ文学賞【 激しい雨がふる 】 コメント:0件 FRIDAY 閲覧数:988

この作品を評価する

 空は、多少の雲はあるけれど、まあ晴れと言ってもいい天気だった。
 それなのに、雨が降っていた。
 天気雨、という奴だ。
 しかも、これがなかなか強かった。
 全身に浴びる雫が、痛い。
 せっかく昨日の夜から気合いを入れて選んだ服が台無しだ。
 セットした髪も見る影もなく崩れてしまっている。
 化粧も大方落ちてしまっているだろう。
 それどころか、まあいろいろと酷い顔になっているだろうな。


 それでも、私は雨の中に立っていた。
 全身に浴びていた。


 にわか雨、天気雨。
 不意に雨は降ってきた。
 でも、別に逃げる暇がなかったわけじゃない。雨宿りに使える場所は周りにいくらでもあったし、実際にそこで今雨を凌いでいる人たちもたくさんいる。


 それでも、私はそのままここに立っていた。
 何となく、雨を浴びたくなったんだ。


 すぐに後悔したけれど。
 全身隈なく水浸しだ。アパートまではまだ結構距離があるし、明日には風邪をひいているかもしれない。
 身体に張り付いた服が気持ち悪い。髪も頬にべったりくっついていて邪魔くさい。


 それでも、もう少しこうしていたかった。


 どうして、こうなっちゃったんだろう。
 考えたって、しかたないんだけれど。
 つい数十分前の、舞い上がっていた自分が莫迦みたいだ。昨日のハイテンションだった自分をひっぱたいてやりたい。
 そんなこと言ったって、もうどうにもならないんだけれど。
 どこで間違えたんだろう、って考え出すとキリがない。まるで全部が全部間違えてしまっていたようにも思える。
 ………さっきまでは、全部が全部幸せな思い出だったのにね。
 不思議なものだ。
 まるで全部嘘だったみたいだ。
 悪い夢でも見ていたみたいだ。
 雨音が、他の全ての音を塗り潰している。
 自分の息遣いの音すらも聞こえない。
 音に支配された、無音。
 頬を、顎を、雫が伝い、落ちる。
 私の、今日までの何かはもう、終わってしまった。
 けれど。
 私の人生は、まだ終わらない。
 だから。
 だけど。


 せめてもう少し、このまま。


 短い雨で、私の抱えてしまった何ものも、洗い流すことなんてとてもじゃないけどできそうにない。
 それでも。
 もう少しだけ。


 雨が止んだら、また歩き出すから。
 きっと笑ってみせるから。
 がんばるから。
 だから。


 もう少しだけ、このままでいさせてください。


 空を、見上げる。
 光と雨を一緒に降り注ぐ空を。
 瞳を閉じる。
 頬を冷たい雫が打ち、瞼を柔らかな光が透かす。


 この雨が止む頃には。


 






コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン

ピックアップ作品