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Aミさん

ど素人です。山と動物と草木が好きです。朝顔を愛しています。生き物好きをこじらせてバイオテクノロジーなど学んでいました。文鳥とメダカ飼ってます。この秋にネコを拾ったので飼いはじめました。

性別 女性
将来の夢 動物保護活動のスポンサーになれるくらいの金持ちになりたい。
座右の銘 技術は見て盗め(とあるバイオ技術者から教わった、受け身では何も身に付かないという教訓)

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狐の娘の天気雨

12/06/09 コンテスト(テーマ):第七回【 結婚 】 コメント:0件 Aミ 閲覧数:1652

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うら若いあかね狐は山鳩に化けて、壮麗なチャペルで執り行われている豪華な結婚式を憧れの眼差しで見ていた。
 (すてき!妾もあのように美しく祀り上げられてみたい!)
あかね狐は考えた。
あのチャペルと同じ十字架の教会の人間に求婚すれば、あの結婚式ができるだろうと。
そこで、巣穴のある小高い丘からいつも見えている小さな教会を訪ねることにした。あそこには若い牧師がいるから、彼を誘惑しよう。
あかね狐は自らの毛皮と同じ鮮やかな赤毛の美女に化けて、はやる心のままに教会へ急いだ。

葉子は、親族の都合だけで決まった結婚を忌々しく思いながらも、渋々とその準備を進めていた。
(ぜんぶ台無しにする方法はないかしら…)
葉子は相談してみることにした。
葉子の通う教会の副牧師は、若いが聡明で信頼できる人物だった。彼ならば妙案を授けてくれるかもしれない。一縷の望みを抱いて、葉子は教会への道を辿った。


リーン、ゴーン。
祝福の鐘が打ち鳴らされ、花嫁と花婿に薔薇の花びらが降りそそぐ。
人々の祝いの言葉、笑顔、拍手と指笛、白い鳩とピンクの風船が一斉に空へ…
記念撮影が終わり、いよいよブーケが投げられる。
花嫁が一同に背を向け、女性の参列者は幸運を掴もうと前へ詰めかける。
しかし花嫁は、優雅に振りかぶったそれを、地面に投げつけた。
グチャという音が、妙にはっきりと辺りに響いた。
「う、うあぁぁぁーー!」
唖然とする参列者の耳を、新郎の絶叫がつん割く。
鋭い牙で、新郎の左手ごと指輪を食い千切った花嫁は、純白のドレスを血に染めてニタリと邪悪に笑った。
激痛にのたうつ新郎、突然のショッキングな出来事に凍りつく参列者。
花嫁は狐火を纏ってそれらを冷ややかに見やると、ふわりと宙を踏み、森へと姿を消した。
ポツポツと雨が降りはじめ、雨粒に打たれた人々は正気を取り戻した。新郎の左手に怪我はなかった。ただ、誓いの指輪だけが消えていた。


小さな教会の若い副牧師は、求婚にきた妖艶な美女の正体を篤い信仰心でもってすぐに見破った。それでも生真面目にあかね狐の話を聞くと、相談にきていた葉子とあかね狐を引き合わせ、両者の願いをいっぺんに叶えるべく働いたのだった。
「牧師さん、葉子さん、ありがとう!ああ楽しかったー」
葉子に化けて結婚式を堪能し、すっかりご満悦のあかね狐は、お礼にと二人に稲荷神の加護を約束した。これで葉子はどこへ逃げてもそれなりの幸運に恵まれるだろう。葉子は涙を浮かべて何度もお礼をいった。
一方の若い副牧師は、
「稲荷神など土着の邪神。そのような申し出は受けられません」とキッパリと断ると、しかし、と目元に笑みを浮かべてこう続けた。「しかし胸のすく出来事ではありました。お礼ならこちらが言いたいほどだ。もしよろしければまたいつでも遊びにきてください。いなり寿司を作って待っていましょう。」

その後、あかね狐が教会に遊びに行く際には、先触れとして天気雨を降らせるようになった。信じる神が違うため、あかね狐が天気雨に秘めた牧師への恋心が報われることはついになかったが、あかね狐は、野狐としての寿命を全うするまで牧師のよき友であり続けた。


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