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浅月庵さん

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“イケニエ”ゲーム

14/04/09 コンテスト(テーマ):第五十五回 時空モノガタリ文学賞【 予感 】 コメント:2件 浅月庵 閲覧数:1076

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 皆の机の上に紙が置かれる。
「おい、美幸。お前、一人だけずっとルール違反してねぇか?」黒板の前に立つ桂木の口から私の名前が挙がる。
「ルール違反?」「お前は“イケニエ”のことイジメないで庇ってばっかだし。投票の時、いつも白紙が一枚だけ入ってるけど、あれ、お前だろ?」

 私たちのクラスでは毎週金曜日、投票で“イケニエ”を決める。これはクラスの不良である桂木が考案したもので、誰も桂木に逆らうことはできない。友だちの早瀬と宮下でさえだ。
「桂木、なんか最近つまんなくね?」早瀬が流れを断ち切るように呟く。「あ?」桂木は私の一件も相まって、少々キレ気味だ。
「俺も同じこと思ってた!」お調子者の宮下も早瀬の言葉に乗っかる。
「なに言ってんだよ。俺の考えたゲームにケチつけんのか!?」
「勝手に盛り上がってる亮だけだろ?」早瀬は冷静に言う。

 暫しの沈黙。その後に桂木が高笑いし始める。
「なにがおかしいんだよ」宮下が険しい表情で問う。
「あー、そっか! そういうことね」桂木は笑いを堪えながら宮下の肩に手を置く。「そういえばお前って、美幸のこと好きなんだっけ」桂木のその一言でクラスが騒がしくなる。え? 宮下が私のこと好き?
「お前ふざけんなよ!」桂木はなおも畳み掛ける。「お前は美幸ちゃんが“イケニエ”になって、みんなからイジメられるの阻止したいんだろ?」「......」桂木の様子に早瀬も溜め息をつく。
「宮下の大好きな美幸ちゃん! みんな喜んでゲームに参加してんのに、お前が余計なことばっかするからつまんねぇんだよ! なぁ、そうだよな?」桂木が皆に問いかけると、小さく頷いている。

 もう確信した。次に“イケニエ”に選ばれるのはこの私。私はずっと皆に言い続けていた。こんな馬鹿げたゲームやめようって。でも、結局ゲームは終わらないし、誰も守れず“イケニエ”はバトンタッチしていった。
「あんた、本当に最低ね」私は拳を握りしめる。
「ぎゃはは! どんだけ吠えたって、ゲームの結果が全てだからな。さぁ、投票を始めようか」桂木がそう言うと皆が席を立つ。

 投票が終わると、桂木が独裁者のように、来週の“イケニエ”は誰かなー、なんて笑う。
「私だ......」自然と情けない言葉が漏れる。
「さぁ、まず一票目の開封だー!!」そう言って桂木は箱の中から一枚紙を取り出す。「えーと? 桂木......亮?」自らの名前を読み上げる。宮下は黒板に桂木亮と書き、正の字の一本目を刻む。「美幸、これはお前の一票だな? せめてもの反抗か」
「......」私は何も言わない。
「まぁ、いい。次は......桂木亮?」正の字二本目追加。三枚、四枚、五枚六枚、開いても開いても書かれている文字は桂木亮の名前ばかり。私じゃなくて桂木亮?
「はぁー? てめぇら、ふざけんじゃねぇよ!!」桂木は教卓を蹴りつける。
「あのさぁ.....」逆上する桂木を制止する早瀬。「お前は他人の痛みと宮下の気持ちを考えなさすぎ」
「......てめー! 逆らう気か!?」桂木が早瀬を殴ろうとするので、私は立ち上がる。
「だからさ、ずっと言ってるじゃん。こんな馬鹿げたゲームやめようって! 悪趣味すぎるよ」私は立ち上がり、泣きながら叫ぶ。
「美幸はさ、お前にどんだけボロクソ言われても、こういう答えを出してんだよ」早瀬は一枚の投票用紙を取り出し、桂木に見せる。白紙の一枚を。
 私は皆の桂木亮への投票から、このゲームの終焉を感じた。これで全て終わる......。

 すると、隣りの席の神田くんが立ち上がり、言う。「ゲームの結果が全てなんだろう?」
 私はその言葉の意味を理解できない。
 続いて後ろの席の林さんも立ち上がる。「じゃあ、つぎの“イケニエ”は桂木くんだね」笑顔。
 「ちょっと、みんな何言ってるの?」私はみんなの態度が信じられなくて、何度も確認する。
 それでも、来週は楽しみだなー、なんて笑いながらみんな背を向けて教室から出ていく。取り残される私たち。

 翌週は悲惨だった。今まで桂木のせいでイジメを受けていた元“イケニエ”たちが寄って集って桂木イジメを始める。いくら桂木でも二十数人に囲まれるのでは対抗する術はないようだった。

 校舎裏。桂木が歩いている。ボロボロになった桂木に向け、空から大量の水が降ってくる。屋上から聞こえる笑い声。
 そんな桂木と私は目が合う。これで“イケニエ”ゲームにも凝りたかな、なんて思うけど、桂木の目は死んでいない。むしろ今の最悪な状況を楽しんでいるかのようだ。獣のような眼光が私を捉える。

 桂木は今回受けた仕打ちを、ただでは終わらせない。
 近い内に大変なことが起こる、そんな予感を私は感じ取った。
 ......そしてその予感は、すぐに確信へと変わっていったのであった。


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このストーリーに関するコメント

14/04/10 浅月庵

長月五郎様
コメントありがとうございます。

手垢に塗れた題材を新しい視点で
切り込むには内容が未熟すぎました。
今度はもう少し揉んでから書きたいと思います。

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