1. トップページ
  2. 晴れた日には永遠が見える

サンジェルマンさん

見て聞いて感じた事を言葉でつなぐ活動をしてます。

性別 男性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

0

晴れた日には永遠が見える

14/04/04 コンテスト(テーマ):第五十三回 時空モノガタリ文学賞【 太陽のせい 】 コメント:2件 サンジェルマン 閲覧数:716

この作品を評価する

 病院から出てくると、彼女の首筋に影がなくなった。
セスは車椅子に乗る彼女をいつも後ろから眺めていた。
彼女の後姿のことなら、誰よりも知っていた。
セスはその背中に翼をつけてやりたいと、いつも願っていた。
彼は翼のつけ方を知らなかったが、翼がつけられることは知っていた。
『ジニー、気分はどうだい?』と車椅子を押しながらセスは聞いた。
『あの医者は嘘をついている』ジニーは押される車椅子の上で答えた。
『だって、私の身体のことは、私が一番わかるし、3ヵ月後に退院できるなら、
 もっと昔に、こんなどこを見ても白い建物から逃出しているよ』
ジニーは空を見上げた。彼女の首筋に影ができた。
セスとジニーが出会ったのは、太陽が手を伸ばしても届かない夜の街だった。

 セスはクラブでは有名な色男で、優雅な身なりと、
耽美な言葉で毎晩のように女を引き寄せては抱いていた。
つまらない女たちだった。
いつものように、クラブで注目されていると、
セスは気分が悪くなりテラスへ出て行った。
三十九階から見える街の摩天楼に違和感があった。
すぐにセスは分かった。いつもの摩天楼の前に、ジニーが立っていたのだ。
セスが初めて見たジニーは、黒いドレスを着ていた。
セスは彼女に声をかけた。いつもつまらない女達にかける様な言葉で。
『お嬢さん、よかったら君と飲みたいんだが、一杯おごらせてくれるかい』
『お兄さん、私はお酒飲めないの。奢ってくれるならオレンジジュースにしてもらっていいかしら?』
『いいね、僕もオレンジジュースが飲みたかったところだ。一緒に飲もうじゃないか』
とセスはジニーの声に従った。
テラスで話す二人を他の客が見ている。
誰もがセスの今日の獲物は、彼女だろうと思っていた。
『皆がこっちを見ているわ』ジニーはしゃべり出した。
『きっと彼方は有名人なのね』
『くだらないよ、つまらない奴らが僕を見ているだけだよ、動物園のパンダでもみるようなものさ』
『へー、あなた、パンダなのね』
『そうだよ、ジロジロ見られてばかり。僕のつまらない行動を見て喜んでるのさ』
『パンダってつまらないの?』ジニーは側にあった椅子に腰を下ろした。
『分かりきった生活を、他人が見て面白いと思うのかい?』セスも隣の椅子に座った。『パンダが私の横に座ったのは初めて。話しかけてきたのも初めてだけど。パンダもたまには面白いことするみたいね』とジニーは笑った。
ジニーはそれから色々なことを質問してきた。
セスは彼の知っている狭い世界の話にパンダの話を交えて話した。
二杯目のオレンジジュースを頼みに、セスが席を外して戻ってくると、
ジニーの姿は無かった。セスはクラブ出入り口に走っていくと、
扉から出て行くジニーを見た。
『お嬢さん、帰るのかい?』セスは大きな声で言った。
『パンダさんも自然に帰れるといいわね』
ジニーは手を軽く振ると、自然へと帰っていった。
そして、セスはジニーを探して、夜の世界から、太陽の下で生活することになった。
陽に照らされた場所では、すぐに探し物も見つかった。
ジニーと、ジニーの病気もセスは見つけることになった。

 二人は公園に来ていた。
申し分ない陽射しが注ぎこまれる公園で、整った草が揺れている。
ジニーは車椅子から、立ち上がり一歩だけ前に出た。
セスは手を貸そうとしたが、ジニーは断り一人で立ち上がり前と出た。
『きっとこの先、一人では歩くことも、立ち上がることもできなくなるんだね』
ジニーはもう一歩前にでた。
『セス、私の十九年の人生ってどう思う?意味があったのかな?』
セスは二歩前にでたジニーを追って、二歩前のジニーに並んだ。
『悲しいこと言うね。君らしくない』
『ジニー、意味はあるよ。君が生まれてきたのは僕と会うためだよ』
『月には太陽が必要なんだ。太陽が無いと、月は輝けない』
ジニーと草は揺れた。
『あなたらしいね。でもセス、あなたはパンダでしょ』
『そうだった。檻から脱け出したのを忘れていたよ』
セスとジニーは太陽の下で笑った。
『いい気持ち。こんなに天気がいい日は初めて。なにかしたいわ。今なら何でもできそう』
ジニーは陽気に喋り、セスに微笑んだ。
『そうだね、こんなにいい天気だし何かしたいね』とセスも微笑んだ。
『そうだよ、何かしようよ。セスと一緒なら何でもするよ。セスはなにしたい?』
『なにがしたいか?そうだね、僕はね、ジニー。君と結婚したい』
太陽の陽射しを浴びながらセスの言葉は輝いた。
『そうね、いまから結婚しましょう』
セスがジニーのドレス姿を見たのは二回目だった。今度は白いドレスだった。

 それから5ヵ月後の、晴れた日に、ジニーは大きな翼をひろげて飛立った。
セスは今でも太陽の下で生活している。太陽の陽射しはいつも暖かい。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

14/04/04 浅月庵

サンジェルマンさま
拝読いたしました。

ジニーの境遇は悲しいもののはずなのに、
二人の掛け合いは暖かく、微笑ましいもので
とても良い物語だと思います。

14/04/05 サンジェルマン

浅月庵様

ありがとうございます。

幼い感じを出したかったのですが、
うまくできたような、できなかったようなです。

ログイン
アドセンス