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光石七さん

光石七(みついしなな)です。 子供の頃から空想(妄想?)が好きでした。 2013年から文章化を始めました。 自分では気付かないことも多いので、ダメ出しを頂けるとありがたいです。

性別 女性
将来の夢 可愛いおばあちゃん
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静かなる詩

14/03/30 コンテスト(テーマ):第三回OC 【 廃 】  コメント:10件 光石七 閲覧数:1085

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 カーラは愛する夫の帰りを待っていた。二人で働いて買った町はずれの小さな家を、決して離れようとはしなかった。
「必ず帰ってくるから」
出征する時、彼はこう約束したのだ。孤児だった彼には、他に肉親も家も無い。
(リオンは嘘を吐かないもの。必ずここに帰ってくるわ。この家が無くなったら、リオンはどこに帰ればいいのかしら?)
カーラにとっても家族はリオンだけだ。カーラはリオンの無事を信じ、来る日も来る日も待ち続けた。


 リオンはぎゅうぎゅう詰めだった列車から降りた。駅も人でごった返している。リオンと同じように下車する者、出迎える者、物乞いにかっぱらい。雑踏と喧騒の中、リオンは右足を引きずりながら歩を進めた。身に着けている軍服は汚れて所々破れている。すすにまみれたような顔は、よく見るとあまり血の気が無い。しかし、リオンはそのようなことに頓着していなかった。ようやく戦争が終わって家に戻れるのだ。
(帰ろう……。カーラが待ってる……)
彼の頭の中を占めているのはその思いだけだった。
 本来ならば、リオンはもっと先の駅で降りるはずだった。だが、度重なる空爆で線路も被害を受け、列車は限られた区間しか走っていない。家にたどり着くまで、三日は歩かねばならないだろう。手紙を書く余裕もなかったので、何も知らないカーラは心細い思いをしているかもしれない。
「私、待ってるから。絶対帰ってきてね!」
見送る時、ちぎれそうなほど手を振っていたカーラを思い出す。早く帰って安心させてやらなくては。リオンは逸る気持ちで一歩一歩進んだ。
 いくつもの町や村を通り過ぎる。建物が倒壊していたり、焼け落ちていたり、一角が焼け野原になっていたり、戦争の爪痕が残る場所もある。そういうところは人もまばらで、皆うつろな表情をしていた。しかし、それらの光景は、リオンの目に映りはすれども残りはしなかった。
(カーラ……)
リオンは一心に歩き続けた。
 歩き始めて三日目、日が落ちてからリオンは故郷の町に到着した。フラフラになりながら我が家を目指して夜道を歩く。あと少しだ。昼間なら赤い屋根と白い壁がもう見えているはずだ。
「リオン?」
聞き覚えのある声。リオンは歩みを止めて闇に目を凝らした。ぼんやりした輪郭が、愛しい妻の姿に変わっていく。
「カーラ……!」
リオンはびっこを引きながら家の前に立っている妻に駆け寄り、思いきり抱きしめた。
「……お帰りなさい、リオン」
泣き笑いのような顔で声を絞り出したカーラに、リオンは口づけた。そして二人は肩を寄せ合って家に入った。


 翌日、屋根も壁も半分崩れ落ちた小さな家を朝日が照らした。その中には、しゃれこうべを抱えて横たわるリオンの姿があった。口元には微笑みを浮かべている。その体は冷たく、二度と動くことは無かった。


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このストーリーに関するコメント

14/03/31 泡沫恋歌

光石七 様、拝読しました。

夫の帰りをひたすら待っている妻と苦労の末にやっと戻ってきた夫。
ああ、こんな悲しい結末が・・・。

きっと、世の中が平和だったら幸せに暮らせた夫婦だっただろうと
思うと悲しいですね。

14/03/31 泡沫恋歌

光石七 様、拝読しました。

夫の帰りをひたすら待っている妻と苦労の末にやっと戻ってきた夫。
ああ、こんな悲しい結末が・・・。

きっと、世の中が平和だったら幸せに暮らせた夫婦だっただろうと
思うと悲しいですね。

14/03/31 泡沫恋歌

スイマセン! 何故か二重投稿になってしまいました。

オカシイなあ〜( ̄ー ̄?).....アレレ??

14/03/31 草愛やし美

光石七様、拝読しました。

待っておられたんですね、そして、辿り着いた恋人。それで充分です、どんな形でも逢えてよかったです、これでいいのです、そう呟く私です。

戦争ってほんとう酷いものですね、平和を願わずにはいられません。いいお話をありがとうございました。

14/04/02 タック

光石七さん、ご投稿ありがとうございます。拝読いたしました。

待ち続けたカーラの悲しみ、家路を急いだリオンの焦燥がとてもよく伝わってきました。どんな姿でも、会うことができた。それは一つの幸福なのだと思います。帰るべき家、愛する二人を破壊した戦争というものは、やはりあってはならないものですね。

14/04/02 朔良

光石七さん、こんにちは
拝読いたしました。

そういう状況になっても待ち続けていたんですね。
そういう状態になっても帰りついたのですね。
哀しい結末ですが、二人の深い愛を感じました…。

14/04/02 光石七

>泡沫恋歌さん
コメントありがとうございます。
描写や説明が足りなくて申し訳ない限りですが、二人が互いを想い合っていたことを感じ取ってくださり、うれしく思います。
本当に、平和な世であれば夫婦で幸せに暮らせたことでしょう。

>草藍さん
コメントありがとうございます。
カーラはずっとリオンを待ってました。リオンはカーラにもう一度会うためだけに歩き続けました。
いろいろ不足で稚拙な話になってしまいましたが、心に残るものが少しでもあればうれしいです。

>OHIMEさん
いつもありがとうございます。
カーラとしては変わらない姿を見せたかったでしょうし、リオンにとっては美しいままのカーラだったでしょう。二人とも再会の喜びは大きかったと思います。
もっと美しい描写ができればよかったのですが……orz

>タックさん
拙いながら、オーナーコンテストに参加させていただきました。
構成も描写も不十分ですが、二人の心情をくみ取ってくださりありがとうございます。
二人とも幸せな気持ちのまま眠っていることでしょう。

>朔良さん
コメントありがとうございます。
家や肉体は廃れても二人の愛は変わらない、そういう捉え方もできますね。
拙い文章から感じ取ってくださり、ありがたいです。

14/04/08 そらの珊瑚

光石七さん、拝読しました。

「雨月物語」でもそのようなお話があったなあと思い出しました。(そちらはもうちょっと怖かったと記憶しておりますが)
恋しく思う気持ちは死をも超えた強いものですね。
哀しいですね。
けれどこれからは2人は永遠に一緒。もしかしたら幸せな夫婦なのかもしれません。

14/04/08 光石七

>そらの珊瑚さん
コメントありがとうございます。
『雨月物語』、結構ホラーだったような……
愛は死よりも強い、その通りだと思います。
二人の魂は幸せに安らかに眠っていることでしょう。

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