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坂井Kさん

今年(2014年)は思い付きと勢いだけで書いてきましたが、来年(2015年)は、状況設定をもう少し固めてから書こうかな、と思っています。スティーヴン・キングによると、「状況設定をシッカリとすれば、プロットは無用の長物」らしいですから。

性別 男性
将来の夢 夢というより目標として、来年(2015年)こそ長編小説を書き上げたい。
座右の銘 明日はきっと、いい日になる。

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確かに私が悪いのだけど

14/03/17 コンテスト(テーマ):第五十三回 時空モノガタリ文学賞【 太陽のせい 】 コメント:2件 坂井K 閲覧数:935

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 黄昏時、私は母校、M市立第六中学校へと至る道を歩いている。仕事で近くを訪れた私は、その帰り、久々に中学校を見たくなり、立ち寄ることにしたのだ。中学生の頃、ずっと通い続けたこの道。高校・大学と寮生活を送った私は、中学を卒業して以来、十年以上この道を通っていなかった。

 しばらく見ないうちにかなり風景が変わったものだ。あの頃、この道はまだ砂利道だったし、周囲には田んぼが広がっていた。今では、道はアスファルトで舗装され、田んぼのほとんどは住宅地に変わっている。私は校門から二十メートルほどの所で立ち止まり、夕日に照らされた校舎を、感慨深く眺めた。

 校舎に見入るのをやめ、目の焦点を普通の状態に戻す。と、男子中学生が二人、前から歩いてくるのが目に入ってきた。背の高いガッシリした少年と、気が弱そうなメガネの少年だ。

 二人は楽しそうに話しながら、こちらに近付いてくる。この年代の男子同士の話は、九割方どうでもいい話だ。ゲームの攻略法、昨日観たTVの話、先生や級友のうわさ話や悪口、音楽や映画に関して、そしてごくたまに好きな子について……。

 男子二人の後ろでは、女子三人と男子が一人、仲良さそうに歩いている。この年代の男子で、複数の女子と話せるやつはそういない。彼はイケメンなので、女子の方が放っておかないのかもしれない。女子と話していた少年が、急に走り出した。彼は前の二人に追いつくと、後ろからラリアットをかます。

 怒った顔で振り向き、文句を言う少年たち。しかしその後、三人は何事もなかったように話し出した。私は少し羨ましくなった。今思えば、中学生の頃が一番充実した生活を送っていたのかもしれない。――時が経てば、楽しいことだけが思い出として残るものなのだろうか?

 いや、違う。本当に嫌だったことは、あえて思い出さないようにしているのだ。思い出せば、今でも辛いこともあるから……。私は一瞬目を閉じて、昔のことに思いを馳せた。目を開けると、中学生たちの姿は消えていた。振り返っても、誰もいない。あれは本当に現在の少年たちだったのだろうか?

 そういえば、あの中学生たちの中には、私自身や初恋の人に似た人もいたような気がする。私は今まで何人かの異性と付き合ったが、思えば、その全員に初恋の人の面影があった。(今、あの人はどうしてんのやろ……)私は心の中に封印していたあのときのことを、完全に思い出していた。

 ――私がうわさを広めたのは、「あの人」に「彼女」を諦めさせるためだった。「あいつ」は私があの人を好きだと知っていて、あえて私にあの人が彼女に告白したことを知らせてきたのだ。私はあの人が振られたのを知らされていたが、それでもなお、私はあの人に彼女のことを完全に諦めさせたかった。

 だから、うわさを広めたのだ。その結果、私だけが悪者になった。親友だった彼女には避けられるようになり、好きだったあの人には無視されるようになった。確かに私は愚かだった。が、一番悪いのはあいつだ。それなのに、元凶であるあいつは全てを私のせいにして、すぐに彼女と付き合い始めた。

 結局、私はあいつにいいように利用されたのだ。風のうわさで、あいつは一流企業に入り、将来を嘱望されていると聞いた。多くの人があいつの外面にだまされる。あいつの内面は最悪だというのに……。私はそんなことを考えながら、亀の歩みのようにゆっくりと、校舎に向かって歩き出した。

 校門の前で立ち止まった私は、改めて夕日に照らされた校舎に目を向けた。校舎は、気持ち悪いぐらい綺麗なオレンジ色に染められている。夕日は人を感傷的にさせる。こんなことを考えてしまうのも、全て夕日が悪いのだ。私は全ての責任を夕日になすり付けることに決め、空想上の石を手に取った。

 振りかぶり、夕日に向かって思い切り(エア)石を投げ付ける。ひゅーん。しゅん。どかん。「お姉さん、何してんの?」通り掛かりの小学生が、興味深そうに、だが恐る恐る訊ねてきた。「石を――というても空想上の石やけどね――を、お日様に投げ付けてたんや」「お日様、何か悪いことしたん?」

「してへんよ」「なら、何でそんなことするん?」「思いを受け止めて欲しいから、かな」「お日様は受け止めてくれるん?」「私の石なんか、気にも止めてへんのとちゃうかな」「なんでそう思うん?」「夕日の綺麗な日には、悲しくなったり寂しくなったりする人が多くいて、みんなが石を投げているから」

「僕も投げてみよかな」少年はそう言うと、エア石を握りしめ、思い切り振りかぶった。いい投球フォームだ。ひゅーん。しゅん。どかん。私の石も少年の石も太陽の熱で溶かされて、ドロドロになっているだろう。これからも、嫌な思いは石に込め、全て夕日に投げ付けよう。度量の広い太陽SUNは、笑って許してくれるだろう。


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このストーリーに関するコメント

14/03/17 かめかめ

「あの人」「彼女」「あいつ」なんだか誰が誰だかなにがどれだか頭がぐわんぐわんしてわかりにくかったのです(:;)

14/03/18 坂井K

コメントありがとうございます。
こういった短い小説では固有名詞はあまり出さない方が良いんじゃないかと思いまして、あえて代名詞で表したのですが、そうですか、そんなにややこしく感じましたか…。
今後の参考にしたいと思います。

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