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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
将来の夢 この世で最も面白い物語を見つけ出したい。
座右の銘 Do what you enjoy, enjoy what you do.

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ブラックホール

14/03/15 コンテスト(テーマ):第三回OC 【 廃 】  コメント:14件 鮎風 遊 閲覧数:2050

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 時は西暦2314年、高度35,786kmに浮かぶ静止宇宙ステーションに招待者がやって来た。
 直径1.6kmの巨大なドーナツ型基地、毎分1回転のスピードでぐるぐると回ってる。この遠心力で地上と同じ1.0 Gの疑似重力を創出しているため、誰も違和感を感じない。人たちはその居心地良さを享受し、ホール内で談笑している。
 だが、その一時の寛ぎを割り裂くように、「ただ今より、世紀のロケット発射会を開催いたします」と司会者から呼び掛けがあった。これに応じて、紳士淑女たちがワイングラスを持ったまま一斉に壇上へと視線を移すと、ヨレヨレのスーツ姿の男がマイクの前に立っている。男は頭を軽く下げ、「私は宇宙域官房長官の須賀と申します。本日はお忙しい中、また天候の悪い中、…」とおもむろに語り始める。
 しかし、これを耳にした記者・阿部晋介、あまりにも古典的なフレーズだったのか、一歩後退りをする。それでもウチュ官は臆せず続ける。
「壁1枚向こうは引力も空気抵抗もありません。したがって、ちょっと噴射させてやれば、ロケットは宇宙の果てまで飛んで行ってくれます。つまり、私たちの悩みをやっと払拭できる時が来たのです」
 その通りだ。すなわち無人輸送ロケットのMirai号が6000光年彼方の白鳥座X-1の伴星、ブラックホールへと本日旅立つのだ。もちろん積み荷は原子力発電所から出た放射性廃棄物。

 約300年前、東日本大震災で福島原発は壊滅した。安全神話は崩れ、原発ゼロを目指すこととなった。だが、コストやCO2削減の観点から他エネルギーへの転換はそう簡単ではなかった。
 結果、放射性廃棄物の最終処理方法が確立されないまま、原子力発電所は順次再開されて行った。とどのつまり放射性廃棄物は行き場を失い、日本国土に積み上がってしまったのだ。

 あれから300年、やっと究極のゴミ処分場が見付かった。そう、それは光さえも飲み込んでしまうブラックホール。地球上の放射性廃棄物なんて宇宙レベルで考えれば微々たるもの。そうだ、そこへ捨てれば良いのだ! と人々は目覚めた。
 こうしてプロジェクトが始動し、まず巨大ステーションを宇宙空間に浮かせた。そして地上の放射性廃棄物を安全に移送するため、宇宙エレベーターを地表面から立ち上げ、繋げた。

 ゆるりとホールでのパーティは終わり、いよいよMirai号の発射だ。10、9、8とカウントダウンが進み、遂に3、2、1、ゼロ! ロケットの後尾から赤い炎が噴き出す。さあ、白鳥座のブラックホールへと旅立ちだ。
 この様子を窓から見ていた阿部晋介、感慨深いものがある。そこへ記者仲間の週刊誌・人生いろいろの古泉純子がふらりとやって来た。
「私たちの祖先は原発ゼロと再開で意見が食い違ったようだけど、300年経った今、ブラックホールが最終処分場になるなんて、ご先祖様も驚いてるでしょうね」
 これに、近くにいた月刊誌・乱心の細河熙樹が「300年前に、このプロジェクトの実行を宣言していたら、俺の先祖も殿ご乱心なんて言われなかったかもなあ」と唇を噛む。
「みんな国を思い、必死だったのよ。だからご先祖を恥じることはないわ」
 こう横槍を入れてきたのは生活誌・箸と茶碗の多母神俊子。いつも強気で、一点の曇りもない。この言葉で、阿部晋介も古泉純子も、そして細河熙樹も吹っ切れたのか、笑みが戻る。そして、いつの間にか輪に加わっていたウチュ官の須賀が高らかに、「放射性廃棄物を満載した無人Mirai号が、無事ブラックホールに吸い込まれることを祈念し…」と。その後の言葉を埋めるかのように、全員が「乾杯!」とグラスを高く上げた。

「おいおい、君、これは何なんだよ?」
 ここは首相官邸、国家プロジェクトの提案書『ブラックホールを廃棄物処分場に』、この概要を読んだ総理大臣が目を丸くする。
「実は公募でして」と書類を手渡した官僚に汗が噴き出る。だが、興味を持った首相、「提案者は?」と問うと、官僚は「高見沢一郎っていう貧乏サラリーマンでして…、要は暇なんでしょうね」と素っ気ない。
「しかし、このアイデア捨て難いですね。一度官邸に呼んでもらえませんか?」
 こんな経緯で、ある日、チャチャチャーン、高見沢の着メロが鳴った。首相官邸からだ。
「ご提案、もう少し詳しくお聞きしたいと総理大臣が仰ってます。一度お越しください」
「イエッサー!」 もちろん高見沢に断る理由なんてない。やっと俺も世の中の役に立つ時が来たか、と。

 ここで高見沢は缶ビールをグビグビと。
「こんな、今宵のSF風妄想、ここまでが限度だ、ホント疲れたよ」
 高見沢はよっこらせと立ち上がり、ヨロヨロとシャワーへと向かう。
 その背後には──放射性廃棄物、あなたの提案は?──というフリートークTV番組が放映されていたのだった。


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このストーリーに関するコメント

14/03/16 朔良

鮎風 遊さん、こんばんは。
拝読いたしました。

原発は根深い問題ですよね…。今更電気のない生活はできないけど、特定の地方の方に危険を負わせるのはやはり深刻な問題だと思います。

放射性廃棄物の廃棄場所としてブラックホール! これって面白い発想ですね。荒唐無稽に思えるけど案外良いのでは? 真面目に日本政府に検討してもらいたくなりました。
面白かったです^^

14/03/17 草愛やし美

鮎風遊様、拝読しながらにやにやと笑ってしまいました。あちこちに見知ったお名前が……。そうなんですね、あの末裔様方は、未来社会でも仲良しでいらっしゃって。なんて思っていましたら、オチにきてしまいました。
そうだったのか、高見沢氏、今回は栄誉に輝くかもしれないのですね。夢のような話ですが、これが実現されればと私自身、祈りたいと思いました。

真剣に提案してみては如何なものでしょうか? ねえ、鮎風様(:^^)面白い作品で、楽しませていただきました、ありがとうございました。

14/03/17 泡沫恋歌

鮎風 遊 様、拝読しました。

いや、ホント、まじでブラックホールに放射性廃棄物が捨てられたら
いいのになあーと思いました。

なんだかんだ言っても、今さら電気のない生活や電気代の高騰には
一般庶民は耐えられませんもの。

とっても面白い読み物でした。

14/03/17 タック

鮎風 遊さん、ご投稿ありがとうございます。拝読いたしました。

とても面白いアイディアだと思います。放射性廃棄物の処理方法が明確になっていない現在、原発の再開は問題の先送りに過ぎませんよね。結局、困るのが未来の人々である以上、安全性如何に関わらず原発に安心感を持つことはできません。この作品はその問題点を考えさせてくれるものだったと感じます。

14/03/17 かめかめ

ウチュ官って略すのか!
とそんなところに瞠目してしまいました

14/03/18 鮎風 遊

朔良さん

コメントありがとうございます。

はい、荒唐無稽ですが、こうなれば良いかなと本邦初公開でこのアイデアを紹介させてもらいました。

よろしく。

14/03/18 鮎風 遊

草藍さん

コメントありがとうございます。

時代は巡り、こういうことになれば良いかなと。
高見沢の勝手な妄想でした。

暇なヤツですわ。

14/03/18 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

コメントありがとうございます。

電気代、上がれば困りますよね。
やっぱりこの解決方法しかないかと。

300年待つ必要がありますが。
よろしく。

14/03/18 鮎風 遊

タックさん

コメントありがとうございます。

ちょっと社会的課題を考慮した物語です。
誰しも何とかならないかと思ってることだと思いますが、
ちょっと願いも込めさせてもらいました。

14/03/18 鮎風 遊

かめかめさん

コメントありがとうございます。

そうです、ウチュ官の須賀さんです。
子孫も同じような風貌で、やってはります。

14/03/25 そらの珊瑚

鮎風さん、拝読しました。

そういう手があったのか! 
もしかしたらほんとにいつか現実になるかも、なんて思ってしまいました。
面白かったです。

14/03/27 鮎風 遊

そらの珊瑚さん

コメントありがとうございます。

そうです、そういう手があったのです。
だから人類の未来はブラックホール次第かな。

14/03/31 光石七

拝読しました。
このアイデア、素晴らしいと思うのですが。ぜひ検証していただきたいところです。

14/03/31 鮎風 遊

光石七さん

コメントありがとうございます。

検証の結果、ここへ踏み出すかどうかの決断だけ――となりました。
よろしく。

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