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浅月庵さん

笑えるでも泣けるでも考えさせられるでも何でもいいから、面白い小説を書きたい。

性別 男性
将来の夢  
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キャンディーストップモーション

14/03/12 コンテスト(テーマ): 第二十六回 【 自由投稿スペース 】  コメント:0件 浅月庵 閲覧数:926

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 写真を撮られると魂を抜かれるとかいう話を、昔爺さんにちらっと聞いたことがあって、俺はまだその時小学校低学年でなんでもかんでも無条件に飲む込んじゃう年頃だったから、途中で迷信だと判明してからもなんだかなーっていう気持ちはずっと続いて、未だに俺は写真が苦手だ。小中高も必要最低限以外写真に写らなかったし、思い出なんて記録じゃなくて記憶だし、頭とか心とかにちゃんと残るんだからわざわざ形に残さなくてもいいやと本気で思っていた。
 だから、君が不意に俺の写真をぱしゃっと撮って満面の笑みを見せた時に、あー、やっぱり爺さんの言ってた話は本当だったんだなって迷信が確信に変わったし、君のことをより好きになったし、俺の魂は完全に君に吸い取られて骨抜きにされたんだなって感じる。
 俺がそんな話をすると、君は小さな手に抱えた一眼レフに視線を落とし、あなたの言ってることも一理あるけど、記憶は曖昧だし、薄れるし、嘘で書き換えられるし、その点写真は嘘つかないから、記録に残して後から見返すっていうのも現実味があって素敵じゃない、と笑う。きっと写真を撮った枚数だけ、その時どれだけ楽しかったのか表してると思うし、一場面一場面を大切に残したいんだと思うな、とさらに君は微笑む。
 思えば、今まで写真を撮られるのはもちろんのこと、撮る機会も少なかった俺は、 俺が写真を撮ることによってその撮られた相手がばたんとぶっ倒れちゃったらどうしよう、責任負えないよなんて馬鹿げたことを本気で考えていたんだろうな。
 俺は一眼レフを貸してもらって、君の写真を撮ることにする。君の手より大きい手で抱えるカメラ。その俺の姿が少しでも見映えしていることを願いつつ、シャッターを切る。
 きっと、君が言ってた通り、この一瞬は俺にとって大切に残したい一瞬なんだと思うし、それは君の話を無条件に信じてしまった故の行動だし、これで君のことも骨抜きにできたらいいな、なんて気持ちで夢中になってシャッターを切り続けるけど、やっぱり君は、ばたんと倒れなんかしない。
 結局心を奪われているのは小さなファインダー越しに君を見つめる俺なのだ。


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