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スレイさん

趣味で小説を書き始めた高校生です。 何かを感じたときに、表現する手段が無ければ悲しい。 そう思って少しずつ書き始めました。

性別 男性
将来の夢 世界を旅すること
座右の銘 Let it be

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館の精に呼ばれて

14/03/11 コンテスト(テーマ):第三回OC 【 廃 】  コメント:3件 スレイ 閲覧数:880

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知っていますか?
街外れの森の、ちょっと奥めいたところにあるボロボロの館の不思議な話。
…えっ、興味ないって?
まあ、ちょっとだけ聞いてくださいよ。

実はあの館、時々消えてたんですよ。しかも、多くの子どもたちと一緒にね。もちろん消えた子もみーんな戻ってきてますよ。
戻ってきてから、彼らはみんな口をそろえて言うんです。
ただ「楽しかった」って。そして、それ以外はなんにも喋りません。

…よくある噂だって?それが、これはまんざら嘘でも無いんですよ
なぜなら、私自身がそれを体験したから…。

ちょっとは興味が湧きましたか?
じゃあ、少し聞いてください。



寒い雪の夜のことだった。
子どもの私は古びた小屋の中にいた。
身体が冷えて、そのせいでなかなか寝付けなかったのを覚えている。

私はその頃、親をなくしたばかりで、精神的にも身体的にもとても厳しい状況にあった。
当然子どもが一人で暮らしてゆくのは難しいので、近くの宿屋で雑用をして食べ物や住むところを与えてもらっていた。
しかし食べ物は一日に一回、住むところは狭い小屋だった。
宿屋の主人は厳しい人で、子どもでも遠慮なく働かせた。
といっても所詮は子ども、大したことはできない。ほとんどただで恵んでもらっていたようなものなので、感謝するべきだうまたのだろう。

そういう訳なので、暖をとることもできない私はただ一枚の布にくるまって震えていた。
そんなとき、私はかすかな声を聞いたのだ。女性の声だ。
私はおそるおそる小屋の戸を開けた。
はたしてそこには白く光る玉がプカプカと浮かんでいたのだ。
私は本で読んだ精霊の話を思い出した。
「…ひょっとして、雪の精霊さん?」
「……そうですよ。」
「やっぱり!」
私は目を輝かせた。
「さ、ついてらっしゃい。暖かい部屋を用意してますよ。」
雪の精霊が暖かい部屋?
少し不思議に思ったが、好奇心旺盛な私はすぐにその光の玉についていってしまった。

光の玉は畑を越え、煙を吐く煙突を通り過ぎて、ついに街の端の柵も越えた。
(この先は森だ…)
そう思いながらも、私はさらにさらに光の玉を追って進んでいった。

「つきましたよ。」
そこはとても大きな館だった。
大広間には多くの子どもたちが集まっていた。当時の私とほとんど変わらない子ばかりだった。私を入れて21人。
さらに一人だけ、大人の女の人がいた。

(雪の精霊さんが化けているんだ!)

私はそう思った。なぜなら、声がそっくりだったからだ。



その後?
そのあとはとにかく遊びました。
広い部屋の中で走り回ったり、女の人が持って来てくれるお菓子を食べたり。きれいな人形で人形遊びをしたり。
外でハイキングもしました。
えっ、寒いんじゃないかって?
それが不思議なことに、私たちが外に出ると、そこはもう凍えるような雪の夜ではなく、鮮やかな緑の木々と草原が広がる、よく晴れた昼下がりの世界だったんです。
草原なんて見たことないですからね、私たちは夢中になってあたりを駆け回りました。

そうやって遊んでいると、突然女の人が言い出したんです。
「みんな、もう帰らなきゃ」って。

私は帰りたくなかった。みんなもそうだったようで、なかなか遊ぶのをやめようとしないんです。でもね、その後いろいろ、本当にいろいろあって、1人の男の子を残してみんな帰ることになりました。しぶしぶですけどね。それでも「楽しかった」と嬉しそうにお礼を言って、街に戻りました。

街では大騒ぎですよ。20人の子どもと村の外れの古い館が一晩で消えて、どこからともなく戻ってきた。
心配していた大人たちは泣いて喜びました。厳しい顔をした宿屋の主人は、一晩中森の中を探し回っていたそうです。私たちはバツが悪そうにあやまって、それでも「楽しかった」と言って少し叱られました。

その後も、館は何度か消えました。また別の子どもたちといっしょにね。
結局、この出来事は何だったんでしょう。

私は知っています。けど、ここから先は話す気はありません。
でも館は最近消えなくなったんです。
それはつまり、やっと見つけたってことなんでしょう。



「私が一緒に行ってあげる!」
「…本当に?」
男の子が呟く。
「本当に!」
私は元気よく言った。
でも、男の子はまだうつむいたままだ。
「…やっぱりダメだよ。」
「どうして?私は帰りたくないの。」
「…。」
男の子は黙ってしまった。

「とにかく、帰らなきゃダメよ。」
女の人が言う。
「だから、私は一緒に行くの。」
「…ダメ。」
「どうして?」
「あなたはまだ生きてるでしょ?」
「帰れなくていい。」
「…あのね、悪い霊はお空に昇れないの。」
「…?」
「じゃあね、頑張ってね。」
気がつくと、私はボロボロの館の前に立ちつくしていた。


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このストーリーに関するコメント

14/03/12 タック

スレイさん、ご投稿ありがとうございます。拝読いたしました。

淡々と語られる、幻想的でどこか物悲しさを感じる世界。各章の文法、表現の変化がいいアクセントになっている気がします。道連れを探していた二人(親子?)ということなのでしょうか。不思議な雰囲気の作品でした。

14/03/12 かめかめ

悪い霊とは……。それは話したくないですわなあ

14/03/17 スレイ

>タックさん、かめはめさん
コメントをお寄せ頂きありがとうございます。
幻想的という感想は嬉しいです。掴めない話ですが、雰囲気だけでも楽しんで、ついでにお二方のように何かを感じて頂ければ幸いです。

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