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浅月庵さん

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言う気は勇気

14/03/07 コンテスト(テーマ):第五十二回 時空モノガタリ文学賞【 勇気 】  コメント:7件 浅月庵 閲覧数:1160

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 この高校で一番美人だと評判の亜美谷麗子さんと僕は同じクラスだ。
 彼女は僕みたいな奴からしたら完全に高嶺の花なんだけど、それでも僕は自分の気持ちに正直でありたい。
 こんな僕が亜美谷さんに想いを伝えて、結果がどうであれ満足感に浸ろうとするなんておこがましいにも程があると周りに言われそうだけど、この感情は止められそうにない。
 勉強もスポーツも全くダメで、お笑い番組を見ることが趣味の僕と比べ、亜美谷さんは勉強もスポーツも得意で、人気者で笑顔が素敵で、今日初めて着てきた白色のカーディガンもよく似合っている。目も大きくて鼻筋が通り歯並びも綺麗だから、顔立ちも「彫刻ですか? ギリシャの彫刻なんですか?」ってくらい美しい。彼女の顔ならずっと見ていられることだろう、彼女の顔でご飯三杯は......お腹いっぱいになって無理だろうけど、重要文化“顔”に指定してあげたいくらい貴重な国の宝だと思うんだ。重要文化顔なんてこの世に存在しないし、あっても僕に決められる権限なんて絶対に無いけどね。

 授業の合間の十分休み。僕の視線は亜美谷さんを追う。いつもなら眺めているだけで目の保養になるんだけど、今日は違う。今日僕は亜美谷さんに言わなければならないことがある。
 勇気を出せ勇気を。頭の中で感情が巡り巡って高まり過ぎて、椅子に座っていた僕は自分自身を制御出来なくて、気づいたときにはもう立ち上がって叫んでいた。
「亜美谷麗子さん!」奴隷が王様に直談判するような気持ちだ。僕は名前を口に出した瞬間、しまったとすぐに後悔して顔が熱くなってきているのが分かるんだけど、もう後には退けない。周りで談笑していたクラスメイトも僕の大声で一斉に話し声を中断して黙る。
「どうしたの、山田くん」その空間で唯一口を開いたのは、名前を呼ばれた麗子さんだった。堂々とはっきりした声は透き通って僕たちの鼓膜を震わせる。
「ほ......放課後、体育館裏にき......来てもらえませんか」言っちゃったー! これはマズいよね。取り返しつかないよね。
 そう言った瞬間、クラスがボリュームのつまみをMAXに捻ったかのように騒々しくなる。みんながそれぞれ言いたいことを好きなように口に出すけど、僕は聖徳太子じゃないので何言ってんだか聞こえない。
 それを受けた亜美谷さんは、顔を真っ赤にして自分の席に着いてしまった。なんだか悪いことした気がするな。
 でも、それだからこそ僕はちゃんと亜美谷さんに言うんだ、ここまで勇気を出したんだから、自分の行動力を無駄になんかしない。

 ――放課後。僕は体育館裏で待っている。クラスメイト十数人が校舎の陰からこちらをちらちらと見ていて気まずいんだけど、僕の決意は変わらない。
 程なくして、亜美谷さんがこちらへ歩いて来る姿が見える。ちゃんと来てくれたんだ。
「いきなり呼び出し受けてびっくりしちゃった! それでなんの用事?」
「う、うん。実は、朝から絶対に言おうって決めてたことなんだけど」緊張で声が震える。
「なにかな?」亜美谷さんの笑顔を直視出来ない。
 僕は大きく息を吸い込む。この我慢し切れない想いを発散させる。なけなしの勇気を振り絞って言うんだ。
「亜美谷さんのそのカーディガン、値札のタグ付いたままです!!」......言っちゃった。ついに気になってたことを言ってしまった。
 亜美谷さんの視線は自分のカーディガンの裾に行き着く。「や、やだ! 恥ずかしい」顔を赤らめる亜美谷さん。
「しかも980円でそんなお洒落なカーディガン買えるんだね」「ちょっと山田くん、やめてよ」「いやー、僕からしたら亜美谷さんって手の届かない人で、高嶺の花だと思ってたんだけど......」「......うぅ」「これはまさしく“安値”の花だね!」
 これだ、僕は朝からずっと考えてたんだ。高嶺の花をもじって“安値の花”。我ながらに冴えてるギャグだと思う。
 だけど、僕の興奮とは反して亜美谷さんはポカーンとした表情。「なに、それ......」
「あ、あれ? 伝わってないかな? た・か・ねとや・す・ねを掛けたんだけど」「......用事ってそれだけ?」「ん? あ、あぁ、まぁそうだね。絶対このギャグウケると思って亜美谷さんに......」「最低!!」
 僕は亜美谷さんに思い切りビンタをくらう。そんなに振りかぶったら腕もげちゃうよってくらい全力で。
 その後、亜美谷さんは泣きながら走り去って行くし、僕の元には校舎の陰から一部始終を目撃していたクラスメイトたちが駆け寄って来る。
「おい、山田! 告白してビンタされるって、どういうことだよ。お前、亜美谷さんになんて言ったんだよ!!」
「ん? あぁ、大したことじゃないよ」言えない。言えるはずないよ。
 ......だってこのギャグ、ウケなかったんだもん。


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このストーリーに関するコメント

14/03/08 綾瀬和也

浅月庵様、始めまして一条圭吾と申します。

拝読させていただきました

まぁ…山田、お前は本当に最低だ(笑)

何もその場所で言わんでもいいだろうって思いました

とりあえず亜美谷さんの腕がもげなくてホッとしました。本当に安値になってしましますからね(笑)

面白いお話ありがとうございます。またコメントさせてもらいます。 

14/03/08 浅月庵

一条圭吾さん、初めまして。
コメントありがとうございます。

最初はここまで山田を最低な奴にする
予定じゃなかったんですけどね(笑)

こちらも後ほど作品拝読させていただきます。

14/03/10 かめかめ

えええぇ〜〜。
それ、教室でそっと教えてやれよ〜。
笑かしてもらいました!

14/03/10 かめかめ

えええぇ〜〜。
それ、教室でそっと教えてやれよ〜。
笑かしてもらいました!

14/03/10 浅月庵

かめかめさん、コメントありがとうございます。
山田の空気の読めなさと自分のギャグの絶対的自信によって
空回りした結果がこうなりました笑

14/03/11 朔良

拝読いたしました。
勇気を振り絞って、大々的に呼び出して、告白じゃなくてそれですか!
思わず笑ってしまいました。
でも、山田君に座布団一枚〜ですね。

14/03/11 浅月庵

朔良さん
こちらにもコメントありがとうございます。

絶対告白するんだろうな、と思わせる為に
注意して書きました。
山田って適当に付けたんですが、
笑点みたいですね笑

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