1. トップページ
  2. 恋愛研究所

t-99さん

性別 男性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

0

恋愛研究所

14/02/28 コンテスト(テーマ):第五十一回 時空モノガタリ文学賞【 奇跡 】 コメント:0件 t-99 閲覧数:962

この作品を評価する

チラシをにぎりしめた男がビルを見上げていた。男の名前は夢野夏生、大学二年生。後輩に恋人ができアニメ同好会で彼女がいないのはついに夏生だけになってしまった。
「信じる、信じないは先輩に任せますよ」
 渡されたチラシを夏生が覗き込む。
『あなたの出会いを演出します。恋愛研究所 所長 縁 結美(えんむすび)』
「ばかばかしい」夏生は一笑した。後輩が彼女とキャンパスで仲良く寄り添う姿を目にしても夏生は信じようとはしなかった。
「真相を暴いてやる」チラシの住所を確認した夏生がビルの自動ドアをくぐり抜けた。ガラス張りの明るい室内にはクラシックが流れ、数名の男女がソファに腰かけ順番を待っていた。受付で必要事項を記入すると夏生はすぐに個室に案内された。

「はじめまして、所長の縁結美と申します」
 メガネの奥の瞳が笑いかけてくる。向かい合わせでソファに腰かけた。タイトスカートから伸びた彼女の生足に夏生の視線が釘付けになる。
「どんなタイプの女性がお好みですか」
「お、おまかせします」
 夏生の緊張などおかまいなしに彼女は慣れた手つきでパソコンの操作を始めた。
「こちらの方はどうでしょう」
「水無月弥生(みなづきやよい)?」
「はい。有名なコスプレイヤーです」
「コスプレイヤー?」
「メイドなどの衣装を着ることを趣味とする人たちのことをいいます」
アニメが好きな夏生はコスプレイヤーがなんたるか当然知っていた。
「趣味じゃありません」 
気持ちとうらはらの言葉を口にする。キーボードは次の音を奏でていた。
「沼田亜衣さまはどうでしょうか、アニメ声優さんです」
「お願いします」
 夏生は即答した。
騙されないつもりのはずが夏生の趣味をピンポイントでついてくる。ナイスな彼女のチョイスに当初の目的を忘れかけていた。沼田亜衣は声優界の若きカリスマ。夏生はファンクラブに加入していた。
「ピー、ピー、ピー」
 パソコンがけたたましい音を発した。
「申し訳ありません、夏生さま。たった今、情報が更新されました」
『声優界のカリスマ、熱愛発覚』
 パソコンに大きな見出しとスクープ記事の詳細が踊る。途端に彼女の歯切れが悪くなった。
「彼氏さんがいると当方といたしまして仲を引き裂くことになりますので……」
記事を読む気力もうせた夏生が現実に引き戻される。がっかりする夏生に彼女は優しく語りかけてきた。
「好きになった人はいませんか。たとえば初恋の相手、心が焼かれ苦しくなるほどせつない思いはありませんでしたか」
 夏生には思い当たる人がいた。
「なかたひとみ」
 夏生の初恋の相手。小学生のころ、家が隣でいつも一緒にアニメを見ていた。『将来はナツくんのお嫁さんになる』夏生が引っ越すまで毎日遊んでいた。瞳はどうしているのだろう? 夏生は急に知りたくなった。
「おかしいですね」
 手を休めた彼女が首をかしげた。
「【中田瞳】さま、該当なしとなっています」
「お願いします。彼女を捜してください」
「ひとみさまの漢字は、目(め)に童(わらべ)でいいですよね」
「そうです」
「当方のデーターベースの登録数は業界トップクラス、ヒットしないということは……」
「そうですか」 
お辞儀をして夏生はそのまま部屋を出て行ってしまった。

パソコンの画面をしばらく見つめていた彼女が思いついたように入力し直した。

【仲田瞳】

登録情報が瞬時に表示された。

『会員No.12589333  

名前:仲田瞳(なかたひとみ)

生年月日:平成××年××月××日

住所:××県××市××××

趣味:アニメ コスプレ

理想の相手:初恋の人……夢野夏生』

彼女は夏生が置いていったチラシに目をやり注意書きのひとつを指でなぞった。

『当方にミスがあった場合、無料にてあなたの恋愛をサポート致します』



コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン