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ルミサム・オーさん

性別 男性
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別れる

14/02/24 コンテスト(テーマ):第五十二回 時空モノガタリ文学賞【 勇気 】  コメント:0件 ルミサム・オー 閲覧数:861

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京都駅で、ルミと一時の別れをした。

列車は神戸を過ぎ、明石を過ぎて姫路に差し掛かり、
18時になろうとしていた。
ルミが作ってくれた弁当を食べることにした。
「うち、下手やけど一生懸命に握ったん、途中で食べてね」
そう言って泣き出そうとして懸命に堪えているルミが脳裏に浮かんだ。
淡い花柄のハンカチの包みを解くと、
オニギリが二個ポロッと出てきた。
俵の形をしていた。これが関西風らしい。
手に取って口に頬張ろうとして、その手を止めた。
ありゃあ?
飯粒がかなり潰れていた。
まるで、突きの足りない餅のように・・・
巷では、美味しいおにぎりというのは、 ふわっと握ったものである。少なくとも九州ではそうだ。
「えへ、ルミの奴う、この下手くそがあ・・」
私はなんか少し愉快な気分になって、ガブっとかぶりついた。 もぐもぐ食べ始めると
二十年ちょっと昔に食べた感触が、口の中でぶつぶつと蘇った。

私は、とある工場で夜勤をしていた。
酷く底冷えのする2月の午後22時過ぎだった。
共働きの家内は風邪で早々に寝込んでいたので、
午前四時に食べる昼飯を自分で作ることにした。 その時、十歳に満たない一人娘が寝床から起きてきた。
「どげんした、早う寢らんと、でけんめがあ〜」
私は少し叱るような口調で言ったと思う。
娘は、よく結べていない布の包みを差し出した。
「なんかあ、こりゃあ?」
「おべんとう」

工場の薄暗い寒い休憩室で、その包みを広げると、
形の悪い俵型の小さなおにぎりがコロコロと五つ転がり出た。

そして、飯粒は、ほとんどが潰れかけていた。
まるで突き足りない餅のように。
小さな手のひらで、ひとつひとつ、力いっぱい握ったんだろう。 この時以来、
形が良かろうが悪かろうが、
飯粒が潰れていようが、ふんわりしていようが、
私には、おにぎりが、格別に美味しいものになった。
そして、
新幹線で食べたルミのおにぎり。 か細い手で強く強く握りしめたに違いなかった。

4つ上の家内は60を過ぎ、肥満をもろともせずに元気だ。
あの時の娘は30を過ぎて平穏な家庭を築いている。
子供に恵まれなかったルミは48になり、
仕事に就こうともせず、ギターを弾いて、その姿と顔をFacebookにさらけ出す、
嘘か真か自律神経失調と旦那本人が言う最も軽度の精神病者を抱えている。

私は、決断を迫られている。

㡮ᘞw/


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