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W・アーム・スープレックスさん

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将来の夢
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叫び声

14/02/24 コンテスト(テーマ):第五十二回 時空モノガタリ文学賞【 勇気 】  コメント:4件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:1196

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 不時着の衝撃で、宇宙船の電気回路がズタズタに破損するという最悪の事態に陥った。
 動力はもとより、通信装置から船外を映し出すカメラにいたるまで、なにもかも再起不能で、いったい自分たちがどんな環境の惑星上にいるのかさえ、搭乗員たちにはなにもわからなかった。
 落下している間、宇宙船の周囲には自動的に、どんな探知機にも反応しない金属粉がまき散らされていた。ここの惑星の種族が他の天体からきたものにたいして排他的であったとしても、この不時着を気取られる心配はまずないだろう。
 亀裂がはしった船内にながれこむ外気が、呼吸可能だという事実は、万に一つの奇跡といえた。。
 艦長の大山は、いびつにゆがんだ操縦室内で、その外気をおもいきり吸い込んだ。
 室内には、難を逃れた十六名の隊員たちが集まっていた。墜落時に、命をおとしたものもいて、その数は到底船倉に収容しきれないまでに多かった。
 大山の耳にはまだ、宇宙空間を飛行中にいきなり船内に響きわたった緊急警報が耳鳴りのように鳴り響いていた。
「まるで宇宙船自体が号泣しているようだった」
 なにかがいきなり宇宙船に衝突した。それが小惑星のかけらとわかったときにはすでに船は、航行不能におちいっていた。とっさにこの惑星をみつけだし、緊急着陸の態勢に入れただけでももっけの幸いだった。あとはもう大混乱が続き、気が付いたらひしゃげた船内に気を失って倒れていた。 
 彼は、憔悴と不安にやつれきったみんなの顔をみまわした。
 そして、本来なら船外を鮮明な映像で映し出しているはずの、巨大モニター画面があったところに険しい視線を投げかけた。そこは衝撃がもっとも激しかったところで、まるで鉈ででも切り裂いたかのような亀裂が無数に認められた。
 その亀裂を通して、なにか巨大な生き物の咆哮のようなものが伝わってきた。
「まただ………」
 みんなは緊張にこわばる顔をみかわした。
 そのいくつもに異なる正体のしれない叫び声は、不時着時からたえまなく聞こえ続けていた。数多の惑星を経めぐり、どんな困難にもめげることのなかったかれらでさえ、その神経を逆なでするような叫び声にたいしては、臆病風にふかれ、逃げ腰になった。
 大山はそれでも、なんどかこの窮地からの脱出を試みようとした。
 勇気をふりしぼって、宇宙船からふみだし、あの怪獣たちと戦おう。
 命令をくだしかけたときにかぎって、またひときわ凄い咆哮がきこえ、たちまち闘志が挫けて、その躊躇は、恐怖にすくみあがる隊員たちになおさら動揺をもたらす結果になった。
 みんなは、ひび割れた壁に、廃材をあてがった。
 しかしいくら分厚いバリケードをはりめぐらしても、叫び声は、依然として聞こえ続けた。
 大山は、すでに何人かの隊員たちが、精神に異常をきたしているのに気づいていた。たえずなにものかに怯えるようにびくついて、ちょっとしたことにも、とびあがっておどろいた。事態は最悪の方向にむかっていた。
 一人の隊員が、いきなり熱光線銃をみんなに乱射し、二人の命を奪ったのち、自分にむかって引き金をひいた。この出来事は、それまでなんとか自制をたもっていた隊員たちから最後の心の安定を喪失させた。
 大山が隊員たちから武器をとりあげようとしたときにはすでに遅く、もはやだれもが冷静な判断力をみうしなっていることを彼は、自分にむかって発射された熱光線銃に肩を焼かれた瞬間に、理解せざるをえなかった。
 大山はいそいで宇宙船から脱出しようとした。分厚いバリケードのまえにおもうにはかどらず、それでも辛うじてわずかな隙間からころがりでることに成功した。
 夢中で宇宙船からかけだし、あたりに散在するなにやら資材のようなものの間をはしりぬけた大山は、まもなくあらわれた巨大な施設のような建物に前進を阻まれ、たちどまった。
 そのときだった、天地をとどろかせて、あの叫び声が響き渡ったのは。
 恐怖と戦慄にたつすくむ大山の眼前を、笑いながら親子連れがとおりかかった。ほかにも何組もの親子の姿がつづき、みなぞろぞろと、施設にむかって歩いてゆく。
 施設の入り口の上にはりめぐらせた、さまざまな怪獣の姿を描いた看板に大山はそのときはじめて気がついた。柵の中の敷地ではいくつもの、やはり巨大怪獣が、尾をふりあげ、牙をむいた口を大きくあけて叫んでいる。まわりをとりかこむ大勢の親子たちの、たのしそうな表情をみるまでもなくそれが、ロボットのモンスターたちで、ようやくここがアミューズメントパークなのだと大山はさとった。
 そんな彼を嘲笑うかのように、モンスターたちがいままたいっせいに吼えたてた。
 隊員たちを驚愕のあまり狂気に陥れ、同士討ちにおいやったあげく、宇宙船から外にでる勇気をねこそぎ奪いとった恐怖の叫びの、それが正体だった。


 


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このストーリーに関するコメント

14/03/10 かめかめ

ラストで、やられた!と思いました

14/03/10 W・アーム・スープレックス

それこそ、一番聞きたかった、お言葉です。

14/03/21 gokui

 読ませていただきました。
 コンパクトに収めた『猿の惑星』っていう感じですね。大山が「助かったぞ!」と叫びながら宇宙船に戻ったときには誰も生きてはいないのでしょうね。

14/03/21 W・アーム・スープレックス

gokuiさん、コメントありがとうございます。
その後の大山のことは、考えていません。放心状態が長くつづくことだけは、たしかと思いますが。

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