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yoshikiさん

面白い作品を知り、自分でも書いて見たくなって何年も経ちました。よろしくお願いします。 2010年 小説現代S&Sコーナーに初めて送った作品が掲載されました。作品名『幽霊の見える眼鏡』 とにかく面白いものが書いていけるといいなと思っています。 イラストはエアブラシと面相筆で昔描いたものです。

性別 男性
将来の夢 楽隠居
座右の銘 不可思議はつねに美しい、どのような不可思議も美しい、それどころか不可思議のほかに美しいものはない。アンドレブルトン

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Magic

14/02/15 コンテスト(テーマ):第五十一回 時空モノガタリ文学賞【 奇跡 】 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:990

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 ある時アマゾンの秘境で、未知の部族の少年が原住民の黒人に捕らえられた。長身の少年はネアンデルタール人の子孫ではないかと言う妙な噂が立ち、忽ちそれはスクープになり、世界中の人々の注目するところとなった。
 早速、世界の主要国から自然人類学者等が率いる調査団チームが結成され、現地に派遣された。
 日本からも調査チームが現地に赴き、調査を始める事となった。やがて捉えられた少年を救うためか、仲間たちが現れたのだが、結局彼らは一網打尽にチームの隊員たちの手によって保護、いや実際は捕獲されたと言っていいかもしれないが、ともかく確保された。 そして大きな牢獄みたいな場所に収容され研究対象となった。
 彼らは全員で二十人余りの原始人みたいな人々で、動物の皮を身にまとう狩猟民族のようだった。彼らは言語を使わず、ほとんどジェスチャーのような身振りで意思を伝えあっていた。
 文字も言葉も無い彼らの驚くべき実体が、次第に明らかになっていく。彼らは最初、チームに強い警戒心を抱いていた(拘束されていれば無理もないが)がチームの根気ある友好の努力は頑かたくなな彼らの心を徐々に解きほぐしていった。
 特にチームの持って行った、固形のケーキは彼らに好評で、喜んで彼らはそれを食べ、親密の度合いが一挙に濃くなった。友好関係が確立しつつあったと言っていい。
 特にグーガという最初に発見された少年は妙に人なつっこく、このグーガと言う名はこの少年が頻繁に「グーガ」と発音するのをチームの隊員が聞いて、勝手に名にしただけで、名なのかどうかも実際のところ解らなかった。
 グーガは利発ですぐにチームの人気者になった。言葉はむろん通じないのだが、隊員の意図をすばやく汲み取り、まるで通訳のようにジェスチャーで部族のみんなに伝えたりした。
 このときにはもう彼らは牢獄のような場所から解放されたのだが、彼らも青年もそこから逃げる気配さえなかった。そこに居ついてしまった。
 やがて調査、研究も一段落し、様々な研究資料を携えてチームは一旦帰国する事になった。又来る事にはなってはいたが、はっきりいつになるかは分からなかった。チームの隊員も彼らと情が通じていたので、なんだか寂しい気分にもなっていた。
 
 そんな折り、チームの中にマジックの得意な一人の隊員が現れた。彼はお別れにマジックで彼らを喜ばせようと思いついたのだ。そして簡単なマジックを彼らの前で披露した。実は彼は大学時代にマジック研究部にいたので玄人跣(くろうとはだし)の腕前なのだった。
 一つのピンポン玉が彼の手の中で二つになり、三つに増えた。これは高度なテクニックであったが、どういう訳か彼らにはあまり反応がなかった。ほとんど関心を示さないのだ。今度は一本の紐を真ん中で切り、切れた両端を握ると切れたはずの紐は、もとどおり一本の紐にもどるというマジックだった。
 それを見た彼だったが、やはり彼の期待した反応はなかった。仕方なくマジックの得意な彼は最後にとっておきのマジックを披露した。
 手に取った大きな赤いマフラーの中から突然、白い鳩が何羽も現れるという、プロにも引けをとらない素晴らしいマジックである。そしてその鳩を空中に放り出すと鳩は空中に見事に消え失せてしまった。
「これでどうだ」と言う表情を彼がした。
 しかし彼らは尚も、まったくの無表情なのである。彼は落胆を隠せなかった。拍手をしたのはチームの仲間と現地の人達だけだった。
 その様子を見てチーム隊員たちは、彼らの知能はかなり低く、マジックの意味さえ理解出来ないのだと結論を下した。
 だがグーガはなぜか印象的な薄ら笑いを浮かべていた。 
  
 
 

 とその時、部族のリーダーらしき長老がすっくと立ち上がったかと思うと、手にした杖を天にかざしてみせた。
 ――するとどうだろう。今までその場にいた彼ら部族の全員が、煙のように忽然とその姿を消してしまった…。
 チームの全員が驚嘆したのは言うまでもない。
 そして、何処をどう探そうとも、彼らを二度と見つけ出す事は出来なかった。


 空中に消えた彼ら。未知の人達、それは奇跡の伝説として、今もなお隊員たちの心に深く刻み込まれている。


                    end


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このストーリーに関するコメント

14/02/15 泡沫恋歌

yoshiki さん、拝読しました。

最後まで読んで、彼らがいったい何者だったのか?
気になって、気になって・・・今夜はとても眠れません(笑)

14/02/16 yoshiki

泡沫恋歌さん、コメントありがとうございました。

ネアンデルタール人はホモサピエンスにとって異種です。
大昔に滅びた人種の中に、本当は人類より優れた素質を持った種がいたのかもしれず、そんな風な発想からこの話を作りました。しかし雪がすごくてスーパーに品物がないよ。余計なこと書いてすいませんm(__)m

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