1. トップページ
  2. 鼻の穴の中の奧の指輪

五助さん

性別
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

1

鼻の穴の中の奧の指輪

14/02/14 コンテスト(テーマ):第五十一回 時空モノガタリ文学賞【 奇跡 】 コメント:1件 五助 閲覧数:1413

時空モノガタリからの選評

徹頭徹尾、しょーもないギャグの連続なのですが、内容や言葉に無駄な部分もなく、よく考えられているなあと感心しました。
「鼻の穴に入った結婚指輪をはずして」と頼む女のセリフが、妙に「理路整然」としているところがなんとも可笑しいですね。「鼻をほじったら奥に入って取れなくなった」という設定のムチャクチャ具合と、理路整然具合とのバランスがなんとも良かったと思います。また突っ込み役の医者のとぼけた物言いも面白いですね。特に子供の出産と指輪とを絡めた後半がうまいですね。「出てきた」のが子供か指輪かという問答、「さすが、いんこうかですね」というセリフにつながっていく流れがうまく決まっていました。そしてラストの「子供の大事なところ」にはまる「奇跡」。下らなすぎですが確かにこれは「奇跡」ですよね。結局彼女は結婚指輪と縁が切れなかったのでしょうか。理屈抜きで楽しい作品でした。

時空モノガタリK

この作品を評価する

「どうされました」
「先生、鼻の穴に入った結婚指輪をはずしてください」
「はぁ」
「鼻の穴に入った結婚指輪をはずしてください」
 女は大きな声を出しました。ここは耳鼻科です。
「それは聞こえてんねん。なんで結婚指輪が鼻の中に入ったんや」
「鼻をほじったら、奥に入って取れなくなったんです」
「そんなあほな、ちょっと見せてみい」
 医師は女の鼻の穴にライトを当てのぞきました。
「ほんまや、奥に、はまってる。どんだけ指つっこんだんや、指が目の裏までいってまうで」
「太ったんです」
「うん、まぁ、それは見ればわかる」
「指が肥えて指輪がどんどん入らなくなって最終的に指の爪の先までいったんです」
「ほぼ、はずれてるな」
「それを忘れてほじったらこんなことに」
「いつこうなったんや」
「四年前です」
「四年前?」
「ちょうど前の冬のオリンピックの時です」
「そんなん聞いてない。なんで四年間もほったらかしにしてたんや」
「取ろうとしたら余計に入ってしまって、その頃、旦那ともうまくいってなくて、まあいいかと」
「よくないけどな」
「生活にも支障が無くて逆に鼻の穴の風の通りがよくなったと喜んでいたんです。そのかわり夫婦間には隙間風が吹いていました」
「うまいこと言わんでいい。そやけど、なんで今更取ろうと思ったんや、四年間もほったらかしにしといて」
「実は私、離婚しまして」
「そりゃ残念やな」
「離婚したのに指輪をはめているのは、おかしいと思ったんです」
「あんたの場合は、鼻の穴に、はまってるんやけどな」
「それで、はずそうと相談しに来たんです」
「はずすというか取るやけどな」
「私、新しい人と結婚する約束をしているんです。このままやと、彼に、前の旦那に未練があるみたいに思われてしまうんじゃないかと心配で」
「思わへんで、それに鼻の穴の奧まで見いへんと思うで」
「先生お願いします。指輪をはずしてください」
「わかった。やってみるわ」
 医師はピンセットで取ろうとしてみたり、油を垂らしてみたりいろいろ試してみましたが、取れません。
「痛い痛い」
「すまんすまん、ほなちょっとやめるわ」
「痛い痛い」
「いや、なんもしてへんで」
「おなかが痛いんです」
「なんでおなかが痛いんや」
「私妊娠してるんです」
「なんでそんなこと先に言わんのや。いつから痛み出した」
「先生が私の鼻の穴をほじくり出してる頃です」
「変な言い方するなや、なんでそんな状態でここに来たんや。出産してからくればいいやろ」
「私は結婚する前に妊娠してしまって、出産の後に結婚をとなると、順序が逆になってしまいます。その上、私の鼻の穴の中には前の夫にいただいた結婚指輪があります。そうなってくると私は前の夫との結婚指輪を外す前に今の彼との間に子供をもうけ結婚式の前に出産することになります。ですから、出産と結婚の前に離婚した夫との間の結婚指輪を先にはずそうと出産日の前にここに来たんです」
「理路整然とややこしいわ。あっ、破水しとるやないか。おい、救急車呼んでくれ」
「先生、もう出てきそうです」
「移動できるか」
「なんとか」
 妊婦をベットに横たえました。
「ごめんやでちょっと見せてもらうで」
「かまいません。先生には上の穴も見られてますし、どうぞ」
「変な言い方するなや、あっ、もう頭出てるやないか、間に合わへんな、ここで取り出すか」
「取り出すって、どっちですか」
「どっちてなにがや」
「子供ですか指輪ですか」
「子供や! 子供を取り出すに決まってるやろ。あほなこと言ってないで、ちょっといきんでみ」
「はい」
 女はいきみました。子供の頭が徐々に出始めました。
「おし、いいぞ。出てきた出てきた。かわいい顔してるわ。どっちやろうな」
「どっちて、子供ですか指輪ですか」
「男か女かや! かわいいなー、子供かなー、指輪かなー、どっちやろうな。そんなこというか! はよ産め!」
 そんなやりとりをしている内に、子供は無事生まれました。
「元気な男の子や。一応、処置はしておいたけど後でちゃんと産婦人科で見てもらいや」
「ありがとうございます。さすが、いんこうかですね」
「耳鼻咽喉科な、最後まで、ややこしいこと言わんといてくれるか」
「子供を見せてください」
「わかった」
 医師が子供を見せようとした時、あり得ないようなことが起きました。出産で力が入ったからなのか、出産が終り安堵し力が抜けたのか、医師の処置の所為なのか、鼻息をした瞬間、鼻の穴の奧から、なにかが飛び出しました。結婚指輪です。それは赤ん坊の方へ飛び、そのまま男の子のシンボルに、すぽっと、はまってしまいました。
「ああー、先生ー、えらいところにー、指輪が私の子供の大事なところにー、この子の将来心配です」
「そんな、あほな!」


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

14/02/16 クナリ

めっさ面白かったです。

ログイン
アドセンス