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サンジェルマンさん

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命の距離

14/02/08 コンテスト(テーマ):第四十九回 時空モノガタリ文学賞【 絶望 】 コメント:2件 サンジェルマン 閲覧数:934

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 強い風が男の背中を押している。
男はただ立ち尽くしている。
空がいつもより近く、前を向けば地平線かもしればいが、
男は空を見上げている。
男はため息を付くが、その音も呼吸も風に流され誰の耳に届くことはない。
そこは街の中ではあるが、男の姿を見ているものはいない。
瞳からは涙が流れている。この瞬間においては悲しいわけでも、
辛いわけでもなく、男はただ涙を流している。
呼吸をするかのように、自然に流れている涙。
その涙も風に流され、誰の心に届くことはない。

男は前へ進もうとしている。大きな一歩を踏もうとしているが、
ここから先へ進めばすべてが変わってしまう。
変わるは男ではなく、周りを取り巻く環境である。
男は風に相談した。このまま一歩前へ進んでいいのか、それとも戻るべきかを。

男は考えていた。命の距離とはどういうことなのかを。
命の距離はすべてが平等で、すべてが同じ距離である。
短いも長いもなく、同じ距離であり、
そこで動いている時間が、早く動くか、遅く動いているかに過ぎない。
時間の動きは不規則で、早くなることもあれば遅くなることもある。
さまざまな事象や環境や感情でその動きは変わる。

 男はいつもより近い空を見上げていると、
自分の時間が急速に動いているのを感じた。
そして男は前へ進んだ。強い風に後押しされながら。
右足を前へと出すと、そのまま遥か下に見える地面へと最後の一歩を踏んだ。
世界から色が消え、男の涙は止まった。


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このストーリーに関するコメント

14/02/09 gokui

 読ませて頂きました。
 自殺を決めた人間の心の中にはもう何もないのですね。なんて悲しいんでしょう。本当の絶望って、こんな何もない状態なんですね。

14/02/10 サンジェルマン

gokui様

コメント有難うございます。
デリケートなテーマなので難しかったです。

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