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かめかめさん

http://ameblo.jp/kamekame1976/ ブログデシセイカツバクロチウ

性別 女性
将来の夢 印税生活
座右の銘 ハワイに行きたいと思ったら、一歩踏み出さないといけない。 ハワイは向こうから近づいてこない。

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ずるい。

14/01/27 コンテスト(テーマ):第五十回 【 三角関係 】 ターザン山本賞 コメント:8件 かめかめ 閲覧数:1511

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なつみから数学の教科書を貸してもらった。
うっかり忘れたんだけど、忘れてよかった。
私が借りる直前に航介くんが借りていたらしい。そんなこと、考えただけで胸が高鳴る。

教科書の表紙をそっと撫でてみる。航介くんが触ったところを私も触ってるんだ……。
いけない。馬鹿なことしてないで、少しでも予習をしなきゃ。

あわてて教科書を開くと、裏表紙のあたりから、なにかがぽとんと床に落ちた。
拾い上げてみると、それは水色の封筒だった。表には、なつみの名前が書いてある。

ラブレターだ。きっと。

水色はなつみが好きな色。
航介くんは、きっとそれを知っている。
私はぎゅっと目をつぶった。頭がくらくらして口の中に苦い味が広がった。

航介くんとなつみは幼馴染だ。幼稚園時代からの付き合いらしい。
私が二人に出会ったのは高校の入学式。講堂の場所がわからずウロウロしていた私を、航介くんが見つけてくれた。

一目ぼれ、だったと思う。
講堂までの道を並んで歩いていると、なつみが走ってやってきた。
航介くんとなつみの仲のよさに、二人は恋人同士なのだと思った。私は航介くんと出会ってすぐに、一度目の失恋をしたのだ。
けど、その後なつみに聞いたところ
「ないない!航介とあたしはただの腐れ縁。それだけだって」
そう言って、私の背中を勢いよく叩いた。
私は天にものぼる気持ちになった。でも、その気持ちは長くは続かなかった。

航介くんから聞いて欲しいことがあると、屋上に呼び出された。
私は足が震えるほど緊張しながら約束の場所に向かった。
でも、待っていたのは、なつみへの恋心をどうすればいいのかという相談。私は二度目の失恋をした。
航介くんは顔を真っ赤にしてうつむきながら話した。その姿は、私のためではない。
すべてなつみのためにあるものなのだ。航介くんの心はなつみのものだ。
そう思っても、私にはどうしても、どうしても『がんばって』と言うことができなかった。
代わりに出てきた言葉は『なつみ、好きな人がいるらしいよ』だった。
私は好きな人に嘘を吐いた。
嘘なんかすぐにばれると思っていたのだけれど、その時なつみには本当に好きな人がいたそうだ。航介くんはなつみへの気持ちを封印して、幼馴染として接することに決めたらしかった。
私は航介くんに同情するふりをしながら、内心ではほくそ笑んでいたのだ。

そのバチが当たったのかもしれない。
今、私の手の中には航介くんからなつみへの、ラブレターがある。
どうしよう。このままやぶって捨てようか。それともこっそり、中をのぞいてしまおうか。
封筒は一箇所をかるく糊付けされているだけで、簡単に開きそうだった。
簡単に開いて簡単に元通りに糊付けできそうだった。
胸が痛いほど、どきどき言っている。
今、私が知るかぎり、なつみには好きな人がいない。以前の人とはうまくいかなかったのだ。
この手紙を見たら、なつみは航介くんのことを好きになってしまうかもしれない。
そうだ。捨ててしまおう。
私が捨てたなんて誰にもわからない。
私が教科書を借りる前に、どこかに落ちてしまっていたんだ。
もしかしたら、なつみが後で読もうと思って忘れてしまうことだってあり得るんだから。そうしよう、捨ててしまおう。
そう決めて、私は水色の封筒をそっと机の中に隠した。

数学の授業が始まってページをめくると、そこになつみの落書きがあった。

「Dear My Best Friend.忘れん坊ぐせ、なおせよ!」

文字が滲んだ。

Dear My Best Friend. 私の目に涙がたまっていた。

なつみはずるい。いつも私の先を行って、私はここから動けない。
なつみはずるい。いつもみんなに好かれて、私とはおおちがいだ。
なつみはずるい。航介くんに好かれてることなんて、気付かない。
なつみはずるい。なつみはずるい。なつみはずるい。なつみは……

でも私はなつみが好きだ。
Dear My Best Friend.
なつみが、好きだ。

私はそっと机から封筒を取り出すと、教科書にはさんだ。


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このストーリーに関するコメント

14/01/27 朔良

かめかめさん、こんにちは。
拝読いたしました。

愛情と友情…三角関係の王道ですね。友達への嫉妬と友達を好きな男の子への恋心…切ない主人公の気持ちが伝わってくる良作だと思いました。
面白かったです。ありがとうございます。

14/01/29 かめかめ

>朔良さん
コメントありがとうございます。
面白いと言っていただけて、書いた甲斐がありました。
ご一読いただけましたこと、お礼申し上げます。

14/01/30 クナリ

面白かったです。
こうした心の揺れ動きこそ、三角関係の醍醐味ですね。

14/01/30 草愛やし美

かめかめさん、拝読しました。

わかりますこの気持ち。高校の頃、私も何度か失敗しましたから。
いい友達ですね、女子にも男子にも、人気のある子いますよね。ずるい。そういうのも、よくわかります。私も、なつみでなく、この主人公、私の側にいつもいる人でしたから。
共感できるので、頷きながら読みました。面白かったです、ありがとうございます。

14/02/10 かめかめ

>クナリさん
面白いといっていただけて、ほっとしました。
あこがれの三角関係。うまく描けたならいいのですが。

14/02/10 かめかめ

>草藍さん
面白いと言っていただいて、これほどうれしいことはありません。
すてきな青春を過ごされたのですね。
少しでも思い出のよすがになったなら、うれしいです。

14/02/20 gokui

 読ませていただきました。
 女性の複雑な気持ちをうまく表現されていますね。出も、それは恋人も友達もなくしたくないなつみの作戦かも……考えすぎですね。

14/03/06 かめかめ

>gokuiさん
したたか女子、なつみ。いつかそんな話も書いてみたいです。
コメントありがとうございました。

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