1. トップページ
  2. あ〜カミ様

ポテトチップスさん

ブログで小説プロットを公開しております。 http://www.potetoykk.com

性別 男性
将来の夢 小説家や小説家の卵に、小説のプロットを提供することです。
座右の銘 我流の人生

投稿済みの作品

0

あ〜カミ様

14/01/13 コンテスト(テーマ):第四十九回 時空モノガタリ文学賞【 絶望 】 コメント:1件 ポテトチップス 閲覧数:962

この作品を評価する

洗顔後、東野裕也は鏡にうつる自分を不思議な感じて見つめた。目鼻立ちのハッキリした面立ちで、まるで二枚目俳優でも通じる顔。しかし目線を少し上に向けると、二枚目俳優からお笑い芸人のような腑抜けた顔に様変わりしてしまう。
学生時代は女性からアプローチを受けることが多かった東野だが、最近では街を歩いていると、育毛シャンプーの試供品を配っている女性からアプローチを受けることが度々あった。
鏡の中の男に「ドンマイ」と声を掛けてやった後、洗面台の横の棚に置いてある育毛スプレーを、頭全体にタップリと贅沢にスプレーした。
スーツに着替え、カバンを持ってアパートの玄関を開けると、1月の身に染みる寒さが頭頂部を冷やした。
駅で快速列車に乗車し、つり革に掴まると車窓に反射してうつる哀れな禿げた自分を見つめた。
ある時から、東野は陰で『ハゲ係長』と呼ばれるようになった。思えば学生時代は頭の禿げた教師を散々馬鹿にしてきた。国語の教師に『ハゲ男爵』とあだ名をつけたのは東野だった。今ならハゲ男爵の受けた心の痛みが痛いほど理解できると思った。
絶望という言葉がある。人間生きていれば絶望を感じる時は度々あるが、自分の髪の毛が日に日に抜け落ち少なくなっていくのもまた絶望であると思った。
電車を降り会社へ続く道を歩いていると、突然若い女性に声を掛けられた。
「すみません、ちょっとお時間よろしいでしょうか?」
「何ですか?」
「新発売の育毛剤のご紹介なんですが……」
「会社に遅刻してしまいますのでまた今度」
「本当に効果が高い育毛剤ですので是非」
牧下と名乗る女性に熱心に勧められ、1本2万円の育毛剤をひとつ購入した。なんでも手作りの育毛剤らしく、牧下が自宅で作っているらしかった。
牧下から購入した育毛剤の効果を実感したのは、使用を始めて10日程経った頃だった。朝起きて洗面台で顔を洗おうと鏡をみたら、禿げ上がった頭頂部にうぶ毛が生えていた。
さらに10日程過ぎると、うぶ毛の量が頭頂部全体に広がっていた。
ここ最近の東野は、毎日が充実した日々を送ることが出来ていた。それは育毛剤によって髪が生えてきていたからに他ならなかった。
朝晩の2回、育毛剤を使用しているため、瓶に入った液体は残りわずかとなっていた。そろそろ牧下から購入しなくてはと思ったが、瓶のどこを見ても連絡先が書いてなかった。それから5日が経過し、とうとう瓶に入っていた液体は無くなった。毎朝、会社へ続く道を歩きながら牧下の姿を探してはいたが、どこにも見当たらなかった。
せっかく3ミリ程まで成長したうぶ毛は、使用を止めると同時に全部抜け落ちてしまった。
鏡を見つめながら、東野は途方もない絶望感に打ちひしがれた。この1千万人以上の人間がごった返す大都会東京で、牧下という一人の女性を探し見つけることは不可能に近かった。
季節は夏を迎えた。夏の強烈な日差しが無抵抗の東野の頭頂部をジリジリと焼いた。会社への出勤途中や自宅への帰宅途中に、牧下の姿を目で探すのはいつもの日課となっていた。
この日、仕事終わりに小さな居酒屋で独りビールを飲んでいると、店のテレビに見覚えのある女性が映った。
「あっ!」東野が驚いて声を上げると
頭の禿げた店の店主が「どうされました?」と言った。
「牧下さんだ!」テレビの画面を指して言った。
「あっ! 本当だ牧下さんだ。お客さんももしかして、あの育毛剤を使われたんですか?」
「はい、愛用者です。牧下さんを私はずっと探していました」
「お客さん、俺もこの女性を探していたんですよ」
テレビでは、育毛剤研究科として牧下は紹介されていた。東野と店の店主はメモ帳に牧下の連絡先を記入した。
「お客さん、今日は目出度い日だから、ビール瓶1本サービスしますよ」
「ありがとうございます」
日付が変わる少し前に店を出た。今日は随分と飲み過ぎてしまったと東野は思った。自宅へ続く道を歩いていると、前から酔っ払った中年男が頼りない足どりで向かって来た。
その男の頭は、カツラがヅレていた。
「カツラ、ヅレてますよ」
「うるせーな、このハゲ!」
ムッカっとしたが、何だか今日は気分が良いので、気にせず東野はスキップをした。

終わり


※30歳を過ぎた私は、ここ最近になって鏡を見て気づきました。
10代の頃と比べて、前髪の生え際が少し後退していることにです。
日頃の偏った食生活とストレスが原因だと思います。
(ポテトチップス)


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

14/02/04 gokui

 読ませていただきました。
 うーん、ちょっと消化不良。続きが読みたい気分です。
 ただ、いなくなった育毛剤売りの女性が見つかって良かった、というだけの話じゃなくて、もう一ひねり欲しかったですね。最後はうまくまとめてあるんですけどね。

ログイン