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t-99さん

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かわいい幼馴染なんて漫画やドラマの世界だけって思ってない?

14/01/04 コンテスト(テーマ):第四十七回 時空モノガタリ文学賞【 再会 】 コメント:0件 t-99 閲覧数:1218

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小1のとき隣席の子が美憂で、透明な素肌に気をとられている隙に大きな瞳に射抜かれていた。もちろんハートを。
「テストどうだった?」
「楽勝だったかな」
平気で嘘をついた。母親は勉強に励む息子に何の疑問を抱かず、すんなり一緒の塾に通わせてくれた。あの頃は男女に隔たりなんかなく自由に航海を楽しんでいた。
ところが小5の夏「男子とは鎖国状態だから」女子どもがわからんルールを発動し美優との接近を制限した。それでも美憂はメールをくれ、ちょくちょく互いの家にも遊びに行った。
 美憂の父親を見たことがなかった。母親は美人で(美優もこうなるのかな)なんて子どもながらにドキドキした。あとで知ったけど、美優の父親には別に好きな人がいたらしい。寂しがりやなくせに男性を信用しないっていうか、偏見みたいなものを持っていた。
「好きなんて、私の何を知っているの」
 頬を膨らませ告白を受けるたび僕を睨みつけた。まあ、怒った顔も素敵だったし、美憂が特定の誰かとくっつかないことに安堵した。二人の関係は小6の美優の突然の転校で幕を閉じると思われたが、不思議なことに美優からのメールが途絶えることはなかった。
『おいしいもの食べたいな』
『食べればいいじゃん』
『バカね、女子はスタイルキープが大事なの』
 美憂は中学の終わりから高校にかけてスタイルを気にするようになった。相変わらず告白を受けていて『なんなのよあいつは』怒りのメールが届き『好きな人いないの?』と打ち返す。『拓ちゃんはどうなの?』(美優のことが好きなんだ)と呟いた。
 高校卒業を控えやたらプレッシャーに押しつぶされそうなメールがくるようになった。
『もうダメかも、がんばっても届かないことってあるんだね』
『アホか? 何歳やねん、あきらめたらそこでゲームオーバー』
なぜか関西弁で、しかも漫画で仕入れたネタで励ました。
『届かない郵便はない、離島でも山の上でも郵便は届くんじゃ〜』
なんだこのメール。首をかしげたくなるメールも頻繁に送った。
メールは高校卒業まで続いた。僕は地元の工務店に就職が決まり、美優は頭がいいからたぶん大学に進学したのだろう。最後のメールはいつだったか? 知らないうちに返信がこなくなった。きっと彼氏ができたのだろう。忘れようとしていたら美優からメールがきた。
『明日、岬公園に三時集合。目印は赤いマフラー』
一方的なメールに腹が立たず。かわりにこんなメールを送った。
『写メ送ればいいじゃない?』
 美憂からの返信はなく。赤いマフラーを買う気にもなれず写真付のメールを送った。初恋の相手の成長した姿が見たい。男子のお約束の好奇心に火がついた。

 岬公園は地元でも有名な公園でよくドラマの撮影に使われていた。真中にでっかい噴水があってそこに続く並木道が結構いけてて、紅葉は終わっていたがそれはそれで趣があった。案の状ドラマの撮影が行われていた。美男美女の若いカップルが噴水のそばで愛を語らう。ちらほらギャラリーもいた。僕はベンチに腰かけ遠目に撮影を眺めていた。
「拓ちゃん?」
 いきなりで返事を忘れていた。女は赤いマフラーを首に巻きつけ度の強そうな分厚いレンズ越しに笑っている。マスクをしているせいか声がはっきりしなかった。
「美憂ちゃん?」
 確かめるように発した。小6以来の再会に嬉しい反面、がっかりしたという気持ちがこみ上げてきた。
「久しぶり、元気だった」
隣に腰かけてきた女の声は聴き覚えがあるような、ないような感じだった。
「ごめんね。仕事大丈夫だった?」
「もちろん」
実は無理言って休みを貰っていた。
「男の子と付き合いたいな、なんて思っていて、それでね……」
マスクとメガネを外した美優の頬が赤いのはたぶん寒いからではないと思う。
「拓ちゃんさえよければ、付き合ってみない?」
向けられた眼差しにかっての破壊力はなく、顔のパーツは中央に移動、化粧をしているせいか年もかなり上に思えた。
けれどそんなことどうでもよかったのだ。
「ずっと美優のことが好きだった」
言葉が自然に出ていた。僕にとって美憂はあこがれで、初恋で、なによりメールを何度となくしてきた相手だった。さっき見たばかりのドラマの主人公のようにかっこよく言えればよかったのに……。
「合格です!」
 長い沈黙の後、美憂がいきなり声を荒げた。訳が分からず僕は美優に顔を向けていた。
「私はマネージャの高梨といいます。美憂に好きな人がいるというので気持ちを確かめさせてもらいました」
 淡々と喋る高梨さんは妹を心配する姉? いや、親戚のおばちゃん的なのりだった。
「美憂はドラマの撮影中なのでこちらにきてください」
 強引に腕をつかまれ立たされる。高梨さんの後を追いながら、会ったときどう言おうか、そればかり考えていた。


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