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草愛やし美さん

時空文学コンテスト開催100回、おめでとうございます。思えば、初めて私が、こちらに投稿したのは2012年5月のこと、もう4年近く経ったのですね。時空モノガタリさまが、創作の場を与えてくださったお陰で楽しい時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 また、拙い私の作品を読んでくださった方々に感謝しております。 やし美というのは本名です、母がつけてくれた名前、生まれた時にラジオから流れていた、島崎藤村作詞の「椰子の実」にちなんで……大好きな名前です。ツイッター:草藍やし美、https://twitter.com/cocosouai 

性別 女性
将来の夢 いっぱい食べて飲んでも痩せているっての、いいだろうなあ〜〜
座右の銘 今を生きる  

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量産型バク

13/12/30 コンテスト(テーマ):第四十六回 時空モノガタリ文学賞【 夢 】 コメント:16件 草愛やし美 閲覧数:1323

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 雨洞は、暗闇の中にいた。ここはどこなのか? 温かいのか寒いのか、何も感じない。真っ暗で何も見えていないはずなのだが、先程から不思議な感覚を覚えている。白い塊が向こうにいるようだ。蠢く物体に気味悪さを感じながら雨洞は、目を凝らしていた。遠目に奇妙な黒い物体が進んで来るのが見える。何だ、あれは? わしは、どうなったのか、もしかすると、もはや死して黄泉の世界に来ているのか?
「助けてくれー、誰か、死にたくない」

 ★

 叫び声に目が覚めた。またか……、悪夢にうなされる日々が死ぬまで続くのか。名声と金を得るためわしがやってきた結果が、この毎夜の悪夢になって表れているのか。昼間、平静を装っている政治家の雨洞だったが、深層心理は穏やかでなかったようだ。ここまで這い上がってくるため、かなり非道なことをやってきた。騙されるほうが悪いと雨洞はずっと思ってきたし、言葉に出してきた。だが、寄る年波と心臓の病に冒されてから、悪夢の夜が続くようになっていた。
 雨洞は、昨日の電話を思い出していた。
「わが研究所の商品を一度お試しくださいませんか? いえ、何、信じる、信じないはお客様のご判断次第ですが、雨洞様の今のお悩みを解決できる唯一のものと自負しております」
「押し売りか、何を売りつける気だ。政治家雨洞と知って物を言っているのか」
「押し売りなどいたす気は毛頭ございません。私どもは、政府地下組織で、秘密裡に研究を託されています機関でして、日本の政界の将来を担う貴重な方にしかお電話させていただいてないのですよ」
 雨洞は、この言葉に一挙に機嫌を良くし、話だけは聞いてやろうと言った。
「はっきり申しまして、私どもは、獏を研究し量産することに成功したのです。あの獏ですよ、昔から、悪夢を喰う唯一の生き物、獏を研究してきました。成功すれば、世界中の著名人などからのオッファーは間違いなしと考えられ、国家プロジェクトとして、四十数年前より秘密裡に地下組織で研究されてきたのです。今年初めて、獏を量産することが可能になり、まずは政界の重要ポストについておられる上位の方からお勧めしている次第です。量産型獏一頭飼っておけば、悪夢を全て喰らってくれるのですから、楽しい夢しか残りません。安らかな眠りを、ぜひ雨洞様にも体験していただきたいと……如何でしょうか? 今なら、お買い上げ特典として秘密に贈呈品をおつけしますよ」
 眉唾ものの話と無造作に電話を切った雨洞だったが、実際のところ毎晩の悪夢に身も心も蝕まれていた。その時だった、枕元の携帯が鳴った。

 ★

 暗闇の中、何かが蠢いている。白い塊が、もこもこ動いている。その中から黒く蠢く物が一頭前に進み出てきて頭を上げた。その顔は恐ろしいものだった。鼻は象、目は犀、足は虎のようだ。
「我は獏なり――」
「お前が獏か、わしの悪夢を全部喰え、早くしろ」
 獏と名乗る怪物は、被りを振った。
「もうすでに、百八つの煩悩分の悪夢は喰った。もうこれ以上は喰えん、お前は悪夢が多すぎる、しかも不味い」
「喰えんとは、わしがお前を幾らで買ったと思っているのだ。早く全部喰ってしまえ」
「我一頭につき煩悩の分は喰らえるが、それ以上は無理だ。何せ、量産型の獏、オリジナルとは異なるのだ。お前は、更にかなりの数の獏を購入するしかない」
「馬鹿ぬかすな、あんなに支払わせておいて、クソッタレ。そうだ、秘密の贈呈品とやらは、どこだ」
 白い塊が前に進んできた。メエメエと鳴いている。紛れもない羊の群れだ。
「眠れない時に数える羊千頭もおつけしたそうだ、凄い特典だろう」
「お前らわしを騙したな」
「騙す、誰かに聞かせたい言葉だな。騙される方が、何とやら、ハハハ」
 量産型獏は、笑いながら消えていった。

 ★

「夢か! やつらに騙された、クソ、更にもう数頭、獏を買えだと、畜生。だが、夢だ、これは夢の出来事、金は使っていないからな……獏も悪夢の一つだ、そうに違いない」
 それでも不安の消えない雨洞は、念のためと、PCを開いてスイス銀行の自分の預金残高を確認してみた。見事に、量産型獏一頭分の購入代金が、ごっそり無くなっていた。
「やられた……、いや、これも悪夢だ、わしは悪夢を見ているに違いない」
 呟く雨洞の寝室のベッドから、羊の群れが、もこもこと湧き出て来た。
「眠れないようですね、雨洞様、我らを数えてくださいな、メエ〜、メエ〜」
 もこもこ、もこもこ、メエ〜メエ〜、羊どもが溢れていく。羊に挟まれた雨洞の心臓が、発作を起こした。
「く・くす・り……」
 手を伸ばすが、溢れかえった羊の群れ共に阻まれ、心臓発作の薬が置かれたナイトテーブルに辿りつけない。

「ぐあ、ああ!!」
 胸を掻き毟り、叫ぶ雨洞の口を羊の毛が塞いでいく……。


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このストーリーに関するコメント

13/12/30 草愛やし美

お断り:この作品は、草藍の創作によるフィクションであり、 実在の人物・団体・事件などとは一切関係ありません。また、左の画像は、日光東照宮内の建造物に、飾り物として使われている獏からお借りしました。

参照:獏(ばく)は、中国から日本へ伝わった伝説の生物。人の夢を喰って生きると言われるが、この場合の夢は将来の希望の意味ではなくレム睡眠中にみる夢である。悪夢を見た後に「(この夢を)獏にあげます」と唱えるとその悪夢を二度と見ずにすむという。体は熊、鼻は象、目は犀、尾は牛、脚は虎にそれぞれ似ているとされるが、その昔に神が動物を創造した際に、余った半端物を用いて獏を創造したためと言われている。

13/12/31 泡沫恋歌

草藍さん、拝読しました。

悪人でも悪夢はやっぱり怖いんですね。
悪夢よりもお前の方が悪党だろうというツッコミはこの際無しにして・・・。

量産型バク=量産型ザクってガンダムかいな?

どこまで夢なのか分からないシュールな夢のお話でした。

14/01/01 そらの珊瑚

草藍さん、拝読しました。

量産ということはきっと獏を必要としている人が増えているのでしょう。
悪い人でも良心の欠片が残っているうちは、その報いのようなものを怖れて悪夢を見るのでしょうか。
悪夢が覚めたらそこも悪夢というなんだか終わりのない迷路のような夢ですね。

14/01/01 朔良

草藍さん、こんばんは^^
拝読いたしました。

悪いやつとはいえ、良心の欠片くらいは残っていたのでしょうか?
それにしても、量産型とはいえ獏にも食べられないほど悪夢を見るくらい悪いことを重ねて来たとは…。
かわいそうな気もしますが、自業自得ですよね。
この獏の夢自体が覚めない悪夢のようだと思いながら読了しました。
おもしろかったです! ありがとうございました。

14/01/03 草愛やし美

猫春雨さん、お読みくださってありがとうございます。
明けまして、おめでとうございます、本年もどうぞよろしくお願いします。

昨年最後の作品なので、感動ものをとの思いとは裏腹に、悪夢そのものになってしまいました。苦笑 
どんな人にも、一片の良心が残っているはず……、どんなに平静を装っていましても夢までは、自由にできないのではという、考えのもとに書かせていただきました。  コメントありがとうございました。

14/01/03 草愛やし美

泡沫恋歌さん、いつもお読みくださって感謝しています。新年おめでとうございます。本年も、どうぞよろしくお願いします。

量産型ザクをもじってタイトルつけました。かなり古いですが……苦笑。
昔、息子が、ガンダム消しゴムを集めていました。ザクは人気がないのに、ガチャガチャでよく出てきて、悔しがっていたのを思い出します。量産型は、数が多いのですから、獏もこの程度になってようです。深く考えないで、思いついたので、投稿しましたが、投稿してから、ああ、最後の作品が、悪夢になってしまったと思いました。大汗

コメントありがとうございました。

14/01/03 草愛やし美

そらの珊瑚さん、明けまして、おめでとうございます、本年もどうぞよろしくお願いします。いつもお読みくださってありがとうございます。

獏を必要としている方々が増えているかもしれません。秘密裡に売られていて、闇の商売が大繁盛なんてことを思いますと、複雑な気もします。未だに、私は、夢で獏には会ってませんが、気づかないうちに食べてくれているのではと願っています。最近、昔ほど夢を見なくなったのは、脳が、年で乏しくなったのかしら……。悩める昔乙女?

コメントありがとうございました。

14/01/03 草愛やし美

朔良さん、2014年明けまして、おめでとうございます、本年もどうぞよろしくお願いします。いつも、お読みくださってありがとうございます。

どんな悪人もきっと心の奥に、良心が眠っているはず、そのコンセプトを悪夢として描いてみました。面白かったとの、言葉、大変嬉しいです。2013年最後の作品が、悪夢の内容になってしまい、自分自身、ああ、やってしまったと、落ち込んでいましたが、救われました。コメントありがとうございました。

14/01/03 草愛やし美

OHIMEさん、いつもお読みくださりコメントとても嬉しいです。新年、明けまして、おめでとうございます、本年もどうぞよろしくお願いします。

(´・ノェ・)コッソリ 「ざまあみろ」私もそう考えて書きました。政治家にしましたが、オレオレ詐欺のように、最近横行しています高齢者を狙い、高額の金品を搾取する悪人を対象者に書こうと思ったのですが、字数の限りに一番分かり易い政治家になってしまいました。騙すという観点からは、無理にでも、詐欺師にすべきだったかなあと投稿後に思いました。

悪夢で終わった昨年の作品ですが、恐いながらも面白かったとのコメントに救われた気がしています。私は、少しでも面白いものを書き楽しんでもらえたらと願い、目指していますので、その言葉戴け、本当にほっとしてしました、コメントありがとうございました。

14/01/05 石蕗亮

お久しぶりです。
拝読しました。
量産型貘‥‥‥夢遣らいの札を作ってる時の事を思い出しました。
悪夢除けに今度作ってみます笑
一頭1悪夢。かなり現実的なお話しで面白かったです。

14/01/05 鮎風 遊

漠と羊のコントラストが面白かったです。
私も漠一匹必要かな。
だけど高くて買えないし…。
レンタルってのはあるのですか?

14/01/07 草愛やし美

石蕗亮さん、明けましておめでとうございます。

お久しぶりです、お仕事、お忙しいなか、私の作品にお立ち寄りくださいまして、ありがとうございます。

量産型獏なんての、ネットで今年あたり、売り出すのではないかという気がしています。悪事を働いた人にも、きっと良心があるはず、ならば、悪夢を見るだろうという設定のもとに書いた話です。でも、真の悪人は、悪夢も見ないかもしれません。そうなると、獏販売業は失敗に終わるかもしれませんね。苦笑

14/01/07 草愛やし美

鮎風遊さん、えっ!? 獏御所望ですか、鮎風さんは悪夢など無縁の方だと思います。

レンタル、いいアイディアですね。それもいいかもですね。量産してレンタル、再生してまたレンタル、わお! 儲かるかもです。素晴らしい発案、誰かに獏を作る事業を持ち掛けましょう。( ̄0 ̄)/ オォー!! 貴重なコメントありがとうございました。

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